第12話・魔王様、知り合いに会う?
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「このガキ! 大人をからかうんじゃねえぞ!?」
「うわあああああああああ!!???」
びっくりした。
あまりの剣幕に思わず、逃げてしまった。
はあはあ・・・・
何もがなりたてる事も無かろうに。
「うぬぅ・・・またダメかぁ・・・・」
握っている『シティワーク』に視線を落とし、先ほど街頭で配っていたどこかの商店の宣伝用のペンで、バツ印を書き込む魔王様。
これで今日断られたのは、優に十件を越えた。
そのほぼ全てにおいて、今のような門前払いを食っている。
だが先ほどのように、がなりたてられるのはまだ、良い方だ。
最悪なケースでは、『大人をなめやがって!』と、殴られる始末。
ソイツに関しては、見えなくなったところで頭を燃やすなどして報復はした。
それにしてもなぜここまで、断られ続けると言うのか。
何か、理由でもあるのだろうか?
・・・・まあ、それはさておき。
「いらっしゃい、いらっしゃーい! ウチの串肉は天下一品だよー!!」
「フッカフカのパン、焼きあがったよー! うまくて安いよー!」
「ようこそ『紅竜亭』へ!! 今のお時間は、ランチのメニューとなっております。」
先ほどこの街は昼を迎え、飲食店などの客引きの声が、より一層大きなものとなった。
よくまあ、声があそこまで張りあがるものだ。
それに、イキイキしておる。
ただよって来るうまそうな匂いもあいまって、聞いているだけで食欲がそそられてくるようだ。
くぎゅうぅぅぅぅ~~~~!
「はあぁぁー・・腹が減ったのぅ・・・」
小さなお腹を押さえ、ため息をつく彼女。
最後にモノを口にしたのは一体、いつだったか・・・
一応、持っている荷物の中にパンがあるが、魔王城に残されている者たちの事を考えると、どうもノドを通りそうになかった。
だからと言って、こんな街中で『回復魔法』を使うのは、体が光って目立ってしまうので、差し控えたいところなのだ。
このようなところで体が光っては、何事かと思われてしまう。
なるべく人気の無いところで、そういうのはすべきなのだ。
人気の無い、路地裏にでも向かうとするか。
目的地を決めたシアは、足早に街の外側へとその足を向ける。
「--------!!!」
「?」
その時、大きな影が魔王様を覆った。
下を向いていた彼女の顔は自然、上を向く。
そこにたたずんでいたのは、金糸の髪を長く伸ばした、エルフの女であった。
白い双眸を大きく見開かせ、何やら驚いたような表情を浮かべている。
・・・・誰だコイツは?
どこぞのスーツのような服に、身を包んでいるのが見て取れる。
この街でよく見かける、女の仕事人と同じ格好。
どうやら、彼女はこの街で働いているよう。
それにしても、なぜ我の顔をそう、ジロジロ見るのか。
我の顔には、何もついてはおらぬぞ?(たぶん)
おかしなエルフだ。
この女に関わって、良いことは無さそうだな。
「ふうぅ~~・・」
大きくため息をつき、腹を押さえながら女の横を素通る。
「ま・・・待ちなよ嬢ちゃん、無視する事はないだろう!??」
「・・・我は貴様なぞ知らん。 貴様が知ってるのだとしたら、他人の空似じゃ。」
呼び止められた彼女は、煩わしそうにそう言い放った。
それにしてもこの街にエルフが居るとは意外じゃ。
昔のエルフは閉鎖的で、決して外の世界に出ようとはしなかったものだが・・・
見るからに、この女はこの街で働いているよう。
時代は変わるものだな。
エルフ女は、足を組んで、後頭部をかき、苦笑を浮かべている。
一体、何だと言うのか。
「いや、他人の空似っていうか・・・・あんた、魔王様だろ? なんで・・ごもっももも!!???」
エルフ女が話を終えるより先に、その口を全力でふさぐ魔王様。
こ、コイツはアホか!?
我が頑張って正体を隠していると言うのに、それを街のど真ん中で大声でバラす奴があるか!!
なぜこやつがそれを知っているのかは、今は問題ではない。
一連の出来事に、こちらへ注目が集まってしまう。
マズい。
全速力で、彼女を少し離れたところにある、路地裏へと連れ込む。
「ふうぅ、アブないところじゃった・・・」
「うーむーうーー!!!」
冷や汗を流し、来た道をうかがう。
対して彼女に口などを押さえられたエルフ女は、全力でこれから抜け出そうと、必死でもがいていた。
なぜコイツは、我を魔王と見破ったのか・・
このままでは話が出来ないので、離してやる。
「ぶはああああ~~~!!!! このやろう、あたいを窒息死させる気か!??」
「アホウ! 貴様こそあんな大声で、我を『魔王様』などと呼ぶでないわ!!」
気になることは、後回しじゃ。
まずはこのアホウに、厳重に抗議をさせてもらう。
もう少しで我は、人間達に八つ裂きにされる所であったのだぞ!?
寿命が百年は縮んだわ!!
「へえぇ~~、じゃあやっぱりアンタ、魔王様か。」
「む・・・・」
合点がいったといった様子で、関心したような表情を浮かべてくる。
しまった、もしや単なる鎌かけであったのか?
考えてみればあの時、シラバッくれればそれで良かったのではあるまいか・・・
自分の今しがたの行動に、猛省する魔王様。
「いや、ガキの頃の記憶の姿と魔力の質が似ていてさ。 割と確信はあったんだぜ?」
我の考えを読んだかのように、二カッと笑顔を向けてくるエルフ女。
記憶の姿と魔力の質・・・
確かにそればっかりは、いくら我の変身でも隠せないところではある。
だがこの女は、やはり我に見覚えは無い。
警戒の必要が、ありそうじゃ。
「貴様は、何者じゃ?」
「おっと、自己紹介がまだだったな。 私はレリアル、用事あってこの街に来ていたんだ。
ここで話もなんだ、どこかへ移動しないか?」
再び我に、二カッとはじけるような笑顔を見せてくるエルフ女。
う~む・・・
敵意は全く感じないな。
このままコヤツを野放しにするのも、危険な気がする。
ここは、乗るか。
魔王様の決意と共に、静かな路地裏に可愛らしい音が鳴り響いた。
くぎゅぅぅぅ~~~~!!!
「ーーー!!!!!!」
こ、ここで鳴るのかおまえはー!
タイミング良すぎじゃろ!!
それがあまりに意外だったのか、目を丸くさせる彼女。
途端、路地裏には大きな笑い声が響く。
「あっははは!!! そうか、魔王様はお腹がすいているのか! じゃあ料理屋に行こう、良い店を知っている。」
「・・・・・・。」
カラカラと笑い転げる彼女。
何だかムカつく・・・髪の毛を焼いてしまおうか?
400年以上に及ぶ長い人生・・・いや、魔生。
この上ないほど赤っ恥をかいた、魔王様であった。
穴があったら入りたいとは、まさにこのようなときに使う言葉ではなかろうか?
このレリアルさん、ブライトにはエルフの森で採れる品の、商会へ売る際の量などの交渉に来たようです。
彼女がパリッとした服装だったのも、そのためです。
その交渉がひと通り終って羽を伸ばしていたところ、偶然、魔王様に会ったのだとか。
だから、ストーカーはしていません。




