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閑話 ある祓魔師の逸話

はるか昔、ある、一人の祓魔師が、存在した。


彼女は、非常に強い力を持っていた。

それ故に、周りから、もてはやされたり、羨望の的となることも多かった。


しかし、彼女自身は、それらに対して、なんの感情も抱くことはなかった。


彼女は、人に興味を抱かぬ人間だった。


むしろ、自信が祓う悪霊との会話を可能とし、多くの場合、何らかの後悔を持つ、悪霊に深く同情する人間だった。


しかし、彼女は、ある日突然、姿を消した。


その理由は、彼女が、この世で愛せた、たった一人の姉の存在によるものだった、と言われている。


彼女の姉も、また、優秀な祓魔師であった。


ただ、違いがあったとすれば、彼女は才能、彼女の姉は、努力によって、その名声を得た、という点だろう。


二人は、とても仲が良かった。

しかし、彼女たちが、悪霊を祓うことで守っていた人々は、彼女と、彼女の姉の派閥に分かれ、次第に対立するようになっていった。


平和を望む彼女の姉は、それに深く苦しんでいた。

そして、彼女は、そんな姉の姿を、一番近くで見ていることしか出来なかった。


そんなある日、彼女は、強力な悪霊が存在する、というある洞窟に向かった。


彼女の姉は、彼女のことをかなり心配していたが、そんな姉の心配を振り切って、彼女は、一人で依頼に向かった。


彼女には、今回の依頼での、目的があったからだ。


そうして、彼女は、一人で、洞窟である悪霊と出会った。


その悪霊は、悪霊、というよりも、臆病な地縛霊のようだった。


強力、と呼ばれる力は、悪霊化して手に入ったもののようで、扱いがわからず、見知らぬ人への恐怖で、なりふり構わず人を傷つけていた。


そんな悪霊を、彼女は、気に入ったらしい。


今までに多くの悪霊と会話をしてきた彼女だが、この悪霊ほど、人間味のあるものはいなかったためだ。


そして、彼女は、その悪霊に、ある提案をした。


自分を、殺してはくれないか、という提案を。


彼女は、自分が居なくなれば、派閥争いが衰退し、すこしでも、平和になる、と考えたためだ。


そもそも、彼女は、人に、世界に、落胆しているような部分があった。


悪霊に同情する故に、なぜ、争わなければならないのか、悪霊と会話を可能とする故に、彼らも、また、元は人であり、人によって悪霊になったのだと、知っているからだ。


悪霊と人が共存する世界は、彼女がどれだけ調べても、考えても、辿り着けなかった。


だが、悪霊は、その提案を断った。


悪霊も、また、彼女と同じように、彼女を好いたから。


そして、その代わりとして、悪霊は、彼女に、彼女の命をかけて、自分を祓うことを提案する。


つまり、悪霊は、世界に落胆するもの同士で、心中することを、提案したのだ。


彼女は、その提案を聞き入れた。


悪霊は、彼女にとって、彼女の姉以外に、初めてわかり合うことのできる存在だったのかもしれない。


そして、彼女は、彼女の力、全てを賭して、悪霊を祓った。


そして、彼女も、悪霊も、消滅したかのように思われた。


しかし、この話には、続きがある、とも言われる。


それは、彼女と、悪霊は、融合した、という説である。


悪霊の悪の部分が祓われ、悪霊の力と、彼女の力が混ざり合い、彼女と悪霊は、一つの強大な存在となった。


その強大な存在は、今も尚、彼女と悪霊が出会った洞窟で、世界を見続けている、という。


そして、その洞窟は、後に彼女の姉によって、こう名付けられた。


ある祓魔師の最後の場所、祓魔の洞窟、と。

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