第45話・魔王様、お呼ばれする
これからも、楽しんで書いていこうと考えています。
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商会でひと悶着あった、その翌日。
魔王様はいつものように出社すると、『受付部』へと歩を進めた。
他の職員から、まるで刺す様な視線を浴びる中で唯一、上司のエリアルさんだけは、いつも通りの柔らかい笑みを、こちらへ寄越してくれる。
「おはようございます、今日もよろしくお願いいたします。」
「やぁ来てくれたね、来ないかもってヒヤヒヤしていたよ。 ひとまずは安心かな?」
昨日魔王様は、商会の受付窓口にて、客に対して粗暴な態度をとってしまった。
どちらが先に仕掛けたかはもはや問題ではなく、『商会』としての問題が、そこにはあった。
エリアルさんの話によると、昨日の一件は既に商会内で大きく噂が立ち、知らぬ者はいないらしい。
人の口には戸が立てられぬと言うか・・・・・・・
商会でも多くの人が集まる『受付窓口』という場所で騒動を起こしてしまったのだから、話が通常より早く回ってしまうのは、致し方ないことかもしれない。
そこに関しては、彼女も少なからず、責任を感じていた。
「昨日は迷惑をかけました、ごめんなさい。」
「その事でさ、話したい事があるんだ。 悪いんだけど、これから一緒に来てくれる?」
今までやっていたと思われる仕事の手を途中で止め、魔王様を手招きする上司のエリアル。
魔王様そこで、窓口の方を指差しながら、すかさず疑問を口にした。
「あの、今日の研修は?」
「今日はいいんだ。 君はこっち。」
首を横に振り、再度に渡って魔王様を手招きする彼女。
歩く道中、影が付きまとうように、そこかしこからヒソヒソと声が聞こえてきた。
内容までは聞き取れなかったが、魔王様の方に一様に視線が集まっていることから、何となくでも想像がついた。
『ひけ目』のようなモノを感じ、足早に上司の後ろを付いて行く。
長い廊下を右へ左へと、まるで迷路の中を進むような錯覚に陥る。
ずっと歩かされるのでは無いかと思ってしまったが、そういうことは無く、突き当たった右側の部屋の戸をノックし、エリアルが入っていった。
「シアちゃんも入ってきて、まだ誰も来ていないみたい。」
恐る恐るといった風体で、言われるがまま部屋の中へと入っていく魔王様。
部屋の中は意外なほどにこじんまりとしており、あるのは小さな机と椅子だけ。
窓も小さく、ずいぶんと殺風景に見えてしまうが、普段は別の部署が、休憩室代わりに使っている部屋のようなので、それで十分と言える。
キョロキョロと周囲を伺う彼女をよそに、入り口のドアを閉めるエリアル。
「あの・・・これから何が始まるんですか?」
出社と同時にこんな場所へ連れてこられれば、否が応でも不安が募ると言うもの。
魔王様はこらえきれなくなったように、疑問を呈した。
それを聞き、当のエリアルは真剣な面持ちで、彼女へ席に掛けるよう促した。
共に向かうようにして備え付けられた席に着くと、エリアルの方から話を切り出し始める。
「実はね、昨日の一件。 アレがマズかったんだ。」
「そうですか・・・」
魔王様自身、聞かなくとも何となく、それは分かっていた。
これだけ噂が立っているのだから、何も無いほうがおかしい。
だがそれを改めて指摘されると、耳に痛かった。
「昨日は迷惑を掛けてしまって、ごめんなさい。」
「私には謝らなくていい。 後で話があると思うけど、実はその相手ってのがさ・・・」
エリアルがここまで話を切り出したところで、部屋のドアがノックされた。
上司のエリアルに倣って立ち上がり、出迎えると、入室してきたのは『在庫管理部』の上司が入ってきた。
鋭い眼光を、さらに強くさせ、こちらへ視線を送ってくる。
エリアルが何を話そうとしたのかは分からなかったが、少なくとも自分が思っている以上に、事は大きくなっている。
それだけは、肌身で感じずには居られなかった。
その後も数人の人間が続々と集まり、もともと狭かった部屋は、すぐに満杯となった。
