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scene18 コンテスト④ 決勝戦!

挿絵(By みてみん)


輪廻─ロンド─のステージを見ていたら、突然後ろから話しかけられた。


「いやぁ、落選しちまったよ!」


振り向くと、ヤマトがそこに立っていた。


「ヤマト!惜しかったね!」


「惜しいか?他と結構点数差があったから全然届かなかったよ」


ヤマトは悔しそうに言った。


元々、ユウを誘ったのはこのヤマトだ。


モデル志望の動機が一番強かったのは、ヤマトに違いない。


「でもウォーキングとか上手かったし、頑張ったと思うよ!」


必死にフォロー。

だってヤマトだって頑張ったんだから、少しは褒められてもいいはずだよ。


「そうだね…ユウみたいにバック転でもすれば、インパクトは全然違ったよね」


「そう、あれって事前にやるって決めてたのかな?」


「さあな。ユウなら急に思いついて、その場ですぐ出来そうな身体能力はありそうだけどな」


どんな身体能力だよ…。

急に思いついて出来るわけないでしょ。


「決勝戦はどんなことやるのかな?」


アキちゃんが横から質問する。


「特技の披露だってよ」


やっぱり!

私の睨んだ通りね!


でもそうすると、ユウは百人一首になるけれど…。


「特技ならスリーポイントシュートを10回連続で決めてやるのに!」


ヤマトは得意気に言っているが、よく分からないけれど、まあ凄いのかな…?



輪廻─ロンド─のライブが終わり、会場は一時静かになった。


「さあ、皆さん!お待たせ致しました!」


司会が盛り上げる。

輪廻─ロンド─のBGMが流れる。

完全に輪廻─ロンド─のステージだ。


「次のステージは、特技の披露もあります!最初は────!」



紹介されたファーストメンバーがステージを歩き始める。


衣装は予選と同じシックな黒い衣装に、スカーレット色の少し赤みの帯びたジャケットを着ていた。


ステージ上をウォーキングするところまでは、さっきまでのステージと同じ。


ステージ中央に来て、彼はマイクを取り出し、BGMに合わせて歌い始めた!



ううん…まあまあ上手いかな?



しばらく歌った後、ウォーキングしてステージを終えた。


どうやらステージ中央で、特技の披露があるらしい。


次に現れたメンバーは、特技披露でシャドーボクシングをしていた。


男らしさという意味で強さをアピールしたのかな?

実はボクシングワールドチャンピオンとか?

あんなに体の線が細いのに、そんなわけないか。


会場は、特技披露では一定の盛り上がりを見せる。


ただ、シャドーボクシングの彼より、歌を歌った彼の方が盛り上がりがあった。


まあ、どちらかというと、歌の彼の方がイケメンだったけれど。



順番的に次は輪廻─ロンド─のメンバーか、ユウのはず。


ドキドキする。

ユウ、頑張れ──────!


アキちゃんも順番を分かっているのか、少し緊張した表情だ。


次に出てきたのは─────



ユウだ!

ユウが出てきた!


「頑張って!!」


力いっぱい声を振り絞る!

隣のアキちゃんも、後ろのヤマトも声を張り上げる。


ウォーキングをし、ステージ中央に立つ。


ユウの特技は百人一首。


あそこでどう表現するのだろう。


そう思った一瞬、会場のBGM、ライト、全ての設備の電源が落ち、真っ暗で静かになった。


それまであった歓声も、突然の出来事に静かになった。


これは─────演出?


一筋のライトだけが、ユウに降り立ち、ユウを照らす。


何が始まるんだろう─────?


そう思ったとき、ユウの独唱が始まった。


しっとりとした、バラードだ。


そして、結構上手い。


ユウって歌上手かったっけ…?


そういえば一緒にカラオケ行ったことなかったな。


しばらくユウの独唱が続く。


ただ、百人一首と何か関係があるのだろうか?


しっとりとしたところ…?


ただ、心の奥に届くような、印象に残る歌声だ。


会場は歌声を聴くように、静かだ。


そして、独唱に区切りがあったかと思うと、会場は明るくなり、BGMが流れる。


ユウはまた、ステージ中央で、私の方に向かい、少し笑顔を見せたかと思うと、くるりと反転し、会場から消えた。


会場は少しずつ歓声が沸く。


今のユウの演出は、不可思議な、なお且つ何も無かった一瞬間だったように、過ぎ去った。


「吉と出るか、凶と出るか…」


ヤマトは呟いた。

ヤマトは今の演出を、知っていたようだった。


今は何も聞かないでおこう。

後でゆっくりユウに種明かししてもらおう。


そんなことを考えていると、次はリュウジが出てきた。


ということは、最後はやはり輪廻─ロンド─メンバーで締めってことね。


リュウジの特技はダンスだった。


キレのあるダンスだったけれど、やはりさっきのユウの演出に対しては、インパクトに欠ける。


ただ、特技中の盛り上がりは、一番な気がした。


さすがリュウジ。


「リュウジくん、格好よかったね!」


アキちゃんはリュウジのことは知らないはずなのに、リュウジについて褒めた。


「リュウジは、うちの高校の生徒だよ」


「えっ!?そうなの!?」


口を抑えて驚くアキちゃん。

驚いた顔が、ちょっと可愛い。

これまで黙っててごめんね。


リュウジがステージから消えた後、輪廻─ロンド─のメンバーが登場し、会場の盛り上がりは最高潮に達した。


輪廻─ロンド─のメンバーは、ウォーキングもせずにそのままステージ中央に立ち、ソロで歌い、踊り出した。


会場がさらに盛り上がる。


今までの全ては、このために準備されたことのように、整った行程表を、輪廻─ロンド─が体現しているかのようだった。



決勝戦はネット投票も含まれる。

単純に会場での盛り上がりが、投票数に比例しない。


輪廻─ロンド─メンバーだって、もしかしたら抜けるかもしれない─────


ユウが勝つには、どうしたらいいのだろうか。


輪廻─ロンド─のソロステージが終わり、会場はその余韻に浸っていた。

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