第1話「祖父と山」
「おじいちゃんが亡くなった」
母からそう聞かされた。
私は、しばらく何も言えなかった。
「それでね……おじいちゃんの遺言なんだけど」
「遺言?」
「あなたに、山を残したいって」
「……山?」
「そう。山」
何で山? そう思った。
「ど、どうして?」
「さぁ、山をあなたに相続したい、としか」
「なるほど?」
「それでね、突然だけど、その山のある場所に暮らすことになったから、引っ越すわよ」
そう、母が言った。
「え!? いきなり!?」
それが、『始まり』だった。
あの後、私は引っ越しの準備をさせられ、車に乗り、祖父の暮らしていた家に母と向かった。
私は『周防 神名』。普通の女子高1年生。
山をもらうことになりました。
長いこと車に揺られ、たどり着いたのは、長野県『式守市』の、私がもらう山のすぐ隣の家。
その家は古風で、歴史を感じた。
「お母さん、ここで暮らすの?」
「えぇ、そうよ。先に見てらっしゃい。自分の部屋くらい自分で決めてよね」
母はそう言い、届いていた荷物を整理し始めた。
ガラガラガラ、と音を立て、玄関の扉が開く。手入れはされていたようだ。
「おじゃまします………」
そう言って入る。
中は意外と広い……。
「おじいちゃんの私物も少し残ってる」
私はその家を見て回った。
台所。リビング。トイレ。お風呂。
大体の位置はわかった。
「あ、あの山、ここからよく見えるかも」
私がもらうことになった山が、ここからなら見える。
家と山が近いから一部しか見えないけど……。
「あら? よく見えるわね〜。ここに決めちゃう?」
母がいた。
「お母さん、準備はいいの?」
「えぇ、もうだいたい終わったわ」
(はやっ)
思わず心の中でそう思った。
「それで、あなたのお部屋、ここにする?」
「うん、ここにする」
「わかった、あなたの私物、そこに置いておいたから」
(だから早いよ)
そう思った。
そして私は、自分の部屋になる部屋に私物を配置した。
「部屋って感じね」
「お母さん、自分の部屋は決めなくていいの?」
「えぇ、後でいいわ。さ、他の部屋も決めちゃいましょ。あなたはゆっくりしてていいわよ」
そう言い、母は行ってしまった。
「………」
山、か………。
登ってみたい、なぜかそう思った。
「ねぇ、お母さん?」
「あら? な〜に?」
「あの山、登ってみてもいい?」
「いいけど、あなたの山だし、大丈夫? 途中で疲れない? あなた山登ったことないでしょ?」
「舗装はされてるんだよね?」
「えぇ、そのはずよ。おじいちゃんも登ってたらしいし」
「なら、いける。一人で大丈夫」
「そう、なら、行ってらっしゃい」
「うん、行ってきます」
そう言い、家を出て山に向かった。
その山で新たな出会いが待っているとも知らずに、……………
「新しい山の保有者か……果たしてどんな人間か、楽しみじゃ」
その声の主は見えない。
ただ、祠だけがあった。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