メンバーは、上司が2人に知らない男性が1人、それに就職の際に世話になった、ザイルとか言う男性(人事部)の計4人。
それぞれの人々の表情は・・・特に知らない顔ぶれの男性陣の表情は、かなり硬い。
挨拶もそこそこに、彼らの『話』というものが始まる。
言わずもがな、その内容は昨日の騒動の件である。
「ライザックさん。 まずは皆さんに、言うことはありませんか?」
眼光鋭く、魔王様へ睨むような視線を送る『在庫管理部』の上司殿。
すっかり萎縮してしまった魔王様は、床に土下座して謝った。
「私のためにこのような事になってしまい、かたじけなく思います。 ごめんなさい。」
「「・・・・。」」
言い回しと姿勢が、かなり間違・・・・・
いや何にせよ、魔王様の誠意だけは、彼らに伝わった。
誰も彼女を咎めるような事は無く、そのまま話は進む。
「ライザック君と言ったね、単刀直入に聞くが、今回の一件は故意ではないね?」
「え、故意!?」
魔王様の目の前に座る男性の、突然のセリフに言葉を失う魔王様。
当然、答えはノーだ。
この機会にハッキリ言っておくが、魔王様は揉め事と言うものが、大嫌いである。
それが人間相手なら、なおさらだ。
「違います、私はそんな事しません!!」
キッパリと彼の目を見て、そう言ってのける魔王様。
魔族の代表として、少なくとも身の潔白だけは晴らしたかった。
そうでなければ、死んでも死にきれん!
彼もまた、魔王様の目をしかと見つめる。
その間、沈黙が部屋の中を支配した。
しばらくもすると彼はフッと目を細め、視線を魔王様から隣のザイルへと向けた。
「ではザイル君、後の対応は君に任す。」
「お忙しいところ、お時間をとらせてしまい、申し訳ございませんでした。」
それだけ言い残し、名も知らぬまま彼は、退室していった。
まだ何もして無いが、これで終わりなのだろうか?
他の3人同様に礼をしながら、魔王様はそんな事を思った。
「ライザックさん久しぶりだね。 そう長くはならないと思うから、もう少しガマンしてね?」
「は、はい・・!」
まさか、心を読まれた!?
なお一層、在庫部の上司がその表情を険しくさせ、こちらを睨みつける。
やはり人間、恐ろしい生き物である。
皆が再び席に着き、改めて話が始まった。
「まずはライザックさん、今回の一件は、あなたは悪くない事は、分かっているんですよ。」
「え!?」
ザイルからの開口一番の意外な言葉に、魔王様は目を丸くした。
話の展開的に、てっきり注意を受けるものとばかり思っていたのだから、無理も無い。
先述の通り、昨日の一件は多くの職員などが目撃しており、その一部始終を目にしていた者も少なくは無い。
対応がまずかったとはいえ、それも水掛け論の結果起こった、不幸な出来事。
もとより魔王様の居た窓口は閉まっていたので、彼女に落ち度は無かった。
先ほど退室していった男性が、魔王様に『この一件は故意ではないか?』と聞いたのも、確信を持つための手段に過ぎないのだ。
「監督責任がある私の落ち度でもあるしね、シアちゃんが気に病む必要は無いよ?」
エリアルは変わらぬ笑顔を振りまき、魔王様を庇うような言葉を掛けた。
ザイルも彼女には責任が無いと考えているのか、柔らかい微笑を浮かべ、静かに席についていた。
この上で、ここまで優しさを掛けてくれる存在に、魔王は心の底から感謝した。
しかし一人、直属上司のレーガンさん(在庫管理部)だけは、厳しい視線を、彼女へ送り続ける。
「ライザックさん、今回の一件は私たちで何とかします。 ですが窓口というのはいわば、商会の顔です。 そこで騒動を起こしたと言う事だけは、反省なさって下さいね?」
「は、はい・・・」
ホッとしたも束の間、レーガンは魔王に対し、釘を刺してくる。
それを遠目から、苦笑しながら傍観するエリアルたち。
オーガのような形相のそれは、見る者を震撼させることだろう。
やはり人間コワい。
魔王様はそう、再認識するのだった・・・・・・
都合により、話を2分割しました。
ご了承下さい。




