能力の制限
今回※印のルビを打っている箇所がありますが、これは後書きで解説する用語です。 今後私が「これは解説挟んだ方がよくね?」と判断した単語等が出てきた場合は※印のルビを打つ予定です。
「おや、お目覚めですか?」
「んん……、エティさん?」
「はい、エティです。 あなたが倒れたといって血相変えてフィーナさんが戻って来まして……」
「そうだったのですね、何か迷惑かけてすみません」
「謝るならフィーナさんに謝って下さいね、彼女が付きっきりで看病してたのですよ?」
ふと右下を見ると俺の隣でベッドに腕を置き、組ながら寝ているフィーナが居ることに気が付く。 俺は知らぬ間にそっと手を置いて彼女の頭を撫でて、エティがタイミングを見計らって部屋から退出し、しばらくすると今度はガリアンが中に入ってきた。
「シドー殿、目が覚めたか」
「ええ、心配をかけて申し訳ありません」
「もう大丈夫そうじゃな、いやはや、フィーナが血相変えてお主が倒れたとギルドまで飛んで来てな」
どうやら町の外に出て倒れた俺をフィーナとガリアンでここのベッドまで運んでくれたらしく、フィーナは今にも泣きそうな勢いで声を荒らげていたと言い、ガリアンはそんなフィーナを見たのは初めてで、俺を運んだ後に仕事の町のパトロールを行い、その道線上にいる俺の元へ足を運んでくれたそうだ。
俺が意識を取り戻し自我を取り戻し、体調に異常が無いことを確認して安心した彼はパトロールに戻ると言って部屋から退出し、再び俺はフィーナと二人きりになった。
再び二人きりになった俺は、何で町の外に出た時に倒れた理由について様々な考察を始めたのだが、その時は特に水分不足になっていた訳ではないし、熱中症に掛かった可能性は低い。なら何で倒れてしまったのか? 中々頭の中が整理できない……。
「……喉渇いたな」
暑さとずっと寝ていた事が原因で俺は喉が乾きっており、召喚メニューから飲み物を出そうとしてメニューを開いたのだが、目の前に映し出された「警告」と書かれた文字が目に入り、その警告内容とやらの確認を行う。
簡単に纏めると、「召喚可能物資はレベル1の段階では2トンまでの制限が掛かる」 「一度に制限量の半分の物資を召喚すると体に負担が掛かり、気を失う可能性がある」 「召喚可能な物資の量はレベルが上がると増える」 というものだ。
これなら気になってた、車を召喚した後で倒れた理由に合致するため、何か未知なる病に掛かったという不安は無くなり、思わず安堵の息をつく。 しかし、そんな事になるなら愛車ではなく、軽バン辺りを召喚しておけば良かった……。そして気持ちが落ち着き、飲み物を取り出して飲んでいると、俺の横で寝ているフィーナが目を覚ました。
「っ! シドー!目が覚めたのか!?」
「ああ、心配かけて悪いな、もう大丈夫だ」
フィーナは俺が問題なく話せると認識した刹那、俺の胸元へ飛び込んできて、嬉し涙を流しつつ物凄く心配したと愚痴を漏らしてきた。
「おいおい、大袈裟すぎるぞ?」
「うるさいっ! もしこの事をルイナーが聞いたら間違いなく大泣きしているんだぞ!」
「ったく、俺が死んでるか生きているかなんて脈を見れば分かるだろ?」
外を見ると既に日が沈んでおり、まだ疲れが完全に取れてはいないので依頼された荷物の配達は明日から行うとして、今日は風呂に入って寝ることにする。 風呂から上がってベッドに入ると、フィーナは「看病してやったのだから添い寝しろ」と言わんばかりの表情をしながら俺の隣に潜り込んできた。
普段は厳格で凛々しい風紀委員が彼氏や幼馴染みの前では甘えたりするというのはギャルゲーの設定でよくある話だが、フィーナの場合はそれをリアルでやるため、いざ当事者としての立場になると対応に困るモノだ。
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朝、目が覚めると俺はいつもとは違う違和感があることき気付く。 それはいつも隣で気持ち良さそうに寝ているフィーナの姿が無いのだ。 今日は配達をしなければならないのだが、護衛のフィーナが不在だと出発出来ないため、受付のカウンターのテーブルを掃除しているエティにフィーナの行き先を訪ねた。
「おはようございます。 フィーナさんは今朝からギルドの鍛練場に向いました。 なんでも、今日はシドーさんの依頼を果たすためだという事で張り切っていましたよ」
「そうなのですね、分かりました。 ありがとうございます」
俺は宿屋を出てギルドへと向かう。 まだ日が完全に出ていないのか、町は涼しく、毎日この気温だといいのにと思う心地よさだ。町を通りを見ていると町の露店の店員がせっせと売り物にする品物を陳列している。
ギルドに到着すると、朝から様々な依頼を受ける為にクエスト受注カウンターに少しばかりの冒険者が居る程度で昼間ほどの活気がない。俺がエティから聞いた鍛練場を探していると、ガリアンが声を掛けられて例の鍛練場へと俺を案内してくれた。
「シドー殿、この際だからフィーナの剣術を見てはいかがかね?」
鍛練場は町の外の川沿にあり、学校の運動場程の広い土地が使われており、剣士向けの鍛練場と弓矢を使う冒険者向けの、的が離れた位置に配置された射撃場みたいな施設もある。
フィーナはもちろん剣士向けの鍛練場におり、朝からずっと鍛練を続けているせいか露出した肌の部分から大汗をかいているのがハッキリと分かる。 彼女は愛用の短剣、もとい片手剣持ち、目の前には標的として台の上に置かれた1メートル程の丸太と睨み合っている。 かなりフィーナの近くに接近したが、集中しているのか俺の存在に気付いていない。
「はっ!」
シュタっ!
