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第59話・魔王様、魔族と会う

これからも、楽しんで書いていこうと考えています。

感想や気になる点などがありましたら、遠慮なくお寄せ下さい。


ブライトという街は、かなり大きな街である。

魔王が出稼ぎに来てから数ヶ月がたつが、その全容の把握には未だ、至っていない。


そんな中で知り合いのエルフから「街に魔族が居る」旨を聞かされた彼女。

サキュバスの無断出店などの前歴もあるし、他に魔族が居ると言われてもどこか、不思議に思えないのが、残念なところ。

キケンだと魔王時代、同胞たちには人間の街には近づくなと言い含めていたはずだが・・・

もし居るなら、とにもかくにも会ってみたいところだった。


「仕事を抜けたい?」


「すまない、ずっと探していた従兄弟いとこを見かけたという話を聞いて。」


この際、ウソは方便。

店主に事情を話すと、それほど忙しくないので夕方までなら良いとの許可が下りた。

まだ時間は十分にある。

魔王は脱兎の如く勢いで店を飛び出すと、目撃情報をもとにしてブライトの街を疾走した。


「くそ、一体だれだ。 ぜひ話を聞かせろ!」


どんな魔族が、どこにどうして生きているのか。

心配というより、むしろ興味があった。

もし良ければ、ご教授願いたいくらいである。

目撃情報は街の西側・・前の魔王様の職場近くだったとの事で、特に迷うようなことも無く辿り付く事ができた。

おそらく相手も仕事をしているのだろう、と見当をつけた彼女は、付近の商店を片っ端から調べてみることにしたのだが・・・・


「おぉおー、まお・・いやエティシア様ではないですか!」


「は、なぜ貴様がここに居る!?」


聞き覚えのある声がしたので振り返ると、そこには土作業の似合いそうな男の姿があった。

彼は魔王軍四天王ベルナンデス、その豪腕は山をも崩すと言われるとか言わないとか・・。

着古して汚れたシャツを着た今の姿からは、とても想像はつかないだろう。

目撃情報があった魔族も、彼で間違いあるまい。

再会を喜ぶ彼をよそに、魔王は落胆を隠しきれなかった。


「城へ帰れと命令したはずだ、どういうつもりだ!?」


「これは異な事を魔王陛下、我ら四天王はいわば腹心。 付かず離れず傍らにおらずして、なんとします! それより会えて良かった、実は街を3週したのですが見つけられず困っておりましたところ、たまたま似た女性を見つけまして、もしやと思ったのですが・・」


