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聖獣達の鎮魂歌外伝~預言者の物語~  作者: 悠介


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第二十八話 キュリエ

「外園、腕試しに一つ、ここに行ってきなさい。貴方なら、何をすればいいかわかりますね?」

「……?」

「貴方の腕試しついでに、一つ不都合を解消してきてほしい、というだけの話ですよ、外園。貴方なら、何をすべきかはすぐにわかるでしょう。」

「……、かしこまりました。」

 死の未来を視始めて何百年か、かれこれ五百と五十年の時が過ぎた、私にとってのすべては、アンクウの間と自室、何十年かに一回の女王との謁見、だけだった、それ以外何もなかった、数百年という時間をそうして過ごしてきた私の心は、とっくのとうに壊れてしまっていた、それが正しい表現だろう、私の生きる時間の間としては、十分の一程度、しかし、生まれてから殆どの時間、をアンクウとして過ごした私は、心が崩壊していた、それこそ、王家にとって都合のいい駒として生きる事しか出来なかった、そんな私の、いわば人生の転機と言うのは、あそこの事を言うのだろう。

 女王ディアーヌに指定された場所、腕試しをしろという事は、魔物か獣かを討ってこい、という事を言うのだ、と神官の誰が言っていた覚えがある、私からしたら、女王にとって都合の悪い存在を、かこつけて殺めているだけだ、それを「不都合を解消してこい」と言い換えて、まるで自分達には非がない、自分達一切悪事に携わっていない、と逃げているだけだ、と今なら言うのだろうが、あの頃はそんな事もわからず、言われた通りにロザウェルから馬車で二日、のとある場所に私は向かった。


「ここ、ですかね。」

 探知能力と言うのは、私には備わっていなかった、というよりは使い方を知らなかった、あの日、私がアンクウとして目覚めた日、私は探知能力というものに目覚めていた、そこに関しては得ていたのだが、それを他に使えるのはハイエルフだけだった、竜神様方も使えるというお話だったが、「妖精の中に限定した」場合、ハイエルフだけの特権になる、そのハイエルフでさえ、国外の探知は出来ないと言っていた、でなければ、私は今頃ハイエルフ達に捕まって、処されていたかアンクウの間に戻されているか、どちらかだろう。

 兎にも角にも、使い方を知らなかった私は、警戒しながら森の中を進んでいた、リヴォルビングランタンとインソムニアをもって、誰かが私に奇襲を仕掛けてきた場合、返り討ちに出来る様に、と構えていた。

 ガサガサ、という音がした、森の中、夜で視界が悪い中で、私は魔物か獣かどちらか、と考えながら、武器を構えた。

「あたしたちを殺すの……?」

「……?」

「貴方、エルフだよね……?あたし達を殺しに来たの……?」

 声が聞こえた、と思ったら、木陰からダークエルフの少女が現れた、ダークエルフだという事はすぐに気づいた、ジェライセさんの事を覚えていたから、だから、ダークエルフがいるのだ、とはすぐに気づいた、そして、女王が言った「不都合を解消してきてほしい」が、彼女の事を言っているのであろう、という事にもすぐに気づいた、これは今でも推測の域を出ないが、彼女がエルフ達に話しかけたり、妖精族に声を掛けたりしている、という事が、女王や王家にとっては不都合だったのだろう、そして、私は世間的には存在しない者、だから、彼女を消すのには丁度良い、と女王は考えたのだろう。

「……。殺めませんよ、出ていらっしゃい。」

「貴方、エルフでしょう……?あたし、ダークエルフだよ……?怖くない、の……?」

「えぇ、怖くありません。私にはダークエルフの友人がいました、ダークエルフの在り方、ハイエルフ達によって歪められた歴史も、知っているつもりです。」

 夜の鳥が鳴く中、か細い声で囁いていた少女、その名を。

「あたしはキュリエ、貴方は?」

「私は外園と申します。」

 木陰から出て来た少女は、何か武装をしているわけでもなく、私が感じられる範囲では、別段魔力が高い訳でもなく、と言った少女だった、彼女は言っていた、あたしはダークエルフの中でも疎まれてる方だ、妖精と関わろうとする変わり者だ、と言われていると言っていた、だから、女王は彼女を面倒な存在として認知したのだろう、私に面倒を片付けてこい、と言ったのは、彼女の事だろう、とはすぐに想像がついた。

「あのね、あのね、あたし、エルフの人達と、仲良くなりたいなって、でも、みんなそれをするなって言うんだ、あたし達は危険視されてる存在だから、妖精と関わったら粛清?されちゃうんだぞ!って……。でも、あたし……。」

