32話 得たもの、失ったもの
それから、俺とサフィーは、神に教えてもらった薬の材料を集め、王城へ戻った。
薬の効果は、本物だった。
疑っていた訳ではなく、その効果は想像以上だった。
あの状態の聖女が、戦うとしたら、俺でも厳しいところがあるかもしれない、と本気で思うほどだった。
その効果もあり、第二王子は、無事に完治した。
「フォーリアス、本当に、良かった。」
「心配をかけたな、みんな。助けてくれて、ありがとう。」
……やはり、二人の不仲説は、ないんじゃないかな、と思った。
「リュシオン、ディアン伯爵令嬢、アンサローム様に会ってきてくれたのだよな。不思議な方だが、どうだった?」
「ええ、すべてを知りうる、というのに、納得できる方でした。」
「そうか。……私は、あの方に、生まれた時から加護を与えてもらっているのだが、わからないことも多々あってな。……ただ、あの方の行動には、絶対的な理由がある、それだけはわかっているつもりなんだ。」
第二王子は神のことを、そう言っていた。
それから数日、学園は、普段通りに動いていたが、俺は、ずっと部屋に引きこもっていた。
身体を動かす気力が、無くなっていた。
……絶対的な理由、か。
『……教えて、私の愛する人は、一体、どこにいるの。』
俺の問いは、確実に神に引き出されたものだった。
なんで、その問いの答えを、俺に聞かせようとしたんだろう。
あの神が、ほとんどを知りうるというなら、私にとっての彼という存在の大きさを、神は知っていたのだろう?
それなのに、なぜ。
『……いないわ。この世界に、あなたが言うその人は。』
俺が転生して、シアンと出会ったのは、あの時の続きを、また、始めるためだと、思っていたのに。
「ほんと、なんでここにいないの、満月。」
◆◇◆◇ ───sideサフィーリア
え……?
声が出なかった。
シオには、愛する人がいるらしい。
私は、シオと出会った八年前のあの日から、シオとの再会を、ずっと楽しみにしていた。
ずっと影から支えてくれていた兄が、学園に入学し、家でひとりぼっちになっても、シオとの約束があったから、私は、強くいられた。
シオは、私にとって特別な存在だ。
この感情の名前を知らなくても、それだけはわかっていた。
ただ……
シオの、愛する人は、この世界にいない。
ほとんどを知る神が言うなら、間違いはないのだろう。
その後のシオは、特に変わった様子は、見られなかった。
愛する人がいないと知って、気が気でないはずなのに。
……ただ、私は、それを知って、ほっとしてしまった。
本当に、最低だ。
かと言って、自分がシオにとって特別な存在になれるとも、限らないのに。
苦しいなぁ。
溢れ出る涙が、止まらず、こぼれ落ちる。
こうなって気づくのだから、救いようがない。
私は、これ以上を望んじゃいけない。
それは、わかってるから、好きだ、と言わないから、あなたのそばに、居させてほしいの。
これにて2章完結となります!
ひとまず、ここまで読んでくださった方々、ありがとうございます!
3章開始まで、今しばらくお待ちください。




