共闘
戦闘が始まり、一時間弱。
苛烈な戦況の中では、一分一秒が寿命を多分に消費しそうなくらい、彼らは決死だった。
「植物型が居る限り、奴のエネルギーは無尽蔵! 幸いにも弱点は割れている! できるな⁉」
「無茶は承知の上よ‼」
「はいっす!」
佐奈と誠司はアンブロシアスーツに赤い因子を灯した。
植物型のツタを薙ぎ払い、部隊長の特攻に道を切り開く。
『ジジジッ‼』
キャシテライトは残り5本の武器で迎撃に出た。
援は迫るそれらに、植物の根を切り倒し代わりの防壁として築く。
そこからは援と暁で二手に分かれた。
残り少ない本数で、どちらに傾けばいいのか――キャシテライトの思考は一瞬だけ遅れ。
暁が先に、左側から仕掛けていく。
植物性因子の光弾が、正確な射撃の元で破砕した頭部に命中。
嫌がったキャシテライトは防御を取ろうとするが、その巨体に、衝撃が突如伝わった。
援の体当たりで態勢を前のめりに崩し――追い打ちで暁の攻撃が直撃していく。
「あっ君、後方から一つ」
「ああ、分かってる‼」
刀型のアンブロシア兵器に切り替えるや、暁は地を回転しながら身をよじった。
人を灰塵に変える触手をすれすれで回避し――そのエネルギーの光が途端に消失。
暁が避け間際に、切断していたのだ。
「俺たちの刃物はどうやら有効らしいな‼ 佐奈! 誠司!」
「今までボコられた分、仕返しできそうね‼」
「自分、そこまで乗り気になれないっすけどぉぉおおおお〜っ‼」
言った手前で二人は武器に緑の因子を灯し。
佐奈の二刀ナイフが、触手を突き立て地面へ串刺しに。
誠司の槍も、触手を切断し、どちらも効力を失い力無く消失していった。
『ジジッジィィィィイイイイイン!』
悲痛な金切り音と、残り2本しかない触手が暁に向けられる。
表情の伺えない相手でも、躍起になっていたのは明らか。
「うおおおおおおおおお!」
しかしフローラチルドレンへ反撃する手前で、2本の触手は援によって鷲掴みにされる。
更に援は反対側の地へと跳躍着地。その場で踏みとどまり、キャシテライトの動きを制限した。
「これなら⁉」
エミが捕獲用ネットを射出。網目が隙間なくキャシテライトへと絡みつき、地面へと杭が打ち込まれる。
援の足が引きずられた。
同時に突き立てられた杭がコンクリートから外れ、それらを佐奈と誠司が掴み取る。
「クッソ! この馬鹿力野郎⁉」
「あんまし持たないっすよ⁉」
苦痛の汗が滲み、歯噛みする佐奈たち。しかし援だけは、彼を信じた。
「いいや、これでいい」
「ああ! 充分だ‼」
暁は、最後の冷凍弾を装填した。
キャシテライトに再び、そして最後の力を振るうために。
「っ⁉」
その瞬間、援は異変を感じ取る。
援の手元から、エネルギーの触手が一人でに消失し、キャシテライトへと戻っていく。
エミも、キャシテライトが熱線のために力を溜めていることを理解した。
「暁君⁉」
放たれる光の線路は3つ、周囲に向けて乱雑に照射された。
自分以外の相手を射殺すために。
剛山の頬に困惑からくる痙攣が起きた。
「状況が切迫しているのは分かります。しかし現場にはまだ兵士が残されているのですよ?」
『国を、国民を天秤に掛ければ、時間を掛けるだけリスクは膨れ上がる。鉱物型の暴走。植物型のイレギュラーな介入。その全てを一まとめに駆除するチャンスでもある。十分だ。それまでに部隊を撤収させろ。後は航空自衛隊の新型兵装にて奴を葬る』
通信は一方的に打ち切られた。
剛山はらしくない舌打ちを噛ます。
秋昌は騒然となった。
「上は、この作戦を打ち切ったのか⁉」
「上層部は根こそぎ根絶する構えを取りました。『壁』を真正面から突破され、浮足だつのは理解できますが――ここへ来て抑えが利かなくなったのでしょう」
アッシュに対する、人類の不理解。
奴らがどこまで進化を遂げるのか。自分たちの居座る環境をどれほど激変させるのか。
あらゆる要因が人を追い落とし、現場の信頼も下々の意向すら塗りつぶしていく。
「だからといって……奴にぶつけるのか? “ネクタル因子を応用させた”ミサイル兵器を⁉」
「汚染は皆無とのことですが――実際のところどうなのかは分かっておりません。造られて6年以上経過しておきながら、今まで出し渋ったのには明確な要因が有るのでしょう」
もはや汚染どうこうなど建前のようにも感じる。
アッシュの根絶という名目で許容される範囲なのかすら疑わしい。
「こうなっては仕方ありません。『各部隊に通達! 本作戦はプランEへと移行する! これに伴い、全部隊撤収を開始! 10分以内に速やかに現場を離れよ‼』」
納得は結局後回し。今はただ、巻き添えを喰らう前に皆へ指示を仰いだ。
秋昌もまた、子供たちへと通信を送るが――先から聞こえてくるのはノイズ音だけであった。




