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scene16 コンテスト② 予選投票

挿絵(By みてみん)


10人目のモデルがステージを歩き出す。


出場者全員、同じ黒い衣装に身を包んでいた。


ジャケットのようなものを着ているが、薄い生地が体のラインを出しており、黒い色が一層個性を埋没させている。


最も個性を出せない服装で、それぞれ勝負させているような演出だった。


「まだかな?」


アキちゃんも気持ちが焦るのか、少し興奮した感じで聞いてきた。


「もうすぐじゃないかな!」


そう応えた直後、歓声が一気に上がった!


「えっ!?何っ?」


アキちゃんも私もなぜ歓声が上がったのか分からなかったが、11番目のモデルを見てすぐに分かった。


トニー事務所人気グループ“輪廻─ロンド─”のメンバーの1人が、11番目のモデルとして登場していた。


彼がモデル経験者かどうかは分からないけれど、すごい歓声の中、颯爽と歩く姿は、さすが人気グループの風格が備わっていた。


そして彼はステージ中央に立つと、バック転をして場内を沸かせた。


何もかもレベルの違いを見せつけられた私達は、今までのモデル達が、素人の集まりでしか見えなくなっていた。


────まあ、それはそうだけれど。


11人目のモデルの輪廻─ロンド─メンバーが去ると同時に出てきたのは、ヤマトだった!


「あれ!ヤマトくんじゃない!?」


アキちゃんは興奮気味に指さした。


「ヤマトぉー!!」


力いっぱい叫んだ!


しかし、輪廻─ロンド─メンバーの歓声の余韻があり、私の声はステージに全く届かなかった。


事前にウォーキングを練習していたこともあり、緊張した様子も見せず、ステージを歩き切った。


そして、ヤマトと入れ替えにステージに現れたのはユウだった!


「ユウ!」


思わず声が出た。


少し緊張しているのか、ウォーキングにぎこちなさがある。


──────頑張って!!


心の中で、必死に応援した。


「ユウくん!!頑張って!!」


隣りでアキちゃんも叫ぶ。


ユウはステージ脇まで歩き、ターンしてステージ中央に立った。


少し間が空いたと思った瞬間────


バック転した!!


ユウの突然のハイパフォーマンスに、場内は一瞬ざわめいた。


着地後に片膝ついて、スッと立ち上がったかと思うと、何事も無かったかのように歩き出した。


ざわめきは一瞬だったが、会場内の人の記憶には残ったことだろう。


ユウは、去り際、こちらを見て、少し笑った─────気がした。


「ユウくん、すごい!」


アキちゃんの興奮は、私まで伝わってきた。

きっとアキちゃんは、ユウを見に来たに違いなかった。


ユウと入れ替えにステージに入ってきたのは、リュウジだった!


リュウジはヤマトやユウと比べて、とてもクールな印象を与えた。

冷静な歩き方の中に、確固たる自信が垣間見えた。


リュウジが終わった後、10人程出てきて、予選は終わった。


「終わったみたいね」


会場内の音楽が変わり、明るくなった。

参加者は一斉に、スマホをいじりだした。

これから15分以内に、指定された投票アプリにて、投票をする。


参加者1人につき、モデルを2名まで投票できる。


これは11番目のモデル、輪廻─ロンド─のメンバーも対象であるから、実質、2番目の投票を誰にするかで、次の決勝投票進出が決まる。


でも私は、もちろん、ユウとヤマトに投票した。アキちゃんも同じ。


あとは、結果を待つだけだった。



ユウならきっと大丈夫─────



根拠はないけれど、そうとしか思われなかった。

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