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scene13 面接

挿絵(By みてみん)


土曜日の朝。

トニー事務所のある新宿で、ユウとヤマトと待ち合わせ。


少し早めに着いたので、2人の到着を待ちながら周りをキョロキョロしていると、満面の笑みで近づいてくる、ハイカラな男子が見えた。


「サオリちゃん、どう!?これ?」


結構なダメージの入ったダメージジーンズに、きつめの赤いジャケットを着たヤマトが登場。


ヤマトには悪いけれど、どう見ても普通の格好ではない。


…どうって言われても。


普通の格好のヤマトの方が、私は好きだな…。


返答に困っていると、ヤマトはジャケットからサングラスを取り出した。


「これで完璧でしょ!芸能人はやっぱり普通じゃつまんないよね!」


…そうかもしれないけれど、奇抜過ぎるのもどうなんだろうか。


ジャケットよりジーンズの方が高かった等聞いてもいないのにどんどん話しかけてくるヤマト。


格好については、何も疑問に思っていないらしい。


まあ、面接は中身が大事だからね。


ヤマトと話をしていると、後ろから声をかけられたので、振り返るとユウがいた。


「お前何なんだよ、それ!?」


ヤマトはユウの格好を見て、声をあげた。

ユウはヤマトとは正反対に、きっちりとしたダークスーツに身を包んでおり、幼さが残るいつものような高校生には見えず、一見して大人の男に見えた。


かっこいい…!


スーツを着ると、少し大人に見えて、ちょっと見違えちゃった…!


「自分で買った。2万円ぐらいかな」


「いや、そういうことじゃなくてよ!」


ユウは涼しそうな顔で言った。


何故スーツなのか以前に、いつ、どこで買ったのか気になった。

読者モデル応募から今日まで、そんなに日数は経っていないのに、よくスーツを買うという決断が出来たなと思った。


スーツなんて持っている高校生なんてそう居ないと思うけれど、元々持っていたのだろうか…?


ユウは本当に、不思議なところが多い。


まあ、似合ってるからいいか!


「どういう意図があっての面接か知らないけれど、向こうが雇うかどうかの面接なら、やっぱりちゃんとした格好じゃないとダメかなって」


確かにそうかもしれない。

でも高校生なのにスーツっていうのもちょっとやり過ぎじゃないかな…?

スーツは男を上げるアイテムとしては悪くないけどね。


「何言ってんだよ、ユウ!目立たないと印象に残らないぜ?」


あなたは逆に目立ち過ぎな気もするけれど。


「とにかくもう行くぞ。あと30分で集合時間だ」



首都東京の中心地、新宿は、土曜日はさらに人が混んでおり、人をかき分けながら進んだ。


これぐらいの人の量なら、ヤマトの格好も目立たないか。


10分ぐらい歩いたら、高層ビルの前に着いた。

ここにトニー事務所が入っているのかな?


「着いたぞ」


ビルの中に、トニー事務所はあった。


ビルの1階は案内フロアになっており、受付嬢が常駐して、一級のビジネスビルの雰囲気が漂う。


受付を素通りして、エレベーターホールに近づくと、見覚えのある男がエレベーター前に立っていた。

立っていたというより、私達の到着を待っていたらしかった。


「なんだ、その格好は?」


リュウジはヤマトを指さして言った。


「お前こそ何なんだよ。学校の制服なんて普通じゃねーかよ」


いや、リュウジが1番まともかもしれない。

だって私達、高校生だから。

制服が普通だと思うよ、ヤマト。


「全くお前は頭が悪いな。反面、ユウはまだマシだな」


いつもと同じ、上から目線のコメント。

この人には自信しかないのだろうか。


「どっちでもいい。早く上に上がるぞ」


まさに格好なんてどうでもいいというように、ユウは2人を急かした。


「ユウ、何か作戦でもあるのか?」


リュウジは聴いた。

ユウは何も応えない。


「どんな作戦があろうと、俺は落ちないけどな」


リュウジは自信たっぷりに応えた。


エレベーターで最上階の20階まで上がり、トニー事務所の前まで来た。


ドアの前に、受付用の電話型インターフォンがあり、ユウが受話器を取って応答。


こう見ると、スーツを着ているのもあって、営業に来たビジネスマンみたいに見えた。


しばらくすると、ドアが開いた。


「おはようございます。どうぞ」


受付らしい女性が笑顔で対応。

4人はそれに従ってぞろぞろとついていく。


「エントリーしていない方は、こちらでお待ち下さい」


私のことか。

1人だけ、別部屋に案内された。


「ユウ、ヤマト…それにリュウジくん、頑張ってね!」


軽く手を振って応えるユウ。


私は別部屋に移動して待機。あとは祈るだけとなった。


どんな面接だろう。


でもきっとユウとヤマトなら、無事に通過するに違いない。


窓から、小さくなったレプリカのような新宿の街を見下ろしながら、2人の健闘を祈った。



1時間後…。



ガチャリと扉が開いて、3人が戻ってきた。

3人同時面接だったのだろうか。


「よく分からない面接だったな」


リュウジが言った。


「奇抜な格好だねって褒められたぜ!」


ちょっと興奮気味にヤマトは言った。

それは褒められたのだろうか。


「3人同時面接だったの?」


「いや、10人だ。ネットで応募した項目について聞かれたのと、今後の目標や夢を聴かれたな。あと、マサトについて、今後どうやったら人気が出るのか聴かれた」


ユウは応えた。


「マサトって遠藤マサト?」


「そう。まずマサトを知らない奴が半分いたな」


「ふん、あり得ないな」


リュウジは鼻で笑った。


「そんな奴はモデルを志望する資格すらない」


「マサトは新人読者モデルで、まだ人気に偏りがある。10代から20代向けの女性誌にはよく出るけれど、30代以上の女性誌や男性誌にはほとんど出ていない。だからそこにまだマサトが開拓すべき余地があるってわけだな」


確かに、この前渋谷で撮影を見ていたのは、ほとんどが10代の女の子ばかりだった。


「実際に30代以上向けの女性誌に出たところで、人気がついてくるとは限らないけどな。マサトはまだ若過ぎる」


あなた達はもっと若いけどね。


「そんな難しそうなことまで聴かれたんだね。モデルに関係あるのかな?」


「さあな。モデルについてどれだけ考えているのか知りたかっただけじゃないのか?」


リュウジが応えた。リュウジもこの面接に向けて、かなり準備してきたみたいだ。


「じゃあ帰るぞ。ここで立ち話は事務所に迷惑だ」


4人そろって事務所をあとにした。


私達の他にも、たくさん若い男性がトニー事務所やビル内のロビーにいた。


やっぱりこんなにたくさんの応募者がいたのか。

ユウ達は10人同時面接だから、他に100人以上はいるかもしれない。


マサトのマネージャーは、ユウの書類を無事に面接官達に渡せたのだろうか。


面接の結果は、明日出るらしい。


新宿の駅に向かって歩く。

ユウ、ヤマト、リュウジの3人は、誰ひとりとして、不安な様子などなかった。


面接で余程手応えがあったのだろうか。


私が1番不安だ…。


みんな面接が通りますように…!

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