表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
15/15

第十五話 最初の一歩

いつも『もう一度、あなたの声を。~音を知らなかった少女の異世界譚~』を読んでいただき、本当にありがとうございます。


第十五話『最初の一歩』では、シルヴィアが火・水・風・土の四つの属性魔法に初めて触れます。


前話で明らかになった秘められた才能。


しかし、才能があるだけでは本当の魔法使いにはなれません。


努力を積み重ね、一歩ずつ学び続けることが、シルヴィアの成長へと繋がっていきます。


まだ幼い彼女が、小さな成功や失敗を繰り返しながら、自分だけの魔法を見つけていく姿を、ぜひ楽しんでいただければ幸いです。


それでは、第十五話をお楽しみください。

朝日が庭を優しく照らし、小鳥たちの歌声が響いていた。


 私はいつものように大きな木の下へ向かう。


 そこでは、リリア先生がお父さん、お母さんと話をしていた。


「おはようございます!」


 私が元気よく挨拶をすると、三人は笑顔で振り返る。


「おはよう、シルヴィア。」


「おはようございます。」


「おはよう。」


 私は先生の前まで駆け寄った。


「きょうは、なにをするの?」


 リリア先生は優しく微笑む。


「今日は、四つの属性を実際に体験してみましょう。」


「四つ?」


「ええ。」


「火、水、風、土。」


「どの属性が一番扱いやすいのかを、一緒に確かめます。」


 私は胸を高鳴らせながら頷いた。


「はい!」


 先生は一本の木の枝を私へ渡す。


「まずは火属性から始めます。」


「前回と同じように、魔力を集めてください。」


 私は目を閉じる。


 胸の奥にある温かな魔力。


 その流れを感じながら、ゆっくりと枝の先へ集めていく。


「焦らなくて大丈夫ですよ。」


 先生の声が聞こえる。


 私は小さく息を吸い込んだ。


「──《フレイム》」


 ぽっ。


 枝の先に、小さな炎が灯る。


 前回よりも少しだけ大きく、揺らぎも少ない。


「できた!」


 私は思わず笑顔になった。


 リリア先生も優しく頷く。


「昨日より安定していますね。」


「魔力の流れも綺麗です。」


 私は嬉しくて炎を見つめる。


 昨日は数秒で消えてしまった炎が、今日は少しだけ長く燃え続けていた。


「では、次は水属性です。」


 先生は庭の片隅に置かれた桶を指差す。


「水を思い浮かべてください。」


「冷たく、澄んだ水。」


「その姿を頭の中へ描くのです。」


 私は静かに目を閉じる。


 透き通った川。


 光を反射してきらきらと輝く水面。


 頭の中には、そんな景色が浮かんできた。


 胸の奥から魔力を流し、枝の先へ集める。


「──《ウォーター》」


 その瞬間。


 枝の先から、一粒の雫がぽたりと落ちた。


 土へ落ちた雫は、小さな染みを作る。


「……できた?」


 私は不安そうに先生を見る。


 リリア先生は優しく拍手を送った。


「ええ。」


「今のは立派な水属性魔法です。」


「最初から水を生み出せる人は、多くありません。」


 私はほっと胸をなで下ろした。


 火も、水も。


 少しずつだけれど、確かに魔法になっている。


 そのことが嬉しくて、自然と笑みがこぼれた。


「それでは、次は風属性です。」


 リリア先生は私の前に一枚の葉っぱを置いた。


 朝露に濡れた小さな葉が、風もない庭で静かに横たわっている。


「風属性は、力で動かすのではありません。」


「空気の流れを感じ、その流れに魔力を重ねるように意識してください。」


 私は葉っぱをじっと見つめた。


 見えない風を想像する。


 頬を優しくなでる風。


 木々を揺らす風。


 空を自由に駆ける風。


 胸の奥から魔力をゆっくりと枝へ流し、静かに唱える。


「──《ウィンド》」


 ふわっ。


 柔らかな風が生まれ、葉っぱがゆっくりと宙へ浮かび上がる。


「わぁ……!」


 私は思わず声を上げた。


 葉っぱはくるりと一回転すると、ゆっくり地面へ戻っていく。


 リリア先生は満足そうに頷いた。


「今の感覚です。」


「風を押すのではなく、風と一緒に動くことが大切なんですよ。」


 私は何度も頷いた。


 火とも、水とも違う。


 風には風だけの優しさがある。


「では、最後は土属性です。」


 先生は地面を指差した。


「土属性は、一番安定した属性です。」


