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倒すべき敵


「落ち着いて、は、無いか…」


家に入れずに、座り込んで震えていた莉乃を、部屋に入れて、座らせた。


抱えてあげたんだけど、柔らかいはずの莉乃の体がこわばっていて…

まぁ、柔らかくはあったんだけど。


って、違う。


「お茶、いれたよ。飲めるか?」

リラックス効果のあるという葉っぱ、ハーブってのか、をいれてみた。

「ん、ありがと。」

うん、ちゃんとお礼が言える良いコだよ。

でも、さめざめと涙が止まらないようだ。


いや、部屋に入ってから、泣き出したのかな?


「はい、これで…」

タオルを出してあげる。

「ありがとう。あ、あの、おとうさんも…お水、飲んで。」

「ん、俺?大丈夫だよ。」

「走っ、走って、来てくれた、から。…大丈夫?」


くぅー。今、俺の心配できるの?

なんて良いコに育ってくれたんだ。良い意味で、親の顔がみたいよ。


洗面台に向かった。

親(オレ)の顔が見たかったからじゃなくて、汗かいたから、顔洗いたかったからだよ。


リビングに戻ると、お茶に口を付けてくれて、少しだけ落ち着いた莉乃が座っている。


涙は、まだ流れているようだけど…


俺が一番大切な人。

…どうしたら良いのだろう。


前に、

「私じゃ、あなたの一番になれないみたい。」

蒼井さんが言ってた事がある。そのときに解らなかった意味がわかる。


俺の一番大切なのは、この娘なんだな。


それは、多分、この娘を引き取った10年前から、俺が死ぬまで、いや、死んでも変わらない事。


この娘が大切。大事なこと、何度も言うよ。

莉乃、君を愛している。

娘として、だけどね。


…たぶん。



「ありがとう。落ち着いてきた。」

お茶を飲んで、落ち着いてきたみたい。

「良かった。まぁ、話すのはきついだろうし、お風呂でも入ってゆっくりしててな」


莉乃が、まっすぐな眼で俺を見る。何か決心したようだ。

「ううん。聞いてほしい。」

俺が、莉乃と向かい合うかたちで座ると、莉乃が続ける。

「おとうさん。知ってると思うけど、私、魔法少女なの。」

「えっ。」

魔法少女なの、まぁ、当然知ってるけど、今告白することにビックリだよ。

「えっ、知らなかったの?あ、ごめん、急にこんなこと…」


ん、ビックリしたことで誤魔化せた?


「あのね、さっき、ピーマンのアイツが現れて…」

「ピーマン…」

なんだろう。アイツが何かあるのか?

確かに物凄いパワーだったが…


「アイツが、」

莉乃が、また震え出す。


莉乃の隣にいき、体をさすってあげる。

「大丈夫だよ。俺がいるから。辛かったら明日で良いよ。」


「ううん。言わないと。おとうさんにとっても大事な人の事だから。」

莉乃の向いた目線の先には、莉乃の母親、俺の義姉の写真が…


「思い出しちゃった。全部。」

莉乃が少しだけスッキリした顔になった。

「お母さんが、死んだのって、私のせいだった。」


え、そんなわけないだろ。どういう事?

「それは、違う」

だろ。


「ううん。あのピーマンの攻撃から庇って、お母さん、死んじゃったから…」

莉乃が続ける。

「私が、あのピーマン。可愛いって思って近づいたから。」

莉乃から、大粒の涙が流れる。


「おとうさんにとっても、大事な人だったのに………」


ん、俺が義姉ちゃんの事好きだったこと知ってるの?


「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」


この娘は、何を謝っているんだ?

「莉乃!待て、それは、違う。莉乃のせいじゃない!」


義姉ちゃんは、莉乃を庇って死んだ?

でも、それは、莉乃のせいじゃない!


「莉乃が、もし、お父さんがピンチな時どうする?」

俺は、この娘に大切にされている自信があるから、この問いができる。


「…助ける。……絶対助ける。」

「それで、莉乃が傷ついたら、俺のせいなのか?」


「…違うよ、私が、私が助けたかったから。」

「そうだろ。だから義姉さんも、莉乃のせいなんて思ってないよ。」


「でも、おとうさんの大切な…」

「その代わり、いや、代わりじゃないな。かけがえのない存在ができたよ」


莉乃を肩から優しく、抱き包む。

「莉乃、君だよ。」


「おと、おとぅ、さーん、、」


莉乃が抱き返してくれる。


娘の感触。柔らかくなっちゃって、もう、大人だ。

ここまで育てることができた。感慨だな。



決して、下心はないぜよ。…たぶんね。



二人で泣いちゃってたけど。…俺も泣いてた。

少し時間がたって、莉乃が言った。


「でも、アイツは倒さないと…」


そうなんだろうけど、無理だよ。あいつのパワーは、桁違いだよ。


「ナシオが言ってたんだ。あ、ナシオってのは、力を貸してくれる妖精で。」


…知ってるよ、莉乃さん。


「ベジタリア星人にやられちゃったら、そのベジタリア星人がやられるまで、ちゃんと死ねないんだって。」

ん、ちゃんと死ぬ?

「成仏できないってことかな?」


「たぶん。そんな感じだと思う。だから、アイツを倒さないと…」


「義姉ちゃんが…」


「うん。お母さんのために、アイツを倒すよ。」


でも、危険だ。アイツは強すぎる。

次にあったら、まず逃げるべきだと思う。

とは、思うけど、義姉ちゃん助けないとだな。

でも、


「無理はするなよ。危険なことはして欲しくない。」

「うん、でもわたし、私、強くなる。強くなりたい!」


俺にも、力が必要だな!

莉乃を守る力が。





とりあえず一段落ですね。


本日、あと2話くらい投稿予定です。


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