「・・・。」


四天王とか言ってはいるが、今は病気とかが原因で生き残りはベルナンデスを含めて2人だけ。

本当は補充せねばならないのだが、余計な金を掛けているゆとりは無かった。

もう1人のエグラーには城の留守を命じているから、自由なのは彼だけになる。

なまじ力だけはあるので、ボロボロの魔王城の力仕事担当に据えようと思っていただけに、魔王は落胆を隠せなかった。


「まったく貴様と言うヤツは・・大体どうやって街に入ったのだ。」


彼には聞きたいことがたくさんあったが、中でもコレは謎である。

考えてみれば前回も、どのようにして街に入ったのやら。

恐いが、聞かずにはおれなかった。

そんな魔王の葛藤など知る由も無く、ベルナンデスは誇ったかのように胸を張って見せる。


「なに、大した事はございませぬ。 あのような壁は我が腕で簡単に崩してしまいました。」


「何だと!」


天性のバカかコイツは、と魔王は戦慄した。

壁に穴など開けたら、すぐにでも街の警備兵などに気付かれる。

そこから街に魔族が居るなどとバレでもしたら、どうするのか。


「大バカ者、門があるだろう! このような所で駄弁だべってないでさっさと壁を戻してこんか!!」


「何を慌てておいでです、崩した壁など魔法があればスグに直しました。 あのような土壁、わざわざ門など通る必要もありません。」


「・・・。」


ごもっとも。

ブライトを囲う壁は魔法付与なども無く、石が積まれただけの簡素なモノ。

ゆえに魔王も城へ行く際、障害なく転移魔法が行使できるのだ。

思えば最初に街を訪れたときも、わざわざ門から入らず彼同様、後で塞げばいいのだから壁など穴を開ければよい話。

バカ正直と言うか、無駄に慎重な自分の性格が、魔王は呪わしかった。


「そうか、直しているなら良い。 その・・・ちゃんと、考えていたのだな。」


「私は四天王です。 これ位できねば、務まりませぬ!」


悪気は無いのだろう。

しかしベルナンデスの一言一言が、的確に魔王の小さな胸に突き刺さった。

魔王だけど私、日々生きるのが精一杯で、今の今まで及びもつか無かんかったよ。

鬱屈うつくつとした様子を見せる魔王だったが、彼の背中を見て、そんな気持ちはどこかへ吹き飛んでしまった。


「ん、背中に誰ぞ背負っているのか?」


「おお、忘れておりました。 ご覧ください魔王様、我が妻です。」


ベルナンデスの背中を覗き込むと、そこには1人の女魔族が背負われていた。

彼女にも魔王は、見覚えがあった。

何日か前に勘違いをしたベルナンデスが、魔王の居所を聞くために連れ出した女性である。

名を確かフレアといった。

なるほど、移動の間に疲れて眠り込んでしまったのだろうとおおよその見当はついた。


「そうか、2人で来たのだな。」


まったく仲のよろしいことで。

この馬鹿は情にアツイ奴だし、魔王城に置いてくるなどと言う選択肢はおよそ、無かったのだろう事はすぐに分かった。

いや、その前に気になる単語を聞いた。


「いま『妻』と言ったか?」


「魔王様。 こやつはひ弱ですが、中々に気丈で良い女なのです。 我が身も省みずに魔王様のお力になりたいなどと申しましてな。 いやはや美しさは魔王様より数段は落ちまするが、魔王様をお助けしたいのは私も同じ。」


「モノスゴイこじつけだな。」


四天王ベルナンデスの超理論は、魔王には理解しがたかった。

会って間もない者と契りの契約を交わすとか、魔王的にはありえない事だ。

しかし契約は、双方にその気持ちが無ければ、成立はしない。

ようするに、フレアもそういう事なのだろう。

うーん、不思議。

だが今は、まず部下の幸せを素直に喜んでやりたい気分だ。


「そうか、やっと身を固めたか。 うむ、めでたいな。」


「魔王陛下おん自らの祝辞の言葉、身に余る光栄に存じます。」


臣下の礼へとり、感謝の意を表する四天王のベルナンデス。

そういえばまだ、なぜ彼がこの街に居るのかを聞いていなかった。


「ところで私は城へ居ろと言ったはず、なのに何故お前はここに居るのだ?」


「私も妻も魔王様のお力になりたいのです。 幸いにも城の魔族たちは力を取り戻しつつありますし、となれば単身で敵地におわす魔王様へ尽くすが本望と言うもの!」


「・・・。」


体全体を使って語るベルナンデスのまなこは、いつにも増してキラキラと輝いていた。

ダメだと言ったところで、素直に帰りはすまい。

魔王のノド元まで出かかる多くの言葉は、口から出てくることは無かった。


「帰る気は、無いのだな?」


「ここまで来て帰っては、四天王の名がすたります!」


最後に念押しした魔王は辟易しながら、まずベルナンデスたちの身元引き受け先を考えた。

このまま街に野放しには出来ないし、魔王にも『生活』がある。

たった一人の魔族にかまけているヒマと時間は無い。

陽も傾き始めているし、そろそろ帰らなければ再び失職クビのキケンも!


「しようの無いやつだ、ともかく私に付いて来い。」


「ははっ小姓ベルナンデス、どこまでも付いて参ります!」


ベルナンデスはフレアを背負ったまま、魔王の後を付いて行く。

さしあたって魔王の頭に思い浮かぶ、なんとか頼れそうな人物は、『アイツ』しか思い浮かばなかった。



魔王は行く、魔族の移民者第一号を引き連れ、『あの場所』へ・・・

そして、店主からは衝撃の言葉を浴びせられることになる。

次回

第60話「魔王様、現実を知る」をお楽しみに。


※上記はあくまで予定ですので、急遽変更となる場合があります。

あらかじめご了承下さい。


1週間後は所用により、投稿は月曜日の夕方以降となります。

ご了承下さい。

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