38話
コアさんの部屋に戻ると、ケモミミ少女のぶちまけたスープやお皿は綺麗に片付けられ、着替えも済まされていた。
流石コアさん、仕事が早い。
「おーい、戻ったよー」
「ご苦労様です。エウロパとカロンの調子はどうでしたか?」
「コアさんだって思考共有してるんだから聞こえてたでしょ」
「はい。そうですね」
で、ケモミミ少女はどこだろう?
目につく所に居ないとなると、ベッドに潜り込んでいるのか?
「いえ、マスター。その娘は私の後ろに隠れております」
「おぅ、コアさん懐かれたのかい」
「餌付けしただけです。それよりマスター、私をいつまで『コア』と呼ぶおつもりでしょうか?」
へ?
コアさんはコアさんじゃないのか?
だってダンジョンコアじゃないか。
「オクトリッドのリーダーには『エウロパ』、ブルーサハギンのリーダーには『カロン』と名付けました。私にも固有の名前が欲しいのです」
あー、なるほど。
ダンジョンコアをコアさんと呼ぶのは人間を人さんと呼ぶようなものか。
名前じゃないってことね。
コアさ、いや、ダンジョンコアも名前を欲しいと思ったり、配下に嫉妬したりするんだねぇ。
ふふふ、あなたがどんどん人間臭くなって俺は嬉しいよ。
「お願いというのはその事なのです。どうか私にも名前を下さい」
そのことか!
てっきりいつものマスターを酷使する無茶ぶりかと思っていたよ!
今回は随分ささやかなお願いじゃないか。
ハッ! まさか、偽物!?
「……マスターは私を何だと思っているのです?」
「ダンジョンコア(ドS)」
「まぁ良いでしょう……。そんなことよりも私に名付けてはくれないのですか?」
ば、馬鹿な、若干目を潤ませて首を傾げるだと!?
普段あまり表情が動かないからこそ、この一瞬の破壊力がヤバい。
こ、心の装甲が今の一撃で突破された!
システムオールレッド!
オールひろゆき!
チィッ! 駄目だ! もう保たない!
マスターが、堕ちるッッ!
「ハハハ! コアさ、う゛ぅん゛っ、君の為ならそれくらい容易い! 全てのDPを注ぎ込もうじゃないかッ!」
「いえ、そこまでしなくて結構です。自重して下さい」
……はい。
まぁ『名付け』を使うならDPを使うしね。
どうせならエウロパ達よりも多く使うよ。
今はDPも結構有るんだし。
現在は、えーっと42500ポイントだな。
じゃあ10000ポイントくらい使っとこうか。
「あ、マスター、ついでにこの娘にも名前を頂けないでしょうか?」
コアさ……、えーっと、まぁいいか。コアさんが陰に隠れていた少女を引っ張り出す。
少女は僅かに抵抗していたが、すぐに諦めて前に出てきた。
聞き分けがいいのか、諦めが早いのか……。
「ん? この子? どして?」
「この娘は名前がない様なのです。名無しのままでは不便なので、宜しければ適当に付けてやって下さいませ」
この子、名前無いのか……。
奴隷であることと何か関係があるんだろうな。
あと改めて見たけど、目がとんでもなく濁ってるな。
一切の希望が感じられない。
こんな小さな子が、ここまで擦りきれるくらい過酷な日々を過ごしてきたのか。
やっぱ、放り出さなくて良かった。
この子にも10000ポイント進呈しましょう。
強く、幸せにおなり。
その為の手伝いはしてあげるから。