彼女は向かい合った丸太の後ろに目に見えぬが如くの速さで回り込む。素早く方向転換をしてフィーナのかいた汗の粒が飛び散り、朝日の逆光に反射し凛々しい顔つきとバランスの良い体型と相まって非常に神々しい。 そしてすかさず回り込んだ標的の丸太を斬りつける。
フィーナの目はいつと俺と接している時とは違う戦乙女のまさしくソレであり、後ろに回り込まれて斬りつけられた丸太は見事3分割されてバラバラになった丸太の残骸がフィーナの足元に落ちる。
「シドーか、よくここが分かったな」
「ガリアンさんに案内してもらったんだ。 しかし、あんなに素早く動いて丸太を両断するなんて凄いな」
フィーナの剣術の高さを目の前で見せられた俺はただただ脱帽するしかない。それほどフィーナの剣術は優れており、彼女が自警団内でも高いスキルを持っていると言われても納得できる。
「シドー、すまないが出発する前に水浴びをしたいのだが構わないだろうか? 見ての通り汗まみれでな」
「そんなことか、構わんぞ、ゆっくり浴びておいで」
俺は出発前に水を飲んでおこうと思いフィーナと共に鍛練場横の川にやってきた。どうやら冒険者達がここで鍛練をした後にかいた汗を流したり、水分補給を容易に行えるため川沿にこの施設を作ったらしい。
「なぁ、水浴びも混浴なのか?」
「ああ。なんなら水を飲んだ後で一緒に入るか?」
「遠慮します。俺はワニじゃねぇんだ……」
俺はフィーナと一度別れ、水浴び場から上流に向い水を飲む。天然の川の水は冷たく、この暑い中飲むと大変美味である。昨日寝る前に召喚した飲み物が入っていたペットボトルに川の水を汲んで水浴び場の更衣室へと向いフィーナが水浴びを終えるまで待つ。
とは言え、更衣室の中で待っていると裸のフィーナとハチ会うので、入り口と更衣室を隔てる扉の向こうで待っているのだが。
しばらく待っていると扉の奥からパシャパシャと水をかき分ける音が聞え、衣類の擦れる音に混じってチャキっと剣を構えるような音が聞えて扉からフィーナが新しい服に着替えて出てきた。
今の彼女の格好はと言うと、胸部に黒の胸元がはだけた服とその周りにちょっとした装甲が各所に施された上着と短パンみたいなズボンにベルトを巻いて腰に彼女の武器である片手剣を納めた。
「フィーナ、そんな軽装備で大丈夫か?」
「問題ない。 むしろこの方が動きやすい上、手数重視の私の剣との相性がいい。 シドーの方こそ武器は持ったのか?」
「……すまねぇ、戦車の中だ」
今俺達が居るのはコールマン側の草原。そしてP90を置いている戦車を停めている場所はアクアポルト側のルイナー工房前だ。俺はチャリカーを一度召喚し、急いで戦車の元へと戻り車内からP90を取り出す。
以前召喚能力で補給可能となった弾薬、計250発5マガジン分を持ち出しフィーナの待っているコールマン側の草原に戻る。 そして俺が昨日召喚し、1日放置されていた愛車との再開を果す。
(まさか異世界でコイツを運転なんて、先月の俺に言っても信じないだろうな……)
「シドー、どうした? やはりまだ体調が悪いのか?」
「いや、この国に来てこの車に乗るなんて思ってもいなかったからな、つい考え込んでいた」
俺が転生前に乗っていた愛車、それはかつて日産自動車が製造し販売していたハッチバック車であるパルサーGTI-Rである。この日戦車とは違う鉄の心臓の鼓動が異世界に響き渡り、俺はこの近代文明の馬車でこの世界の大地を疾走するのであった。
※ワニ・・・ワニ族とも。混浴温泉に出没する野郎共の事で獲物が入ってくるまで様々な場所で待機し、獲物が入るとワラワラとその獲物に群がる。 その姿や湯槽に体を沈めている姿が水中に潜って目だけを出し獲物を探すワニと似ている為このように呼ばれるようになり、男が正直な生き物だという事を実感させられる。中には長時間の待機時間の水分補給の為の飲み物を持参し、女性側の脱衣室の扉に一番近い湯槽に陣取る猛者も居るとか。近年は混浴温泉の数が激減しているので半ば死語と化している。
士道の愛車で実車名を出すか2日程悩んでいたのですが、戦車と銃は実名出している為、メカに関しては実名を出す予定です。




