30話
あれから朝まで軽く眠り、筋張ったドラゴン肉を腹に納めて、やってまいりました魔冷泉。
昨日はドラゴンが居たけど、今日はどうかなー。
コアさん予想ではもう新しいモンスターが占領しちゃってるって話なんだよ。
あんまり強くなければ嬉しいんだけどなー。
魔力がたっぷり含まれた魔冷泉の水を飲んだら、モンスターは強くなるらしいのよ。
昨日の今日だからそこまで強化はされてない思うんだけど、あまり楽観視出来ないよね。
ついでに魔冷泉の水にはいくら有っても良い、ということで、DP2000ポイント支払って、魔法の袋を購入しました。
ついでに水を溜めるようの樽も幾つか。
残りDPはこれで2900ポイント。
袋はちゃんと耐水性です。
これで泉の水を汲めばあら不思議。
ざばざば入って行きますよ奧さま。
容量は三十リットルくらい入るのに、重さはまったく変わらないんだから魔法って凄いわ。
これでダンジョンの私室に置いてある樽に移し変え、もう一度泉で水を汲み、と繰り返すのです。
しんどいです。
そして泉の水もまったく減った様子がない。
これも魔冷泉とやらの効果なのかね?
よく分からんけど、貴重な水がいくらでも手に入るのは嬉しいですな。
そんな感じで水を汲んでいると、サッと頭上に影が射した。
お出でなすったか。
魔冷泉という貴重な縄張りを荒らせばそこの主は直ぐに現れるはず。
ましてや昨日は主であったドラゴンがいなくなり、魔物同士で魔冷泉争奪戦を繰り広げたのだろうから、気が立っているだろう。
にしても頭上に影が射すということは、余程デカいか、高いところにいるか。
もしくは飛んでいるか、か。
飛んでいるに10ペリカ。
賭けにならんね、もう羽音が聞こえているから。
「キィエエエエエエ!」
俺の上で、極彩色の大きな鳥が羽を広げて甲高い鳴き声を上げていた。
ドラゴンが放つプレッシャーに比べればどうってことないな。
ただ、動きが速そうだ。
ドラゴンは的が大きかったから細かい狙いを付ける必要が無かったけど、この極彩鳥はまた違ったアプローチが必要になるな。
取り敢えず牽制の魔法を撃っておこう。
「『針雨』」
ぶん投げた水の玉が鳥の上で破裂し、針のように鋭い雨を降らす。
どんなに動きが速くても空を覆い尽くす針の雨を避けきることは出来ないだろ。
もちろん俺も危ないんだが、そこは対策バッチリですよ。
「『防水膜』」
水を吸収し同化させる膜で針の雨もへっちゃらサ。
「キエッ、キェエエ!」
おぉ、ザクザク刺さってるな。
というか既にグロッキーみたいだな。
あ、そうか。
魔冷泉争奪戦でへとへとなのか。
なんか、済まんねぇ。戦いが終わったあとに横合いから殴り付けるような形になっちゃって。
『針雨』が降り尽くした後、極彩色の鳥のモンスターはサボテンのようになって地に落ち、息も絶え絶えになっていた。
悲しいけど、これ弱肉強食なのよね。
もう抵抗する体力が残っていない極彩鳥を『水の球牢』で閉じ込め、宙に浮かせる。
泉の水も汲んだし、モンスターのお土産も出来たし、言うことないな!
チャッチャと我が愛しのダンジョンに戻るとしよう。