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それは、8月の終わりの出来事だった。


「明日から、学校はじまる?ってか、今日も学校には行くんだね。」

制服を着て朝食を食べている莉乃に話しかける。


「うん。補習は終わったんだけど、部活に行くから。一緒に行こ?」


職場の県庁と莉乃の通う学校は近く、普段電車には一緒に乗る。

年頃の娘だから、一緒に行くのヤダって言ってくると覚悟はしていたんだけどね。


「今日は、代休を取ってるから一緒に行けないかな。」

残念だけど、仕方ない。一人で行ってもらおう。

まぁ、一緒に行くだけ行っても良いんだけどね。


「えっ。そうなんだ。じゃぁ、私も休もうかな。」


へっ?何言ってるのこのコは?

俺と一緒に行くために、夏休みも学校に行ってたの?

いや、そんなわけないか?

成績の問題で補習は、確かにあったのだし、部活と称して魔法少女の特訓しているって聞いてる。


「うん、じゃあ、通勤の時間帯避けて、一時間くらい遅く行こっと。」

「まぁ、莉乃のことだし、任せるよ。」


朝食のあと

「どうぞ。ゆっくりするなら」

コーヒーを淹れてあげた。

「ありがとう。」

「うん。」


リビングで向かい合って座る。

「夏休みも終わりか、どうだった?」

あんまり話題もない。

「うん。プール行ったり、お祭り行ったり楽しかったよ!」

高一の娘と夏休みの思い出が共有できるなんて、幸せなことだな!


「そうだな、あ、足はもう良いのか?」

下駄で指擦れてたよな。

「うん。大丈夫だよ。」

「そうか、良かった。」

「あ、そうだ。おんぶしてくれて嬉しかった。ありがとね。」

「おんぶくらい何時でもしてやるよ!」

背中に当たる二つの感触を思い出す。うーん。良かったな。


「私、成長してるでしょ?」

「ぶっー」

思わずコーヒーを吹き出してしまった。何を言ってるんだこの娘は?


「どうしたの?ちょっとだけだけど、重くなっちゃったでしょって。ん、なんか変なこと考えてた?」

莉乃が舌を出しながら言う。コイツっ!

でも、父親として取り繕わねば。

「いや、まだまだ莉乃は軽いよ。あ、タオル持ってこよ!」


吹き出してしまったコーヒーを片付ける。

ついでに洗いものしておこう。


洗いものしながら、リビングに座ってコーヒーをすする莉乃を見る。

…可愛くなったもんだ。義姉ちゃんの娘だもんな。

似てきた。けど、この娘は、義姉ちゃんじゃなく、俺の娘の莉乃。

俺の、今。うん、俺の全てだな。


愛だよ。愛。



そういえば、サクラさんが愛について聞いてきたな。

何でも、魔法少女の魔力の源である皆を守りたい気持ち、つまり愛について知ることで妖精さん自体のパワーを上げたいとのこと。


そんなんでパワーアップするん?

よくわからんな。ほんとに。


で、説明しようとしたんだが、

……あ、愛ってなんだ?


ためらわないこと?

ん、違うか。

くやまないこと?


「さっきから何言ってるかわからないです。」

サクラさんに言われた。うん、俺もわからんな。


めんどくさいので、あの世紀末マンガ、北東の拳を貸してあげた。


北東の拳には、愛が詰まっている。奥義会得だって愛の力なんだし、間違いない。


「あなたもマンガですか?」

サクラさんの冷たい目線。マンガの何が悪いのさ!


「あ、北東の拳ですか?私も好きです。」

蒼井さんが口をはさんできた。

色々あったけど、今も同僚として働いている。

しっかりと魔法少女のフォローをしてくれる頼れるお姉さんになっている。


「あの、南東西拳の白鳥と紅鶴の闘いは泣けます。あと覇王様がカッコ良すぎて……あ、ごめんなさい。」

「いや、俺も覇王には憧れてるよ」

「「我生涯に◯◯◯◯◯◯◯!」」

セリフ被りました。二人で笑ってしまう。

久しぶりに見た蒼井さんの笑顔。

かわえぇなぁ。


やっぱ、蒼井さんとは趣味が合う。

惜しいことをしたかな、自分の気持ち誤魔化してこのコと楽しく生きることだってできたかもしれない。


ん、自分の気持ちって何だ?

……まぁ、良い。



「わかりました。蒼井さんまで薦めてくるなら読んでみます。」

なんて言ってたサクラさん。


次の日

「あの、続きなんですが……」

「え、もう読んだの?ごめん、明日持ってくる。」

「あ、大丈夫です。取りに行きます。」


どんだけはまってんねん!

まぁ、貸した巻だと、主人公の怒りで服が破れるところで止まっちゃってるんだけどね。

ちょっとイジワルしちゃった。てへっ。



あんまり、関係ない話か


場面は、家のリビング。洗いものも終わり。

俺もコーヒー飲んで一服だな。


「おんぶしたの、小学校の時以来だったな。」

「うん。おとうさんの背中。相変わらず大きかった。」

「ん、ちょっと太った?」

「ううん。そう言う意味じゃなくて、気持ち的なものかな?」


気持ち的に大きい?よくわからんな。


あ、スマホに通知来た。


え、緊急事態?ヤバいのでは。

桜花高校周辺か?行くしかないな。


緊急事態って文言に気をとられて、本当に迂闊だったんだけど。

「高校周辺だって?行くよ、チェリーさん!」

って、莉乃の呼び掛けに

「おう、急がね………って」

返事してしまった。


「やっぱり、そうだったんだね。」

莉乃が笑っている。

「い、いや、そうじゃなくて、って」

しどろもどろになる俺。

「良いの!でも、スッキリしておきたかったから。頑張ろう、チェリーさん!」


ん、良かったのか?心を入れ換えるか。

深呼吸して


「莉乃!ペアーは俺が守るから!」

笑っていた莉乃が一瞬真顔になり、そして笑顔になる。


「よろしくね。チェリーさん!」



外に出ると、サクラさんとナシオ君がいた。


「サクラさん。バレちゃった。でも、多分大丈夫だよ。」

「そうですか…仕方ないです。でも、今は急ぎます。」

うむを言わさずサクラさんに血を吸われる。


う、気持ちいい。隣では、莉乃が快感に耐えている。

くそっ、なんか複雑な気持ちだ。



「今、学校にはスターフルーツしかいないのよ。急ぎましょう!」


スターフルーツ。あの、無口で大人しいけど、けしからんモノを持ってるコか?


急がないと、一度くらい触ってみたかったんだ。


ぢゃなくて、莉乃の大切な先輩。助けないと!




まだだ。

まだ終わらんよ。


完結までの脳内プロットはあります。


というわけで、ここまで読んでいただきありがとうございます。

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