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スチームカーチェイス

 三人が頭を下げた瞬間、後部リアガラスを砕き、銃弾が座席に命中。


「野郎、あぶねえじゃねえか!」


 グリフェが割れ残ったガラスを振り落とし、ガンベルトから拳銃を抜いて、フレームにおいて偵察戦闘車の運転席目がけて引き金をひく。が、フロントガラスは割れず、銃弾がはじかれた。


「ちっ、防弾ガラスか……」

「グリフェ、前に踏み切りが……汽車がきた……間に合わねえ……」


 前方を見れば、ちょうど、踏切を越えた装甲トラックの後ろ姿が見える。踏切のシグナルが鳴り、遮断機が降りていく。左から長い貨物車両を引く蒸気機関車が白煙をあげて迫ってくる。このままでは装甲トラックに逃げられてしまう……


「アクセル全開だ、タートル……」

「正気か、グリフェ……」

「とても間に合いませんよ、グリフェ殿……ここは一旦、待ちましょう……」

「全開だっ!」


 グリフェがタートルの足の甲ごとアクセルを押しこむ。

蒸気式自動車は爆音をあげて踏切に突っ込み、遮断機が折れ飛ぶ。眼前に黒い鋼鉄の汽車が迫る。ミランが光神教の祈りを唱え、タートルが南無阿弥陀仏と異国の呪文を唱えた。車は間一髪、汽車より先に車道を飛び出した。その後ろに切迫していた偵察戦闘車は急ブレーキが間に合わず、蒸気機関車に激突。側面が無惨にひしゃげて転がり、汽車は急停止を余儀なくされた。


「はっはあぁぁぁ~~~~! やっぱり間に合ったぜ、俺のイーグルアイの目測は完璧だ!」

「……無茶しやがるぜ……お前はマッドだぜ、グリフェ~~…」

「……完全に死んだかと思いましたよ……グリフェ殿ぉ……」


 グリフェ達の自動車は水蒸気を撒きちらし、前方の装甲トラックを追う。周囲から建物は無くなり、赤土の荒野が広がっていた。周囲は山に囲まれ、街道左手に鉱山施設が見えた。その周囲に炭鉱夫の宿舎や倉庫、雑貨屋、食堂などの集落が見える。そこからサイレンを鳴らして地元警察の蒸気式パトロール車両が止まれと警告してきた。装甲トラックを運転する伍長が困り顔で上司に伺う。貨物との連結口から兵長も顔を覗かせている。


「どうします、シュブラック曹長?」

「かまわん……兵長よ、撃て……」

「はっ!」


 装甲トラックの上部から砲台が迫り出し回転、火砲から弾丸が飛び、パトロール車両に命中。轟音をたて、爆炎があがる。


「奴らめ……無茶苦茶やりやがる……」

「うげえぇぇ……砲座がこっちに向きやがったぜ、グリフェ……」

「右へよけろ!」


 ハンドルをきった自動車のいた地点に爆音と黒煙があがる。煙が薄れたころに、また火砲が炎をあげる。グリフェたちの車はジグザグ走行で避ける。爆撃が街道の石畳を粉砕して、土煙をあげ、穴凹をつくっていく。黒煙と粉塵で視界が閉ざされていく。


「ごほっ、ごほっ、これじゃ前が見えねえ……」

「タートル、ここはまかせたぜ!」


 グリフェは助手席から身を乗り出し、背中から鷲の翼を生やして空中に飛び立つ。そして、装甲トラック丈夫に近づき、砲座のハッチを開ける。ギョッとしてグリフェを見上げる砲手の兵長。その割れたアゴを蹴とばした。突然、装甲トラックの貨物コンテナの砲台から鉄梯子にぶつかりながら兵長が落下してきた。驚くギャリオッツ軍兵士の前に黒褐色のロングコートを着た銀髪の若者が降り立つ。


「グリフェ!」

「無事か、アンドレア……」


 座席に押し込められたアンドレアが喜色満面に叫ぶ。手前にいた兵士が裏拳で殴りかかるが、半身で躱し、右足を突きだして相手を転倒させる。そこへ、アーミーナイフを逆手に持った兵士が、背をかがめて太腿肉を狙って斬りかかる。


 しかし、前に飛んだグリフェのエルボーが兵士の延髄に炸裂。三番手の兵士はサーベルを鞘から抜いて斬りかかる。が、刃先がトラック内の壁に刺さって身動きが出来ない。慌てた兵士が必死に引き抜こうと力む。


「ぬぐぐぐぐぐぐ……」

「こんな狭い場所でそんなものが役に立つかっ、抜け作!」



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