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第11話・魔王様、初の面接を受ける

これからも頑張っていきます。

感想などがありましたら、どんどんお寄せ下さい!

「ここか・・・・」


右手に無料雑誌『シティワーク』を握りしめたシアは、『一つ目の』求人場所の建物の前に、立っていた。

改めて説明するが、魔王様の本名はエティシア=バルグレード。

この世界において、魔族を総括する立場にある存在である。

この400年の間で滅亡級の『貧困』が魔族領を(そうかつ)襲い、それを打開すべく彼女は単身、人間の街へと出稼ぎにやって来たのだ。

『ハンタ-』を目指し、一攫千金いっかくせんきんをもくろんでいた彼女だったが、400年の間に社会情勢は大きく変わり、『冒険者ハンター』というモノは、無くなっていた。

そこで、今は方針を切り替え『あくまで金を稼ぐために』、この街の一般求人に応募する事としたのだ。

・・・と、ここまで聞くと突っ込みどころが満載なのだが、当の魔族たちは真剣そのものなので、水を差してはいけない。

彼らは生きるのに今、必死なのだ。


「誰ぞ、おらぬか! たのも~う!!」


古めかしい言い回しで、建物の入り口の前で大声を張り上げる魔王様。

横にある呼び鈴の存在など、気が付きすらしない。

そもそも初めて見るものなので、それが何なのかすら知る由も無いのだ。

400年のブランクは、相当に根強い。


「誰ぞ、おらぬか! たのも~う、た~のも~~う!!!」


なかなか中から返事が無いので、何度も声を張り続ける。

もしや今の時間は、誰もいないのだろうか?

一個目からそれでは、この先、不安でしかないではないか。

諦めの悪い魔王様は、恥じる事も無く多くの人間が行き交う道のど真ん中で、声を張り上げ続ける。

その時、背後から声をかけられた。

声から考えて、男性のようだ。


「お嬢ちゃん、ここに何の用だい?」


「うおぅ!!???」


びっくりした。

いつの間に我の背後に立っていたのか。

これだから人間は、あなどれないのだ。

ピョンと後ろに飛び跳ね、警戒する。

傍目には幼女が(以下略)

一連の彼女の行動に、微笑ほほえみを浮かべる男。


「警戒しなくて大丈夫だよ、僕はアイザックス。 この施設の支配人さ。」


「なぬ支配人!? では貴様がここの、元締めなのか!」


「そうそう、まだ若いのにずいぶん、古い言葉を知ってるね。 歴史が好きなのかな?」


驚くシアから発せられた質問に、笑顔を向けながら受け答えるこの建物の『支配人』だという男。

言葉のニュアンス的に、この人間が、ここの建物の最上級士官と思われた。

つまり、我の『面接』とやらは、こやつにしてもらう形になると考えられる。


「我は『面接』とやらを受けに来たのじゃが、今もいいのか?」


「え、面接?? この施設の入園に、そんなものはいらないよ。 でも入園には親御さんが同伴でないと・・・」


「ま、待て待て!! 親とは何の話じゃ!? 我が言っているのは、『コレ』の事じゃぞ!!」


そう言って男に『シティワーク』を見せ付けるシア。

彼女が取り出した雑誌に、アイザックスさんという男も、目が釘付けになる。

出てきたモノが、かなり意外なものだったようだ。


「これは求人雑誌だよね・・・・まさかお嬢ちゃんが、応募するって言うのかい!?」


「そうじゃ。」


少女から発せられた言葉に、目を大きく見開かせる男。

この子供が仕事に就くと!?

だが一考して、変なことではない事を思い出した。

この世界には、多くの亜人種がいる。

中には、成人になっても子供のように背丈が小さい『ドワーフ』という種族も存在する。

この子・・ヒトもそうなのだろう。

ヒゲが無いのは不思議だが、変異種だろうか?

ドワーフが人間の街へ、しかも託児施設の仕事を受けようなど、種族的に珍しい事ではあったが、それは自分が指摘するような事ではない。


「それは失礼しました。 ではすぐに面接を行いますので、中のほうへどうぞ。」


「そうか、忙しい中すまぬの。」


支配人の案内されるまま、彼女は施設の敷居をまたいだ。

人生・・・いや、魔生初の『就職活動』の幕開けである。


「・・・ほほう、なかなか清潔感のある建物じゃな。 気に入ったぞ。」


「他の従業員達とともに、毎日欠かさずに清掃をしておりますから。」


建物の中を男に案内されながら進む魔王様は、建物内につり一つ落ちていないその光景に、感嘆の声を上げた。

ここは託児施設。

子供というのは活発に動き回るので、大きなゴミなどがあっては怪我などの原因となりうるし、子供と言うのは総じて、体の免疫などがまだ弱い事が全般に多い。

危険箇所の排除と防疫、両面をかんがみてもこの対応は、至極真っ当だった。

だが自分の居た魔王城は、子供など魔族しかいなかった。

魔族は子供でも丈夫な事が多いので、このあたりの配慮はされてこなかった。

彼女の居た部屋ですら、ホコリが降り積もっていたのが、動かぬ証拠である。


「さあこちらへどうぞ。 狭い部屋で恐縮ですが、どうかお目こぼし下さい。」


「気にはせぬ。 さあ『面接』とは、いかなる事をするのじゃ?」


「そうですね・・・まずは『履歴書』の提出を願いたいのですが・・・」


魔王様は早速、首をかしげた。

『履歴書』とは一体、何のことだろうか?


「まあ、それはまた後ででも結構です。 早速面接をいたしましょう。」


彼女のこの態度を予想していたのか、男は気にした素振りも見せずに、話を続けた。

ドワーフは、エルフほどではないが閉鎖的な種族である。

『履歴書』という物を知らない可能性も、十分に考えられた。

それに関しては、後で自分が教えながら書いてもらえば良いので、特に差し支えは無い。


「それではまずなんですが、第2級保育士以上のご資格はお持ちですか?」


「は? この仕事にも『資格』とやらが必要なのか!??」


「「・・・・・・。」」


彼女の面接は部屋へ入った時間から計算したとして、モノの一分ほどで、終了した。

この仕事は資格ありきのモノなので、それが無ければどうともしようが無い。

子供たちの命を預かるという業務特性上、これは必要不可欠なのだ。

これは法律でも定められており、例外は無い。

つまり。


「あの、大変恐縮なのですが、当施設であなたを雇い入れる事はできません。 残念なのですが、ご自分に合ったお仕事をお探し下さい。」


「・・・・・。」


やんわり断られた彼女は、座ったまま気を失った。

就職活動第一日目から、コレである。

まず、土俵にすら上がらせていない感じだ。


この先、前途多難な魔王様であった・・・・ 

魔王様、可哀相なぐらいに受難続きです。

そのうち、いい事あるさ!

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