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57話




 フォボス達レッドギルマンのチームと一緒に水路を手探りで作っていたとき、コール音が鳴った。


 スバルさん、カロン、エウロパ、フォボスといったダンジョンの幹部クラスにはダンジョンをスムーズに運営出来るように、一部のダンジョンマスターの能力を使える権限を渡している。

 コールはその機能の一つだ。いわゆるテレビ電話。迅速な情報共有は大事だしね。


 簡易モニターに表示されているのはエウロパの名前。タップして通話をオンにする。


『ワダツミ様、よろしいでしょうか?』

「おぅ、エウロパか、どうした?」

『青塩党と名乗る挑戦者の集団の船を確保したのですが、その調査の許可を頂きたいと思いまして』


 あー、エウロパ達後方支援役が前線に出たのはそういう訳か。場合によってはフィールドワークも厭わない、と。

 まぁ、元から島や周囲の海から使えそうな素材を回収する仕事もしているしな。敵船の拿捕もその一環とか思っていそうだ。


「構わないが、敵戦力の無力化は滞りなく済んでいるんだよな?」

『はい。オクトリッド数名が反撃を受けたようですが、いずれも問題なく鎮圧していますわ』


 HURMフーム...。後衛で固めているオクトリッド達でほぼ問題なく無力化出来ているなら問題ない、か。


「吹き飛ばした船の乗員達はどうなった?」

『そちらも問題ありません。ブルーサハギン部隊の支援により、迅速な救助が出来ています。溺れたことによる酸欠で意識不明の者が数名確認できていますが、後遺症の方は心配要りません』

「パーフェクトだ、エウロパ」

『感謝の極みですわ』

「すまんが、引き続き青塩党とやらの監視を頼む、島での受け入れ体制が整い次第また連絡する」

『了解しました』


 問題は船を停泊させる場所か。

 港なんてまだまだ先の話だと思っていたし、建設に回せる人員もない。

 この分じゃ他の船団の方々も一度ウチに寄らざるを得なくなるから、物資も少々足りなくなるかもな。


 うむ、水路は後回しにするしかないな。

 今は元挑戦者、現捕虜となった面々を保護する準備を進めなければ。


 コール画面を開いてスバルさんとカロンに連絡を取る。


「聞いていたと思うが、そちらの被害状況と現状報告を頼む」

『司令部ですが、受け入れ体制を整えるのは時間が掛かります。受け入れた場合の設備と監視員も足りません。全員の受け入れは現実的ではなく、少々の間引きが必要かと』


 相変わらず人間には辛辣気味なスバルさん。

 だが、全員を島に迎え入れる必要はない。各船団の代表と護衛数名だけでいいのだ。


 他は無事な船に押し込んでおけばいい。


 そもそも今回は挑戦者側のマナー違反。非は完全にあちらにあるはず。

 多少の不便には目を瞑ってもらおう。


 なに、食料くらいなら融通してもいいさ。


「……ってこと。ある程度無事な船に一般船員は詰め込んでおいて、一隻につき要塞ガニ数体を抑止力として配置する。舵はサルガッソが締め上げているし、まぁ逃げられんだろ。あ、兵器や武器は出きる限り徴収しといて。万が一にも皆に怪我させる訳にはいかないからな」

『……代表と護衛数名ならば、なんとか間に合うでしょう。その内、私のサポート役も増やしてくださいね』

「あいよ、そこら辺は書類で上げといてくれ」


 書類仕事は苦手だが、ダンジョンとはいえ運営するとなると大事になってくるのが書類。

 これが日本人思考ってやつか。


『カロンです。以前こちらに接近していた鮫殴り粉砕傭兵団と、なぜか救助活動に積極的な夜泣き妖鳥女ハーピーの面々はほぼ無力化できています。一部の人間はこちらに悪感情を抱いているようですが』

「そりゃまぁ、ヤるかヤられるかだからな、負けても受け入れられる奴なんて、そうそういないよ」

『特にこれといった問題は見受けられませんが、遺憾ながら我々ブルーサハギンには相手の心の機微をまだ上手く読めません。敵対する可能性が僅かでもある以上は、不安の芽は摘んでおくべきか愚考いたします』


