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第24話・魔王様、初日に困る

更新が遅れてしまい、申し訳ございません。

どうにも進みが悪くなってしまって・・・

どうにか、したい所ではあるのですが。


ブレアンド商会の合格発表から、およそ1週間後。


彼女たちはブレアンド商会の社屋の中の一室に、集められている。

部屋はそこそこの広さがあり、机を並べたら40人は入れるのではなかろうか?

『正装で来るように』との指定があったが、人間世界の『正装』という物が分からなかったので、いつもの服装(黒くてゴツいドレス)で来た彼女。

ある意味『正装』に見えなくは無かったので、とがめられるような事は無かったよう。

・・・周りから浮きまくってはいるが。


今日付けで、こうしてシアを含めた総勢8名の新入社員は、はれて商会の一戦力として、採用の運びとなった。

が、経験者でもない限りまさか、新人が即戦力になど、なろうはずもない。

そこでこの商会では、『研修』という制度を採用している。

幾日か新入社員に業務を講釈し、その上で戦力になってもらうのだ。

こうする事で業務をより早く覚える事ができ、業務において社員の意欲向上に直結する。

ひいては商会の、サービス向上にもつながるのだ。

絶対になければならないことでは決して無いが、あった方が良い制度であるのは間違いないだろう。


「私は人事担当のザイルです。 これから数日間、皆さんに当紹介の業務の見学などの引率や指導を行わせていただきます。」


「「「よろしくお願いいたします。」」」


我の隣に居るセリア同様、赤い髪と目をもつ誠実そうな人間の男が、挨拶をしてくる。

我も周りに合わせて、彼へ挨拶を返す。

彼の自己紹介によると、『じんじたんとう』という役職は、我々のような新人の教育や職場内の異動の勧告、給料の管理などを行うらしい。

なるほど、信用のおける人物でないと、任せることが出来ぬ重要な仕事である事は、間違いないだろう。


「皆さんの前には、配布の資料と木箱が置いてあるはずです。 後ほど各々(おのおの)で、名前の表記に間違いが無いかをご確認下さい。 まずは配布品に欠品が無いか、順を追って読み上げますので、一緒に確認して下さい、まずは・・・」


「ん、お? ど、どれじゃ??」


業務手引き、業務上のきまりごと、会社の歴史、形態区分表、それに『自動魔道具の使い方入門』など・・・

似たような名称の『資料』が多く、どれがどれか分からなくなってしまう。

探索魔法で探すと、もっと時間がかかってしまうので、このような場では多用できないのだ。

魔法は万能だが、このように不便なことも多い。


「え~と・・・」


「シアさん、コレですよ。」


「おお、助かった。 この恩は一生涯忘れぬぞ!」


困っていたシアに救いの手を差し伸べてくれたのは、セリアさんだ。

おかげで目当てのモノを見つけ出すことが出来た。

魔王様の感謝の言葉に、『何をオーバーな』と苦笑を返す彼女。

知っての通り、シアこと魔王様の双肩そうけんには、魔族の生死がかかっている。

(と、彼女は思っている)

ここで蹴躓けつまづいては、文字通り目も当てられないこととなる。

『一生忘れない』というのは、オーバーでも何でも無い。


「はい、資料は問題ありませんね? では次に木箱を開けて、中のものを出して下さい。 それが皆さんの制服になります。 明日から商会に出勤の際はこちらを着用してお越し下さい。」


言われるがまま、木箱の中に入っている数着の服を取り出す。

桃色のタイトな、ノーマルタイプのスーツが4着。

ぶっちゃけ今、セリアさんが着ているモノの色だけが違うのが入っていた。

それぞれ4つの袋に1着ずつとじられており、『夏用』『冬用』で分かれている。

パッと見、両者に大きな違いは見受けられないが。


「それでは早速ではありますが、当商会の業務内容についてご説明させていただきます。 配布の『業務手引き』を参照下さい。」


「え~~と・・・」


むむむ、またどれか分からなくなった。

どうしてこうも、同じような文言もんごんのモノがたくさんあるのか・・・


「シアさん、これですよ。」


「おお、済まぬ。 この恩はこの魂が冥王の下へ行こうとも、忘れぬぞ!」


シアの仕事における受難は、まだ始まってすらいない・・・



◇◇◇



「うぬぬ・・・ここまで来てシア様の魔力がたどれぬとは・・・!!」


その頃、魔族の黒き森の中。

黒い燕尾服姿の初老の男性は、森の中を額に手をやりながら進んでいた。

魔王様に付き従っていた、魔族のエグラーであある。

目的は『出稼ぎに行かれた魔王様を探すこと』

所在が全くつかめないので、今の彼は森の中をアテも無くさまようばかりだ。

魔王城出立の前、魔族全員で魔力を結集し、魔王様の魔力をたどろうと努力した。


・・・が、確証たる痕跡こんせきはついに、見つけることはかなわなかった。

ようするに魔王様は、行方不明のままだった。

こうして人間世界にほど近い、魔の森の端まで来たにも関わらず・・だ。

もしかしたら、彼女は既に死んでいるのかも・・・

ここまで考えをめぐらせたところで、エグラーは大きくかぶりを振った。


「あ、ありえぬ! 魔王様が何の痕跡こんせきも残せず死ぬなど、あろうはずが無い!!」


魔王ことシアの内包魔力は、莫大だ。

もし倒されて体ごと消滅させられたとしても、何かしらの痕跡が、世界に残るはずなのだ。

それが全く無いとなると、やはりどこかで魔力を隠蔽いんぺいして生きているか。

・・・もしくはそれほど強大な相手によって、彼女の全てを消されてしまったか。

最悪の事態の方を、エグラーは予見する。


「シア様お待ち下さいませ。 このエグラー、無念の仇をとらせていただきまする!!」


部下の誇大妄想で、勝手に死んだことにされた魔王様。

その全身をブルブルと震わせつつ、怒りからか、彼の額にはうっすら青筋が浮かぶ。

『冷静になれ』?

そんな悠長な事を言っている場合か!!

当然魔王様はご存命なので、『仇』という相手は架空の存在である。

が、エグラーの思考回路内では、もはやその存在は決定的であった。

彼女の『出稼ぎ』が軌道に乗り始めているなど、夢にも思わない。


魔王様、見ていてください。

地の果てまでも、その輩を探し出し、刺し違えてでも仇はとります。


決意を胸に、彼は森の中を人間の住まう世界の方角へと進むのだった・・・・


仕事。

大変ですよね。

覚えることがたくさんあって。

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