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孤高なるギエン  作者: ホオジロ ケン
キャシテライト編
43/49

共闘

 戦闘が始まり、一時間弱。

 苛烈な戦況の中では、一分一秒が寿命を多分に消費しそうなくらい、彼らは決死だった。


「植物型が居る限り、奴のエネルギーは無尽蔵! 幸いにも弱点は割れている! できるな⁉」


「無茶は承知の上よ‼」


「はいっす!」


 佐奈さな誠司せいじはアンブロシアスーツに赤い因子を灯した。

 植物型のツタを薙ぎ払い、部隊長の特攻に道を切り開く。


『ジジジッ‼』


 キャシテライトは残り5本の武器で迎撃に出た。

 たすくは迫るそれらに、植物の根を切り倒し代わりの防壁として築く。

 そこからは援とあかつきで二手に分かれた。

 残り少ない本数で、どちらに傾けばいいのか――キャシテライトの思考は一瞬だけ遅れ。

 暁が先に、左側から仕掛けていく。

 植物性因子の光弾が、正確な射撃の元で破砕した頭部に命中。

 嫌がったキャシテライトは防御を取ろうとするが、その巨体に、衝撃が突如伝わった。

 援の体当たりで態勢を前のめりに崩し――追い打ちで暁の攻撃が直撃していく。


「あっ君、後方から一つ」


「ああ、分かってる‼」


 刀型のアンブロシア兵器に切り替えるや、暁は地を回転しながら身をよじった。

 人を灰塵に変える触手をすれすれで回避し――そのエネルギーの光が途端に消失。


 暁が避け間際に、切断していたのだ。


「俺たちの刃物はどうやら有効らしいな‼ 佐奈! 誠司!」


「今までボコられた分、仕返しできそうね‼」


「自分、そこまで乗り気になれないっすけどぉぉおおおお〜っ‼」


 言った手前で二人は武器に緑の因子を灯し。

 佐奈の二刀ナイフが、触手を突き立て地面へ串刺しに。

 誠司の槍も、触手を切断し、どちらも効力を失い力無く消失していった。


『ジジッジィィィィイイイイイン!』


 悲痛な金切り音と、残り2本しかない触手が暁に向けられる。

 表情の伺えない相手でも、躍起になっていたのは明らか。


「うおおおおおおおおお!」


 しかしフローラチルドレンへ反撃する手前で、2本の触手は援によって鷲掴みにされる。

 更に援は反対側の地へと跳躍着地。その場で踏みとどまり、キャシテライトの動きを制限した。


「これなら⁉」


 エミが捕獲用ネットを射出。網目が隙間なくキャシテライトへと絡みつき、地面へと杭が打ち込まれる。

 援の足が引きずられた。

 同時に突き立てられた杭がコンクリートから外れ、それらを佐奈と誠司が掴み取る。


「クッソ! この馬鹿力野郎⁉」


「あんまし持たないっすよ⁉」


 苦痛の汗が滲み、歯噛みする佐奈たち。しかし援だけは、彼を信じた。


「いいや、これでいい」


「ああ! 充分だ‼」


 暁は、最後の冷凍弾を装填した。

 キャシテライトに再び、そして最後の力を振るうために。


「っ⁉」


 その瞬間、援は異変を感じ取る。


 援の手元から、エネルギーの触手が一人でに消失し、キャシテライトへと戻っていく。

 エミも、キャシテライトが熱線のために力を溜めていることを理解した。


「暁君⁉」


 放たれる光の線路は3つ、周囲に向けて乱雑に照射された。

 自分以外の相手を射殺すために。




 剛山ごうざんの頬に困惑からくる痙攣が起きた。


「状況が切迫しているのは分かります。しかし現場にはまだ兵士が残されているのですよ?」


『国を、国民を天秤に掛ければ、時間を掛けるだけリスクは膨れ上がる。鉱物型の暴走。植物型のイレギュラーな介入。その全てを一まとめに駆除するチャンスでもある。十分だ。それまでに部隊を撤収させろ。後は航空自衛隊の新型兵装にて奴を葬る』


 通信は一方的に打ち切られた。

 剛山はらしくない舌打ちを噛ます。

 秋昌あきまさは騒然となった。


「上は、この作戦を打ち切ったのか⁉」


「上層部は根こそぎ根絶する構えを取りました。『壁』を真正面から突破され、浮足だつのは理解できますが――ここへ来て抑えが利かなくなったのでしょう」


 アッシュに対する、人類の不理解。

 奴らがどこまで進化を遂げるのか。自分たちの居座る環境をどれほど激変させるのか。

 あらゆる要因が人を追い落とし、現場の信頼も下々の意向すら塗りつぶしていく。


「だからといって……奴にぶつけるのか? “ネクタル因子を応用させた”ミサイル兵器を⁉」


「汚染は皆無とのことですが――実際のところどうなのかは分かっておりません。造られて6年以上経過しておきながら、今まで出し渋ったのには明確な要因が有るのでしょう」


 もはや汚染どうこうなど建前のようにも感じる。

 アッシュの根絶という名目で許容される範囲なのかすら疑わしい。


「こうなっては仕方ありません。『各部隊に通達! 本作戦はプランEへと移行する! これに伴い、全部隊撤収を開始! 10分以内に速やかに現場を離れよ‼』」


 納得は結局後回し。今はただ、巻き添えを喰らう前に皆へ指示を仰いだ。

 秋昌もまた、子供たちへと通信を送るが――先から聞こえてくるのはノイズ音だけであった。


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