【vol.2】11.pay it forward.
pay it forward.
駅からの帰り道、俺は可愛いハニーの待つ自宅へと急いでいた。
外は軽く小雨が降っていたので、傘を持っていない人たちはみんな雨宿りをしていた。
でも俺はそんな事も気にせず、しとしとと雨に濡れながら川沿いの道を歩いた。
しばらく進むと、前に女の子が歩いている。よく見ると、どうやら裸足のようだった。
片手にはサンダルを持って。そしてその横をサラリーマンが足早に通り過ぎる。
その光景が何だかとてもやるせなかった俺は、少しだけ考えた後、横から声を掛けた。
「あの~、サンダル使えないんですか?」
声をかけられた女の子は、少しびっくりした後、答えた。
『え、何?何か用ですか?』
「いやあの、通りすがりの者だけど、もし良かったらこのサンダル使って」
『え?』
「俺うち近くだから」
『何で?何でそんな事するの?』
「いや裸足で歩くのは可哀想だなと思って」
『てゆーか傘持ってない?』
「あ~傘は無いなぁ」(は?)
『じゃあいいです、悪いし』
「そう?うち近くなの?」
『ホントは隣の駅でで降りる予定だったんだけど、乗り過ごしちゃって。でももうそんなに遠くないから。え?うちどこ?近くなの?』
「あぁ、すぐ近く。ここから歩いて5分ぐらいだし。だから大丈夫だよ」
『でも何で?何で私に声かけたの?……あ、分かった女の子と話したかったんでしょ!?』
「いやいや、そうじゃないって」
『うちに行けば傘ある?』
「え、あるけど……。傘買うお金とか無いの?」
『うん、無い。』(ここで携帯が鳴る)
「あ~、そうなんだ……。誰か迎えにきてもらえる人とかはいないの?」
『うん、いない。』
「そっか……、じゃあやっぱりこれ履きなよ」(サンダルを脱ぐ、そして地面に降りる)
『え、何で何で?女の子と話したいんでしょ?いいよいいって』(といいつつ足を伸ばしてサンダルを履く)
「それじゃ、気をつけてね」
『え、女の子と話したいんじゃないのぉ↑?そうでしょそうなんでしょ?』
「いやそうじゃないって。んじゃ」
『絶対そうでしょ。え?家に行けば傘あるんでしょ?』
「まぁあるけどねぇ……。傘買う金とか無いんだよね?」
『うん。……でもなんでこんな事するの?』
「何でって……、世の中には親切な人もいるって覚えときな?」
『ウソだ女の子と話したかったんでしょ?』
「あ~、何で女の子と話したかったわけじゃないかって言うとね、うちに女の子が待ってるから」
『……。』
「じゃあこれで傘でも買いな?お嬢さん」(500円渡す)
『あ、うん』
「うん、じゃあ気をつけてね」
そんな感じの出来事だった。
マジで家まで来られそうで怖かった。ちなみに可愛くなかった。サンクスでも教えてやればよかったかと思ったが、これ以上話すのはやばいと感じた。家まで靴下で歩きながら、ふつふつと笑いが込み上げて来る。なんだぁ~都会ってこえぇ~、送られ狼だよこえー後でTに電話しよ~都会でも出会いあるじゃんか~うわ~危なかったこええ~。
まあでも、うちに俺一人で顔が可愛かったら連れてきてただろうけどね。はは。
反省点/
「何でこんな事するの?」と言われたら、『世界を変えるため』と答えるべきだった。
最後に『3人の人を助けてあげる事』という条件を言い忘れた。
*
そして最後に、家に帰ってマリちゃんに報告した後の一言。
「……バカな男。」
以上。