第27話・魔王様、掃除を学ぶ
これからも、がんばっていきます。
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昼過ぎ。
ブレアンド商会は午後の業務に入り、昼休憩を行っていた者たちはそれぞれの部署へと戻っていった。
『在庫管理』の部署にも、今では全員が戻って来ており、既に業務を再開している。
毎度のごとく『回復魔法』で空腹を満たした魔王様も、休憩から戻り、自分の座席についた。
自動魔道具の電源の入れ方はバッチリだ。
あとの動かし方は・・・また上司殿に教えていただこう。
「ライザックさん、戻りましたね?」
「おお上司殿、午後もよろしく頼・・・」
挨拶もそこそこに、ズイッとホウキやタオルなどの道具を手渡してくる上司。
これらは掃除道具・・・という認識で良いだろうか?
疑問を投げかける前に、彼女は説明をはじめる。
「午後も、あなたには当部署の業務を、覚えていただきます。」
「えっと・・・これは掃除道具だろう?」
彼女が渡してきた、何の変哲も無い掃除道具。
有している能力はたぶん、ゴミを取り除くことだけだ。
これは一体、どういう事なのだろうか?
「他の部署はもとより、当部署内での仕事を円滑かつ、気持ちよく行っていくために、毎朝来たときには、皆で掃除を行うようになっています。 ライザックさんに置かれましても、どうぞご協力下さい。」
「そう・・・なのか?」
まあ、これも仕事だと言うなら良いが・・・
掃除など、魔法でパパッとやろうとはしないのだろうか?
主旨を考えるなら、その方がずっとキレイになる気がするのだが・・。
いや、これは仕事。
効率より、行為自体に重きを置いているのだろう。
うん。
自動魔道具は画面をつけたまま、しばらく放置されることになった。
「ではいいですか、手順については上から下へ。 片づけを終えるまでが、掃除の鉄則です。」
「?」
後片付けは分かるが、上から下へとは一体?
言葉の意味が分からず、首をひねる魔王様。
すると上司は、魔法で小さな水球を出して白タオルの上に、それを落とした。
水はじわりと、タオル全体を湿らせていく。
上司はそれをパンッと広げると、四つ折に畳んで見せた。
「これでまずは、机の上を拭きます。 拭き方は隅を拭いてから、真ん中を拭くようにします。」
「おお・・!」
自ら手本を示しながら、机の拭き方の説明をする彼女。
机のはじっこをなぞるように拭いた後、横方向に真ん中を拭いていくようだ。
これだと確かに、拭きもらしは無くなるな!
凄いぞ!!
感嘆しながら、魔王様は上司の掃除風景を見守る。
「この時に拭きもらさぬよう、机の上のモノは横にどけておきます。 では、やってみて下さい。 水球は言って下さればその都度、私が・・・」
「これで良いか・・・?」
「・・・・。」
手本で示されたとおりに、魔法で作り出した水球でタオルをぬらす。
水の心配は無いようで、上司の手が空を切った。
それに気づいた様子も無く、魔王様は机を拭きはじめる。
ビシャビシャに濡れたタオルで。
タオルから垂れた雫が、床をぬらす。
「ままま、待ってくださいライザックさん! 何をする気ですか!?」
「何をって無論、掃除を・・・」
「そのタオルで拭いては、机が水溜りになってしまいますでしょう!??」
机を拭こうとしていたその手を、上司によって阻まれる。
これでは何か、まずかったろうか?
示された手本の通りに、やっているつもりなのだが。
「タオルは少し、湿らせる程度で良いのです。 机の上には、濡れると困る重要な書類が詰まれているので、気をつけてください・・・。」
「なんじゃ、そうだったのか!?」
タオルはただ濡らせば良い、というわけではなかったらしい。
ありがとう、もう少しで取り返しのつかない失敗をするところであった。
水で濡れた程度でダメになるとは、書類と言うのは、どうも脆いもののようだ。
下手に触れば、砂のように崩れてしまうのかもしれない。
取り扱いには、細心の注意を払うとしよう。
「拭き方は、これで良いか?」
「そうです、ただ少しムラが多いので、間隔を少し狭めて拭いて下さい。」
上司からの手ほどきを受けながら、魔王様は自分の机を拭き終えた。
たったこれだけの事だが、掛かった時間は地球換算で5分強。
これを長く感じるか短く感じるかは、皆さんの感覚次第です。
「これで終わりか?」
「まだ下に手をつけておりません。」
とりあえず、机は拭き終わった。
次にするのは、床掃除のよう。
ホウキとチリトリを手に、上司に教えられるまま、掃いていく。
今日のところは自分の机の周辺だけでよいとの事で、すぐに終った。
これで掃除も終わり・・・
「次はコレです。」
「なに、まだ続くのか!??」
続けざまに渡されたのは、床掃除用の掃除道具。
見た目はホウキと、なんら変わりない。
先端がタオルのように濡れている、この道具は一体?
「これはモップです。 これで汚れた床を磨きます。」
なるほど、ホウキとは似て非なる道具らしい。
認識的には、床を拭くタオルの代わりか?
これは便利だ。
「これも、ホウキのように掃けばよいのか?」
「違います。 まずは手本を見せるので、よく見ていて下さい。」
ホウキとは違い、滑らかにモップを掛けていく彼女。
隅を拭いた後、中を拭いているように見受けられる。
なるほど、使い方はタオルと同じらしい。
我も早速、手本に倣って床を拭く。
大丈夫、今度は湿らすだけ。
「これで良いかの?」
「大体そうです。 しかし力配分が違いますね、モップの柄に力を掛ける必要はありません。 腰に力を入れて、このように・・・」
「うぅむ・・・こ、こうか?」
掃除って案外と、難しい・・・
そんな事を思う、魔王様であった。
魔王城でも、応用できそうです。




