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第28話・魔王様、遅刻する

更新が遅れて、申し訳ございません。

3月以降は、おおむね週一の更新になります。


翌日の昼ごろ。

昨日同様に魔王様は、勤務先のブレアンド商会へと出社してきた。

商会の裏口から入って後、広い建物内を進んでいく。


「こんにちは。」


「ああ。 こんにちは、なのだ。」


すれ違う、多くの商会の職員達。

ここでは多くの人間など毎日、身を粉にして働いており、皆が皆、廊下をせわしなく動きまわっている。

たとえ顔見知りでなくとも、挨拶は欠かさない。

ちなみに気高に振舞っている方が、今期の新入社員である魔王様である。

建物内の通路の横には、軒を連ねるように多くの部署の看板が立てかけられている。

それらのうちの一つ、『在庫管理部』と書かれた看板を出しているのが、魔王様の職場だ。

その業務内容は、商品発注や出荷、ちょっとした会計など、多岐にわたっている。

詳しい説明は、追々。



「こんにちは諸君!」


「「「・・・・。」」」


シンと静まり返る、在庫管理部の面々。

皆、突如入り口に姿を現した魔王様に、驚愕に似た表情を向ける。

・・・挨拶の仕方を、間違えただろうか?


「もう、『こんばんは』の時間だったか?」


小首をかしげる魔王様。

その彼女へ向かって、直属の上司がツカツカと歩み寄ってくる。

なぜだろう、床が揺れていまいか?

上司殿の背後から、黒い炎が立ち上って見えるのだが・・・


「ライザァックさん? 今は何時ですかぁ??」


何を言われるかと思えば、時間を知りたかったのか。

であれば、そんなにスゴミをつけずとも、良かろうに。

少し、ビビってしまったではないか。


「えと・・・そこに時計があるぞ?」


「今は、何時、ですか!?」


う・・・こっ怖い・・・

口調が妙に荒々しいし、彼女の目がギラリと、こちらをまっすぐ見据えている。

何の勘繰りもせず、ここは素直に従っておいたほうが良さそうだ。


「あー、えっと・・1刻半といった所かの?」


この部署では昼休憩が、おおよそ12刻から1刻までの間にとられる。

感覚的にいえば、今は昼過ぎだという認識で、差し支えない。

上司殿は何を、そんなにカリカリしているのだろうか?


「あなたはこの時刻を見て、何も感じないのですか? 私に何か言うことは!?」


「あー、えっと・・・ちょっと遅刻してしまった?」


魔王様のこの返答に、とうとう上司殿の堪忍袋の尾が、ブチンと切れる。

これまで状況の観察を行っていた、周りの者たちも、大急ぎで関係ないフリを始める。

カミナリが落ちたのは、それからすぐ後だった。


「当商会の出勤時刻は、朝の8刻目です! どぉこが『ちょっとの遅刻』ですかぁぁ!??」


「すすす、すみませぬ! ごめんなさい!!」


急に張り上げられた怒声に、涙目になる魔王様。

スゴイ剣幕だ。

世界が終るのではないかというぐらいに、恐ろしい声が響く。


「あなたは一社会人です、社会人としての自覚を持っていただかなくては、困ります!!」


ここへ来る時間は、定められていたのか・・・・

どうにも魔王城で自堕じだら・・もとい自由な生活を送っていた感覚が、抜け切らない。

今まではいても経ってもいられず、朝から来ていただけだったのだが。

などと言うと地獄ではすみそうもないので、黙っておく。


「今日はもう、どうしようもありません。 しかし明日からは、きちんと定時出社を心がけるように! いいですね!?」


「うむ・・。」


「『うむ』ではありません、『はい』です!!」


「はい・・・・?」


小首をかしげる魔王様。

するどく睨みつけるように、視線を向ける上司殿。

そうして2度目は、語尾をきつめにする。


「はい!」


「は、はい・・!!」


遅刻したばっかりに、よく分からない事まで怒られてしまった。

『うむ』という返事は、駄目なのだろうか?

クセなので、直すのには時間がかかりそうなのだが。


「ご注意差し上げたいのは、以上です。 それではあなたも、業務に入ってください。」


「うむ・・いぃや、はい。」


もう一度、上司殿に謝ってから、少し戻って横の水晶球に手をかざす。

我の手が触れると同時に、水晶は淡く光り輝く。

記録は、これで完了となる。

これは『タイムレコード』という代物で、我等の出勤退勤などを記録する魔道具。

この記録が、そのまま給与へと反映されるらしい。

なんとも便利なものだ。


「それではライザックさん、昨日の続きをしましょう。」


「任せよ、すべては抜かりなく覚えておる!」


教えられた事は、きちんと覚えている。

雑巾の使い方、ほうきの掃き方、モップの掛け方・・・

何でもドンと来いなのだ。

まずは、用具入れから道具一式を出す。


「・・・なんですか、それは?」


「掃除ではないのか?」


大きくため息をつく上司殿。

その心意気は誉めたいが、果たしてこれは、それで良いものか・・。

まず彼女には、この部署の業務を覚えてもらわねばならないのだ。


「本日は本来の業務を、お教えいたします。 その道具は、しまって下さい。」


「そうか。」


指示に従って掃除道具をしまい、自動魔道具の電源を入れる魔王様。

彼女のいいところは、指示にきちんと従うこと。

当たり前といえば当たり前なのだが、それが出来ない人間は、ワリと多いのだ。

先ほどのように常識に掛ける箇所は、多々あるが。


「本日は、当商会の告知資料を作っていただきます。 まずは、この青色のアイコンを選択して下さい。」


「これか・・・・? また新しい作業なのだな。」


「そうです。 新しい操作が多いので、よく聞いていてください。」


やっといつも通りの和やかな(?)雰囲気に戻ったことにより、張り詰めていた室内の空気が霧散する。

ヤレヤレと、腕を伸ばしたり肩をキコキコさせる面々。

魔王様にご執心の間、上司は彼女に付っきりになるので少しだが、羽が伸ばせるのだ。


伸ばしすぎると突然、横にいたりするので、そこは十分に気をつける。


上司に指導を受ける、新入社員。

そして新人教育に身を割く、かなり面倒見の良い上司。

さらにそれを温かく見守る、同じ部署内の同僚たち。


絵面的には、かなり平和な事この上ない光景だった。

しかし未だ、魔族との間に根ざすわだかかまりの存在は、とても大きい・・・・・



もう少ししたら、話が駆け足気味になるかもしれません。

かさねて、お詫び申し上げます。

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