 カロンも言葉より肉体言語派だからな、挑戦者との関わりが鬱陶しいのかもしれない。

 そもそもモンスターだしな、スバルさん並みに辛辣なこと言ってもおかしくないんだが。


「すまんが、今回は見逃してやってくれ。こっちもまだオープン前なんだ。挑戦者を痛め付けて悪感情を煽ることはしたくない」


 恨みやしこりを残す結果となれば、何がなんでもこのダンジョンを討伐しなければならないという流れになる恐れもある。

 まだ準備期間で慌ただしい中、余計なイベントはお断りしたい。


『ハッ、了解であります。ところで、鮫殴り粉砕傭兵団の団長がワダツミ様に面会を求めておりますが、他の船団の代表同様の扱いでよろしいですか?』

「あぁ、構わない。滞在してもらう場所はレッドギルマン達が掘ったばかりの洞穴になるけどな、そこは我慢してもらおう」


 扱いは客分じゃない、捕虜だ。そこは我慢してもらおう。

 あ、ついでに労働力の確保とか出来ないかな?

 フライング・チャレンジャーなんてマナー違反もいいところだし、ちょっと捕虜にしてすぐ釈放、というのも癪だ。

 うん、人手の少ない島の開発、必要施設の建造なんかに携わってもらおう。

 工事が終わったら恩赦で解放、とかすればスバルさんも文句は言うまい。

 彼らが滞在するだけでDPは入るしね。

 一人一人は微々たるものだけど、海賊3船団分の捕虜ならそれなりに旨いだろう。


「カロン、エウロパ、無力化した船員の中に、建築や開発に明るい人間がいないか聞き出しておいてくれ、なるべく穏便にお願いしたいが、立場を弁えない奴には相応の対応でいい」

『ハッ、了解しました』

『必ずやご期待に沿って見せますわ』


 これで人員確保は上手くいくかな?

 まぁ、行かなくてもいいか。どちらにせよ働いてもらうつもりだ。

 陸での仕事に慣れていなくても、切り出した石材や木材を運ぶくらいなら出来るだろ。

 素材の選別は、一部のレッドギルマン達が出来るようになってきているしな。


『そういえばワダツミ様、夜鳴き妖鳥女ハーピーを攻撃する予定でしたサルガッソ、ミラージュクラム、要塞ガニの長達が、今回の戦いの結果について謝罪したいと申しておりますが、いかが致しますか?』


 会話を繋ぎっぱなしだったスバルさんからそんなことを言われた。

 あぁ、俺の魔法で殆ど戦闘能力を失っていたからな、あの船団は。

 サルガッソ達からしてみれば、せっかくの『名付け』のチャンスで活躍できず、俺の不況を買っていないか不安なのだろう。


「謝罪の必要は無いと伝えてあげて。サルガッソは敵船の足止めをしてくれたし、ミラージュクラムは霧で行動制限と情報封鎖を担当してくれた。要塞ガニはこれから捕縛した船員達の監視をしてもらう。これで問題はないよ」

『分かりました、そう伝えておきます』


 さて、これから戦後処理か……。

 面倒だな、挑戦者皆殺しとかしてればこんな煩わしい事態は起こらず、今ごろ惰眠を貪れていただろうに。


 少なくとも今回は労働力確保の名目の下、命を助けるって決めちゃったしな。

 望んで背負った苦労だ、やるしかないな。


 さしあたっては『鮫殴り粉砕傭兵団』の船長とやらと対面しなきゃな。

 ものの見事に大敗した後で、いきなり敵のトップと会いたがるなんて神経が太いもいいところだが。俺にはとても真似できない。


 うーん、どんな理由で面会なんて求めたんだろうな。

 部下の助命嘆願かな?

 船舶の返還と修理かな?

 武器や兵器を返してやるのは無理だな。


 まぁ、会うしかないだろう。



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