37話
あぁ、疲れた……。
DPを稼ぐのはまだ良いんだよ。
魔冷泉に寄ってくるモンスター達を『大海魔法』で吹き飛ばして瀕死にするだけのお仕事だから。
問題はその魔冷泉の掃除よね。
木切れとか葉っぱとかが無数に浮いたり沈んだりしているのよ。
魔冷泉の水は『大海魔法』じゃ操れないし、殆んど手作業で取り除く羽目になった。
俺が必死こいて掃除している横からまたモンスターどもはひっきりなしにやって来て折角綺麗にした魔冷泉に泥やら草やらをぶちまけるし。
ついついブチキレて数体オーバーキルしたのは仕方が無かった。
全てはこんな仕事を押し付けたコアさんって奴の仕業なんだ!
その甲斐あって魔冷泉は綺麗になったし、DP用のモンスターもかなり確保出来たんだけどさ。
瀕死にしたモンスターは配下たち止めを刺させている。
それだけでも経験値は入るようだし、倒したモンスターによって進化先も変わってくるようなのだ。
リトルフィッシュがドラゴンの肉を食べてレッドフィッシュになったみたいにね。
そのレッドフィッシュ達もそろそろ次の段階に進化できそうな頃合いだと言うし、今回の戦果で進化させられたら嬉しいな。
それと、コアさんに任せてきたけど、奴隷少女は大丈夫かね?
最後は食糧じゃないと認識してくれていたから、平気だとは思うんだけど、なんか不安だ。
コアさんもあれで生後二週間くらいだからなぁ。
がちゃり、と魔力認証のドアを開けてダンジョンに入る。
すると、良い匂いが漂ってきた。
これは、クリームスープ?
コアさんが作ったのか?
マジかよコアさん良妻に目覚めたのか!?
よし、結婚しよう。
ダンジョンマスターとダンジョンコアで子供が出来るか分からないけど。
テーブルではケモミミ少女が拙い手つきでスプーンを使ってクリームスープを飲んでいた。
「お、目が覚めたのか」
「……ッ!」
がちゃんと皿がひっくり返り、スプーンが飛んだ。
少女は俺から逃げようとしているのかわちゃわちゃと動き、椅子から転げ落ちていた。
少し声をかけただけでこれか……。
傷付くわぁ。
どうも身体的性的に虐待されていたようだし、男が怖いんだろうな。
まぁでも、暴れるだけの元気があるということだろ。
善きかな善きかな。
ゆっくり回復すればいいのです。
「マスター、お帰りなさいませ」
「ただいまコアさん、魔冷泉はピカピカにしてきたよ。これ、今日の分の水ね」
「はい、ご苦労様です。それでマスター、一つお願いがあるのですが」
「あー、ちょっと待って、コレを配下たちに分けてくるから」
「分かりました。大事なお願いなので、お忘れなきようお願いいたします」
「あーいよ」
何だろうね、コアさんが何度も念押しするお願い?
ドラゴン十匹狩ってこいとか魔冷泉の水源をここまで引っ張ってこいとか言うんじゃないだろうな。
魔冷泉に関してはマジで有るかもしれん。
そうなるとダンジョン拡張工事も含めて二、三日は働き通しになるな……。
何故ダンジョンマスターである俺がこんなにも最前線で働かねばならんのだ。
はぁ……、ダンジョンをオープンする頃には、配下に全て任せてゆっくり出来るようになっているんだろうか。
いや、出来ると信じよう。
その為に今働いているのだ。
海蝕洞窟の側道に蟻の巣のように掘られた一角、配下たちの居住区に着くと、頼もしい二人を呼び寄せる。
「エウロパ、カロン、今日の分だ。頼むぞ」
「我が主、本日もお疲れ様でございます」
「相変わらずのお手前でございますな」
仕留めた獲物が各種族に均等に渡るように割り振っていく。
これが案外面倒なのだ。
オクトリッドとブルーサハギンは問題ない。要塞ガニを筆頭としたカニ勢力もまぁ大丈夫。
面倒なのは二枚貝、小魚、海藻のグループだ。
こいつらはまだあまり知性がないから均等に分けるという概念がない。
しかも一丁前に力を付けてきているから、相手の分を奪おうと喧嘩を始めるのだ。
何度か『大海魔法』でお仕置きをしているが、一向に覚えない。
進化して知恵が付くまでの辛抱だと思うけど。
「今日はどうだった? 何か変わったことはあったか?」
「オクトリッドはダンジョン周辺の素材の目録を80%まで完成させております。陸地はまだまだですね」
「今はまだ海底資源の探索だけでいい。むしろそれが俺達の強みだからな、そのまま頼む」
「承りました」
「ブルーサハギンは住居の建造をほぼ終えました。修行班はレッドフィッシュの進化の兆候を確認したようです。明日にでも進化できるでしょう。巡回班はいつも通り問題有りません。人間も落ちておりませんでした」
「配下はこれからも増えるだろうから、居住区はまだ増やしてくれ。レッドフィッシュたちには優先的に獲物を与えて進化を促せ。巡回、もう人間は居ないだろうから通常ルートに戻して良い」
「了解でございます」
うむ、こんなもんかね。
いやぁ配下たちもしっかり働いてくれているようで関心関心。
その内なにかご褒美を考えなくちゃな。
「よし、済まんが残りの割り振りを頼む。コアさんが何か頼みたいことがあるらしいから、俺は戻る」
「「ハッ、お任せください」」
さて、コアさんは俺に何を頼むのかねぇ。
一応、何が来てもいいように覚悟をしておこう。




