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寿命

突然の心中の申し込み。花純はただただ驚いた。

「……ごめんなさい」

「そう言うと思ったよ」

乾いた笑い声。花純はなんと言ったらいいかわからなかった。それでもやっと声を絞り出した。

「ねえ。なんで私なの」

「だって高柳さん、もうすぐ死にそうだから」

花純はドキッとした。どうしてこの人は知っているの。

「君は……私のことを、どれだけ知っているの」

「小さい頃から孤児院にいるってことくらいだよ。それ以外はそんなに知らない。転校したから余計にね」

花純は赤ちゃんの頃に孤児院の前に置かれていた。実の親は見たことがないしどんな人なのか気になったこともなかったが、どうでもよかった。孤児院のみんなや大人の人が家族の代わりだったからだ。ただ、変な孤独感だけは感じていた。

「君は何で私が死にそうって分かったの?私、自殺とかまっぴらごめんよ。最期はぽっくり逝きたい」

花純はそう答えた。

「その最期が近い気がしたんだ。俺、結構人がいつ死ぬかとかが分かるんだよ」

何でもないかのように荘太郎は言った。花純には理解出来なかったが、荘太郎は真剣な目で言ったのだから信じるしかなかった。それに、最期が近いのも本当のことだからだ。


もともと花純は体が悪かった。中学3年の時、今までにないくらい体調を崩してしまい、院の人たちは病院へ行くよう強く言った。最初は大丈夫だと言ったのだが、お金を用意してくれた大人たちに強く言われひとりで病院へ行った。

検査を受けた後、医師は花純が重い病気であることを伝えた。治療すれば治る病気らしいが、治療しなければ余命はあと2年程と言った。なんの病気だったのかは花純は動揺していたためあまり覚えてはいなかった。

院のみんなに何と言おう。そう考えた時、もうこれ以上迷惑をかけたくないと思い治療するという選択肢は選ばなかった。ただでさえ孤児院の経営は大変なのに、無理をして用意してくれた今回のお金の何倍が治療費になるのか、考えたくなかった。

中学を卒業してからは院に恩返しするため働くことにした。院長の知り合いの人が経営する飲食店で働くことになり、病院代を返しアパートを借りられるお金が貯まるまで孤児院で寝泊まりして、今日まで彼女は生きてきたのだ。


「実はね、私もそろそろ死んじゃう気がしてるんだ。たぶん今日かもしれない」

花純は震えた声で打ち明けた。

「だから、今日お金を持っていかないとダメなの。今日じゃないと……」

「そっか」

あまりにも適当な返事に花純はムッとした。そっか、の意味がわからない。

「……というか、何で松林君は心中しようと言ったの。何で君まで死のうとするの」

花純の発言は少し無神経すぎた。花純は荘太郎が転校した理由を知らないからだ。

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