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第26話・魔王様、仕事で苦悶する

更新頻度が低くなってしまい、申し訳ございません。

なるべく、出来る限り良い作品に仕上げようとしているの結果なのです。

努力が実っているかは、分かりません・・・

長い長い、研修期間を経て。(※魔王様基準)


ブレアンド商会の新入社員たちは、各々に辞令を渡された。

ある者は、営業に。

またある者は、商会受付に配属されていった。

そして我らが魔王様はというと・・・・


「研修も済んだようですし、早速あなたには業務に取り掛かっていただきます。」


「う、うむ・・・!」


彼女に渡された辞令にあった配属先は『在庫管理』。

その名の通り、商会の取り扱う物品の管理を行う仕事のことだ。

簡単に言うと彼女に任されたのは、商会の裏方作業。

魔王様ことシアは対人関係がニガテなので、ある意味、配属先としては妥当な判断と言えるだろう。

ちなみにだが、今回この部門に配属された新人は、彼女一人である。

セリアさんは、受付に行った。


「それではまず、こちらをお願いいたします。 見本にあるとおりに、入力をお願いいたします。」


「りょ。了解なのじゃ!」


パラリと、机の上に数枚の紙の束が置かれる。

『見本』と言うだけあって、完成例の画像と簡単な説明以外は、何も書かれていないよう。

指示を出すと、『ぶちょー』は、自分の持ち場へと戻っていった。

では彼女の業務を、ちょっと覗いてみよう。


「む・・・魔道具とはどう使えば良いのじゃったかのぅ?」


業務観察、終了。

まず第一に、彼女は目の前の魔道具の電源の入れ方すら、よく覚えていない。

研修中に使い方は教わったのだが、手順がフクザツで、覚えていることは、あまりにも少ない。

どうしよう。


机の上にひじを立て、頭を抱える彼女。

その姿を見つけた上司は、再びツカツカと魔王様の横へやって来る。


「ライザックさん、遊んでいる時間はありませんよ!? 仕事はいくらでもあるのですから!」


「お、おお・・、すまぬ。」


そうそう、今の我は『ライザック』という名であったな・・。

危うく、返事をし損ねるところであった。

怖い表情をしながらも、魔道具の電源を入れてくれる上司。

それと共に透明だった水晶球は淡く光り、しばらくすると画面が表示された。

これには見覚えがある。

確かこの後、この水晶に魔力を流し込んで・・・どう操作するのだったか?


「ええと・・・・・。」


「このアイコンです。 これを選択すると表計算ソフトが起動され、画面が表示されます。 

後は資料にあるとおりに、数字を打ち込めばよいのです。」


「こ・・・こうか??」


上司に言われたとおり、水晶に魔力を流し込む魔王様。

この魔道具は、地球で言うところのパソコンに近い代物だ。

いや、操作の方法は画面タッチ式であることを考えると、どちらかと言えばスマホが酷似しているだろうか?

この世界でも、技術革新は進んでいるらしい。

魔王様にしてみれば、オーバーテクノロジーだ。


「・・・・指示通り行かぬが?」


少し数字を打ち込んだところで、彼女の作業は再びストップした。

欄を選択しても、コイツは何も反応しない。

指示によれば、ここでは計算がされるはずなのだが。


「ふぅ・・良いですか、この商品の欄とこっちの商品の欄を選択したまま、ここのキーを押せば、魔道具が勝手に計算をやってくれます。 ですからそれを、繰り返せばいいのです。」


「むむ? なぜそうなる!?」


上司が手本を示してくれた操作に、疑問符を浮かべる魔王様。

彼女たちが現在行っているのは、地球で言うところのエクセルの表計算に近い。

『なぜそうなる』と聞かれても、『そういうものだ』としか、答えようがない。

この商会では、あらゆる場面でこれが活用されており、今では業務に必要不可欠なモノとなっている。


「画面に表示されている『リボン』の中から表作りを選択して、指を横方向にスライドさせて・・・」


「??????」


頭に大量の疑問符を浮かべる魔王様。

無理もない。

彼女は他の魔族と共に400年以上引きこもっていた関係で、世間にはすべからくうといのだ。

『自動魔道具』なぞ、最近初めてその存在を知ったのだから。

・・・などという事情を、商会側は知る由もなかった。


「ライザックさん、あなたは自動魔道具を、使ったことはないのですか??」


「研修でならば・・・」


上司から、大きなため息が漏れる。

彼女には文字通り、『イチから説明』をしなければならないようだ。

どうにも、この部署には大変な人材を、送り込まれたよう。

研修では『魔道具は一般的に、誰でも使えるもの』として、新人教育をする。

そもそも使い方が分からなければ、研修の内容など分かるはずもないのだ。


「・・・ではもう一度、一から説明します。 画面のリボンにあるアイコンを押すと計算がされるように設定されるので、欄に数字を入れて・・・」


「うむむ・・・!」


頭を悩ませながら、自動魔道具の水晶画面に向き合う。

うなりながら魔王様は、この魔道具に力を注ぐのだった・・・



◇◇◇



「ふはああぁあぁぁ~~~~・・・・。」


3回の鐘が鳴り、街に昼が訪れる。

この商会では受付担当などの部署を除いて『昼休憩』という制度があり、魔王様も休ませてもらっていた。

正直、すごく疲れた。

今は商会の中に設けられているフリースペースの一角に陣取り、机を枕に上半身を横たえる。

彼女は午前の業務で、今にも頭がパンクしそうになっていた。

腹が減ったが、それを満たす事は出来ない。

目立つので、回復魔法を使うのも躊躇ちゅうちょされる。

・・・ここは寝るか。


「ぐう・・・・」


「あの、シアさん・・・ですよね??」


「・・・ん?」


夢の中へ落ちる直前、誰かから声を掛けられた。

薄れ行く意識で、誰なのかを考える。

あーそうか、『ぶちょー』が何かを、言いにきたのかもしれない。

午後から頑張るので、今は休ませてはくれまいか?


「シアさん、もしかして体調が悪いんですか!? お腹ですか、お腹が痛いんですか!??」


「わわっ、揺するでない! ビックリするではないか!!」


危うく、机から転げてしまうところだった。

だがおかげで、意識は覚醒した。


「な、なんじゃセリアではないか。 おどかすでない!!」


「ごめんなさい、体調は大丈夫ですか?」


ズイッと顔を近づけ、我の周りをグルグル回る。

頭は痛いが、どうも彼女の懸念はそれとは違う所にあるように見える。

どうやら彼女は、いらぬ誤解をしているようだ。


「セリアよ心配するでない、我はすこぶる健康じゃ。」


「そ、それなら良いのですが・・・何かあったら言って下さいよ!? 私に出来ることなら、力になりますから!!」


「ああ、恩に着る。」


セリアは、良い人間だ。

このような我の体調を心底、心配してくれているのだから。

彼女がもし、我が魔族であると知ったら、どういう顔をするのだろうな・・・


「でもどうしてまた、机に突っ伏していたのですか?」


「ああ、それは・・」


今はとりあえず、目の前の壁を切り抜けていこう。

魔王様はそう、自分に発破を掛けるのだった・・・



魔王様の『受難』は続きます・・・

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