第68話・魔王様、一網打尽にする
これからも、楽しんで書いて行こうと考えています。
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ブライトは魔族の土地にホド近いが、大戦以来は魔物による災害なども無く、諸国の中でも比較的、平和な部類に入る街として挙げられている。
先述の通り、街中には市民のほかに旅人や商人などが行き交っており、大いに街を賑わしていた。
しかし光あるところに闇あり。
誘拐事件や盗難など、多くの犯罪も横行している。
そして、街にある一つの小さな銀行に、3人組の強盗が押し入った。
被害は定かでないが、金庫が空にされてしまった事を鑑みても、天文学的数字になるのは言うまでもない。
・・・が一つ、彼らには誤算があった。
それは当時、警備員として、魔王が銀行を守衛をしていたことである。
彼らはその事に、まだ気付いていない・・・。
「どっちに行きおった!」
不覚にも守衛中に眠り、強盗の侵入を許してしまった彼女。
ここで汚名を返上しなければ、魔族全体の沽券にも関わる。
あと責任取らされて辞めさせられたら、財政的にも。
もぅいろんな意味で、魔王は必死になっていた。
「ホウ、こっちへ行ったか。」
魔王は持ち前のチート能力を如何なく発揮し、犯人探しを敢行する。
銀行に残っていた魔力を辿れば、犯人の元へ行き着くことも容易だ。
程なくして彼女は、街の路地裏にある数軒の家々が立ち並ぶ閑静な住宅街へと辿り着いた。
ここで辿っていた魔力の気配が、途切れていた。
その内の一軒の建物へ、魔王は躊躇う様子も無く足を向ける。
パキン・・!
「く・・・!」
ドアノブに手を伸ばした瞬間、まるで浸入を拒むように扉が緑色に発光し、彼女の手を焦がした。
どうやら建物全体に幻惑魔法のほかに、一種の障壁魔法が張られている様子。
開ける呪文を唱えるか、解除の陣でも敷かない限りは、突破は不可能である。
バギン!!
「フ・・・脆弱な結界だ。 邪魔をするぞ!」
・・・というのは、一般的な話。
理論的には、魔法陣に対して、許容限界以上の魔力を流し込めば、風船が割れるかのごとく陣は破壊されてしまう。
高位魔法の転移が使える術者の手に掛かれば、そんな事は朝飯前であった。
張られていた結界を吹き飛ばした魔王は、一切の躊躇なく、建物の奥のほうへと進んでいく。
「クックック、臭うぞ愚者の香りが!」
中からは銀行で会ったヤツの気配がビンビンに感じられた。
てっきり1人かと思い込んでいたが、気配は数人分なので、仲間が居るのだろう。
魔王は突き当たった部屋に付くなり、大きな声を張り上げた。
「くぉら貴様らあああああああ、覚悟は出来ているのだろうなあああああああ!??」
「「「!?」」」
逃げられぬよう、目一杯に怒気をはらませて入室する警備魔王。
これだけでもボギー無勢なら、足がすくんで動けなくなる。
するとそこには、驚愕の眼差しを向けてくる人間達の姿と・・・
檻に入れられた人々の姿が、目に飛び込んできた。
「ん・・?」
「お、お前どうしてここが分かった!?」
魔王が首を傾げる間もなく、1人が驚愕に顔をゆがめる。
それは銀行で魔王と同様に警備の仕事についていた、あの男性だった。
パッと見、魔物らしい特徴は併せ持っておらず、魔王の疑問は更に深くなるばかりである。
「なァお前、ボギーでは無かったのか?」
「俺は正真正銘、人間だ!」
「バカ、律儀に答えてる場合か! すぐに警備兵が来るぞ!!」
彼らはまるで波が引くかの如く、大急ぎで身の回りの荷物を整え始める。
どうやら見知った女が単身で現れたため、通報されたと勘違いしたようだ。
まさか、女が1人で乗り込むなんて考えない。
妙に手慣れた様子で、彼らは身支度を整えてると、奥にあるもう1つの出口の方へと向かう。
「はっ、コラ待て!」
見ている場合ではない。
警棒を片手に駆け出す魔王だったが、あと一歩の所で見えない壁のようなモノに、行く手を阻まれる。
時間稼ぎのため、障壁魔法を展開したようだ。
「くっ・・・、小癪な!」
「この隙に逃げろ!」
彼らはその間にも、出口の方へ向かうのが見えた。
今度のは先ほどの陣と違い、魔力を流しても破れない。
「なんの、これしき~~~!!」
魔法で破れぬならと、実力行使に打って出る。
するとパアァン!という弾けるような音と共に、魔法は術式ごと吹き飛ばされた。
刹那、彼女が張った障壁により、彼らの進路に障壁が展開し、その進路をふさぐ。
その間に魔王は、開ていた距離をあっという間に詰めた。
「ひい!」
「私の居る時間に来たのが、運の尽きだったな。」
手をワキワキさせ、この浮浪者たちに裁きの鉄槌を与えんとする魔王。
さて、どうしてくれようか?
一時とはいえ出し抜かれ、魔王としてのプライドは(元々無いが)ズタズタである。
いたずらっ子には、相応の罰を与えねばならない。
城に居た頃、ワンパク盛りで城を破壊していた魔族の子供を躾けていた魔王に、不可能は無い!
「お、俺たちをどうする気だ!?」
「殺しはしない・・・せいぜい地獄で詫びるが良い・・・!」
悪魔のような笑みを浮かべて見せ、彼らが動けないように束縛の魔法を掛ける。
魔王を前にした彼らの存在はまさに、風前の灯のようであった。
ブライトの夜が明けるには、まだ長い時間が掛かりそうである・・。
イタズラには躾が必要である。
魔王はイタズラには、寛容ではない。
次回
第69話「魔王様、ちょっと名を上げるその1」をお楽しみに。
※上記はあくまで予定ですので、急遽変更となる場合があります。
あらかじめご了承下さい。




