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終話 亡霊の行方

夜明け前の横浜。

鋼二は、一人で海沿いを歩いていた。

波の音がある。

潮の匂いがある。

人はいない。

砂漠から帰ってきた日のことを、思う。

あの時の自分は——何も知らなかった。

与田が駒だということも。

九条が外側にいることも。

御堂という王がいることも。

ただ、引き金を引いた。

その一発が——ここまで連れてきた。

「亡霊か」

呟く。

死に損なった男。

組織を持たない男。

帰る場所もない男。

だが——

生きている。

それだけが、今の全てだ。

空が、少しずつ白んでくる。

水平線の向こうに、光が生まれていく。

鋼二は立ち止まり、それを見た。

煙草を取り出す。

最後の一本だった。

火をつける。

煙を、朝の空気に吐く。

消えていく。

だが——

「まだ、終わりじゃない」

小さく言う。

御堂は消えた。

だが、世界は変わらない。

法の外側は、まだある。

駒を使う人間は、まだいる。

また、始まるだろう。

それでいい。

煙草が、短くなる。

燃え尽きる前に——海に向けて、指で弾く。

小さな火が、弧を描いて落ちた。

波が、さらっていく。

鋼二は、歩き出した。

行き先は、決まっていない。

だが——

足は、止まらなかった。


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