「私は怖がりませんよ、私には、かつてですがダークエルフの友がいたので、私は怖がる理由がありませんね。ただ……。君を殺めろ、とハイエルフ達は所望している様子です、君の存在が、都合が悪いのでしょう。」

「え……!?じゃ、じゃあ、貴方は……。」

「……。私は、友と同じ種族である君を殺めようとも、殺めたいとも思いません、ただ……。私はアンクウ、私は王家に仕える神官なのです、だから……。どうすればよいのでしょうかね。」

 お互いに困った表情をしていた、キュリエは殺されるかもしれないという事から、私は、私としては殺す気が無かったとしても、女王を始めとしたハイエルフ達はそれを所望している事に。

 考える、この場を乗り越えて、彼女を殺さずに、そして私が咎められない方法、そんな方法があるのだろうか、と今でも自嘲気味に考えなくはない、結果として、私はキュリエを殺めたのだから、あの時の女王の命には従った、ととらえられても仕方が無いだろう、ただ、あの日、満月が木陰を照らすあの日、うるんだ眼をした少女、キュリエの瞳を見て、私はジェライセさんとの約束を守らなければならない、それをあの日、あの瞬間に守らなければならない、と感じていた。

 ジェライセさんとの約束、覚えている、今でも忘れられない、あれから六百年の年月が過ぎようとしているだろうか、ジェライセさんと「男同士の約定だ」と約束した事、あの頃は取るに足らない約束だと思っていた、当たり前のことだと思っていた、私にとって、それは当然に過ぎない事、そして、村から出るという想像をしていなかった以上、彼ら以外のダークエルフとは関りにすらならないと思っていたから、当たり前だと返した事。

「同胞が危機にさらされた時、少しだけ助力して欲しい。」

 ジェライセさんが真剣なまなざしで言った言葉、それは、彼らの集落のダークエルフの事、だと思っていた、ただ、今確信している、それは、彼女の事、今まさに女王の都合で私に殺されそうになっている、キュリエを守ってほしいという未来を視た話だったのだろう。

「……。キュリエ、私と一緒に逃げる気はありませんか?私と共に、故郷を捨てて、私と共に、生きていきませんか?」

「え……?でも、外園さんは、神官さんなんでしょう?あたしを殺しに来た神官、あたしの事が、煙たい人なんでしょう?」

「それは王家にとって、の話であって、私個人の話ではありません。それだけは、誓って違います。私には、友がいたのです、彼は、ダークエルフの迫害の歴史を、私に教えてくださった、学ばせてくださった、だから、彼に報いる為にも、私に出来る事をしたいのです、駄目でしょうか?」

「……、ううん、駄目じゃない、駄目じゃない……!でも、あたしは集落から離れられないし、神木には近寄っちゃいけないし……、どうしよう?」

 どうするべきか、ここで私が立ち去ったとて、別で特派員が送られて、キュリエを書してお終いだろう、ならばダークエルフの集落で匿ってもらう、と言っても、キュリエを煙たがっているという話をされて、それも出来無いと感じていた、ならば、最低でも国外に出る必要があるだろう、ダークエルフが諸外国でどういった扱いをされているのか、という事を当時は知らなかった、もしかしたら、ダークエルフは世界共通として、迫害される存在なのかもしれない、そして、国外に出たとて、言葉が通じるのか、文字として言語として、言葉が通じるのか否か、という問題もあった、国外に出た場合、私は金銭を稼いでいたわけではないのだから、生活をしていく術もないのかもしれない、と一瞬考えた、そんな記憶が今でも残っている。

 ガサガサ

 誰かが近寄ってくる音がした、それが誰の足音なのか、私を連れてきた馬車の御者が私を心配して向かってきたのか、それともダークエルフ側の誰かが見に来てしまったのか、ただ、私達には、時間も選択肢も残されていない、それだけは理解していた。

「……。一か八かです、キュリエ、失敗したら申し訳ない、私を、信じてくださいますか?」

「……、うん。」

 一か八か、あの時しか発動しなかった、今は特訓をすれば発動程度は出来るのかもしれないけれど、実用的な利用は出来ないだろう、その魔法を発動する事を決断した。

 キュリエの手をつかんで、イメージをする、国外、国の外、大陸、私が行ける範囲、私の魔力で足りる範囲、私達が生きていく為に、生きていけるように、そう念じて、私はあの時、生きている内で最初の最期、転移魔法というものを発動した。


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