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結末は二人で



「「本日、私たちは皆様の前で婚姻の誓いをいたします。

今日という日を迎えられたのも、私達を支えてくださった皆様のおかげです。

これからは二人でで力を合わせて苦難を乗り越え、喜びを分かち合い、 笑顔あふれる家庭と共に、より良い国を築いていく事をここに誓います。 どうか今後とも末永く見守っていただければ幸いです 」」



嬋媛と流れる音楽の優しい音色。その音を贅沢にも間近で聞きながら、今、私達は結婚式をおこなっている最中だ。

二人で息を合わせながら婚儀の誓いの言葉を述べると、わ、と歓声が上がり、おめでとうございますとどの席からも聞こえてくる。


「ケイト王太子殿下!リリーナ様!ご結婚おめでとうございます!」

「王太子殿下様!王太子妃様!おめでとうございます!」


私が卒業してから二年。私は20歳、リリィが19歳。


長いようで短かったこの二年間、私達の愛は育つ事が止まる事もなく、今日に至っている。

リリィがまだ学園にいる間の一年間は長かった様な気がするけれど、リリィが卒業してからはとても時間が早く進んだ様に感じた。

やっぱり、私の隣はリリィが居なくては始まらない。



それと、アイシアの件だけれど、彼女は男爵家から切り離され大人しく修道女となったと聞いた。

本来であれば王族の命を狙ったとして、それ相応の処罰を下される筈だったけれど、学園内での出来事という事もあり極刑は免れた。…いや、免した、という方が合ってるかもしれない。

それにその判決は私なりの温情だ。

陛下…父上は少し頭を抱えたが、私の気持ちを汲み取ってくれて判決が下された。


結局、断罪されたのは彼女の方になってしまったな。



「ケイト様、何を考えていらっしゃいますの?」


む、と頬を膨らませた婚約者…いや、リリィはもう私の妻か。

その妻が不服そうにこちらを見ている。

折角の結婚式なのに、少し上の空だったのは申し訳ないと思った。



「いや、この結婚式まで、…長かったなと思っていたところだよ」



それは本当の事だ。

思えば予想外の事ばかり起きていた。


その度に私は、リリィと困難を乗り越え、リリィもまたそんな私の隣に居続けてくれて本当に助かったし、嬉しかった。


実のところ、本当はリリィが20歳になってから結婚式をするつもりだったんだけれど、どうやらこの世界では卒業と共に結婚をする者が多いらしく、寧ろ遅いくらいだと周りに呆れられる始末。

私としては、リリィを大切に思ってこその行動だと思っていたけれど…逆に不安にさせていたかもしれないと思うと申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

勿論そういう事で結婚式を遅らせようと思うと話をした時リリィは。


『わたくしは今すぐにでも結婚したいくらいです』


…と、少し怒られてしまった。

どうも長年暮らしていた日本の都内での感覚は簡単には忘れられないらしい。

これが地方民だったら少し話は違っていたのかもしれないけれど。


「待たせてごめんね、これで漸くリリィと夫婦になれる」

「本当に。まさか一年間待たされるとは思ってもみませんでしたわ。…実は周りに、不仲説まで流れていたんですのよ?」

「え?!」


それは初耳…。

どうやら私の知らないところでリリィに苦労をかけてしまった…と改めて反省してます。

そして皆さん、不仲説は噂好きな夫人達が流した嘘で御座います。私は嫁が可愛くて仕方ない人間です。


いつの世もご婦人は噂話がお好きなようだ。


まあそれも、この結婚式で全て払拭されたけれどね。


「わぁ…!」


隣でリリィが歓喜の声を上げた。

それもその筈。リノに頼んで、木の精や花の精の協力の元、上空から花を降らせるというフラワーシャワーが完成した。

この世界では行わない為、皆一様に上空を眺めながら笑顔を浮かべている。


「ケイト様ケイト様!お花がたくさんです!とっても綺麗!」


フラワーシャワーの中で見る彼女の笑顔は一際美しく、そして愛らしくて仕方ない。

彼女の腰を抱き寄せ、目元に化粧が崩れない程度の軽いキスをすれば降り注ぐ花弁より真っ赤に染まったリリィを見る事が出来た。

こればかりは独り占めしたい。


「リリィ」

「?はい、なんでしょう?」



「……病める時も健やかなる時も、死がふたりを分かっても、…リリィを愛する事を、リリィに誓うよ」


「……っ!」


この馬車の中で、二人だけで行われる誓いの言葉。

神に誓うのではなく、私はリリィに誓いたい。

そして私は死しても尚、リリィを思い続けるだろう。


「…わたくしも、死がふたりを分かっても、貴方を愛する事を誓います。…ケイト様に、誓います」


互いに誓い合って、私達は未だに止まない祝いの言葉をくれる民衆に手を振り、満足気に笑う。


それは彼女も一緒で、民衆に手を振りながらも私の視線に気付けば、蕩ける様な笑顔をくれる。


私達は額を合わせて、この日一日はどんなに疲れていても幸せばかりが溢れて、笑顔が絶える事はなかった。





一年後。

リリィは可愛い男の子と女の子の双子を出産するのだけれど……私の親バカっぷりがバレてしまうのは恥ずかしいので、そこは割愛させてね。



END

読んで下さった方、感想を下さった方、ありがとうございました!

本編はこれで完結ですが、その後の小噺を書いていきたいと思います。かなり不定期更新になると思いますが…。


最後まで読んで頂き、ありがとうございました!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 完結おめでとうございます。 お疲れ様です。
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