「焦らず、大地へ語りかけるような気持ちで魔力を流してみましょう。」


 私はしゃがみ込み、枝の先を地面へ向ける。


 足の裏から伝わる大地の温もり。


 その力を感じながら、静かに魔力を流した。


「──《アース》」


 その瞬間。


 私の前の土が小さく盛り上がる。


 ほんの拳ほどの小さな土の塊。


 けれど、それは確かに魔法によって生み出されたものだった。


「できた……。」


 私は目を丸くする。


 リリア先生は穏やかに笑った。


「お見事です。」


「四つの属性、すべて成功しましたね。」


 私は驚きながら、自分の手を見つめる。


 火。


 水。


 風。


 土。


 今日だけで四つの魔法を使うことができた。


 もちろん、どれもまだ小さな魔法だ。


 それでも私にとっては、大きな一歩だった。


 リリア先生は優しく微笑みながら言う。


「シルヴィアさん。」


「あなたには確かに才能があります。」


「ですが、その才能を本当の力に変えるのは、これからの努力です。」


 私は力強く頷いた。


「はい!」


 その返事を聞いた家族全員が、嬉しそうに笑っていた。


リリア先生は満足そうに頷くと、一本の枝を地面へ置いた。


「今日は最後に、一つだけ覚えて帰ってほしいことがあります。」


 私は姿勢を正した。


「はい!」


「シルヴィアさん。」


「火、水、風、土。」


「四つの属性を使えたからといって、四倍強い魔法使いになれるわけではありません。」


 私は首を傾げる。


「ちがうの?」


「ええ。」


「一つの属性を極めた魔法使いは、とても強いです。」


「そして複数の属性を扱える魔法使いには、その人にしかできない戦い方があります。」


 先生は地面に四つの丸を描いた。


「大切なのは、それぞれを中途半端に覚えることではありません。」


「一つひとつを丁寧に学び、自分のものにしていくことです。」


 私は真剣な表情で頷いた。


「わかりました。」


 先生は嬉しそうに微笑む。


「素直に学べることも、才能の一つですよ。」


 その言葉に、私は少し照れくさくなった。


 すると、お父さんが庭の端から声を掛ける。


「シルヴィア。」


「今日は頑張ったご褒美があるぞ。」


「えっ?」


 私は嬉しそうに駆け寄る。


 お父さんが手に持っていたのは、小さな木箱だった。


「開けてごらん。」


 恐る恐る蓋を開ける。


 中には、小さな木で作られた一本の杖が入っていた。


 先端には白い小さな魔石が埋め込まれ、持ち手は子どもの手に合うように細く作られている。


「わぁ……。」


 思わず息をのむ。


「これ……。」


 お父さんは優しく笑った。


「シルヴィアのために作ってもらったんだ。」


「まだ見習い用だけど、今日の頑張りを見て渡そうと決めていた。」


 私はそっと杖を両手で持つ。


 不思議と手に馴染み、少しだけ温かく感じた。


 リリア先生もその杖を見て微笑む。


「初めての杖ですね。」


「これからは、その杖と一緒にたくさんのことを学んでいきましょう。」


 私は杖を胸に抱きしめ、大きく頷いた。


「はい!」


 魔法を学び始めた日。


 初めて四つの属性に触れた日。


 そして、自分だけの杖を手にした日。


 この日はきっと、私にとって忘れられない一日になる。


 夕日に照らされた小さな杖は、まるで未来を照らす希望の光のように、静かに輝いていた。

第十五話『最初の一歩』を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。


今回は、シルヴィアが四つの属性魔法を初めて体験し、自分だけの杖を手にする回となりました。


小さな炎、一粒の水、優しい風、そして大地の力。


どれもまだ未熟ですが、シルヴィアにとっては大きな成長の一歩です。


また、お父さんから贈られた見習い用の杖は、これから長い物語を共に歩む大切な相棒になります。


次回からは、魔法の基礎だけではなく、少しずつ実践的な訓練や新たな課題も始まっていく予定です。


シルヴィアがどんな魔法使いへ成長していくのか、これからも温かく見守っていただけると嬉しいです。


ブックマークや評価、ご感想は創作の大きな励みになっています。


ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。


――藤田慎二

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