26話 呪い
……どうなるかな。
ラクト子爵令嬢は、聖女の力に目覚めてから、まだ、そこまでの日数が経っていないのもあって、完全ではない。
かと言って、治せないものも、珍しいと思うけど。
しばらくすると、光が収まり、ラクト子爵令嬢が顔を上げた。
「どう、だ?」
第一王子が、ラクト子爵令嬢に声をかける。
「……ごめんなさい。ダメ、でした。」
ラクト子爵令嬢が、か細い声で、そう言った。
……本当にまずいことになってきたね。
「戻ったぞ!」
すると、レステート公爵令息とマギア伯爵令息が、戻ってきた。
「失礼します。」
医師が、そう言って第二王子に近づく。
「第二王子殿下の容態ですが、先程から、そこまで変わりはありません。ですが、ラクト子爵令嬢の力が、効いていないようです。」
簡潔に状況を伝える。
「聖女様の御力を持ってしても、ということですか。」
医師が呟いた。
「とりあえず、殿下を寝かせよう。」
レステート公爵令息の言葉に頷き、ひとまず、第二王子を移動させた。
「……現状として、私から、お伝えできるのは、確実な原因が、わからない、ということだけです。」
もう一度、第二王子殿下の様子を見ていた医師が、言った。
「そうか。」
第一王子が呟いた。
……あまり、こんな第一王子は、見たことがない。
どんな時にも、冷静で、私情を持ち込まない、そんな印象が強かったからかな。
弟だけど、母親は違うし、王位継承権を争う仲でもあるはずなのに、普段は、他の人と、平等に扱うのに。
それだけに、今の第一王子は、いつもとは、別人のように思えてしまう。
「みんな、迷惑をかけた。本来ならば、俺が仕切るべきだったのに。自分のやるべきことを、見失ってしまっていた。」
「だな。それはそうだ。」
レステート公爵令息が言う。
王子相手でも、はっきり言うよな、この人。……いや、第一王子が相手、ってとこもあるのかな、これは。
「第一王子殿下、反省は後になさったらどうですか?今は、反省よりも、第二王子の方が重要だと思うのですが。」
悪いけど、はっきり言わないと進まないしね。
「……そうだな、すまない、リュシオンの言う通りだ。今はフォーリアスを一刻も早く治す方法を考えなければ。」
「はい。ところで、医師の方、先程、確実な原因とおっしゃいましたが、可能性としては、具体的にどういったものがあるのですか?」
多分、そういう意味だと思うんだけどな。
「ああ、はい、そうですね。……私としては、何者かによってかけられた、呪い、という線が濃厚だと思います。未知の病気や物質でも、聖女様の力で治せない、ということは、考えにくいので。」
なるほどね、呪い、か。
「呪いは、聖女様の力で無理やり解くってことはできねぇのか?」
レステート公爵令息の問に、医師が答える。
「呪いは、何らかの代償を支払ってかけるものであるから、できないことはないと思いますが、聖女様にどんな影響が出るかは予想できませんし、それで本当に呪いが解けるかどうかも、わかりません。」
「それでは、呪いの術者を探さなければならないのだな。」
第一王子のつぶやきにシアンが言う。
「呪い、ということは闇魔法ですよね。これほど高度な闇魔法が、使える人物など、限られていそうですけど?」
「いや、属性魔法の適性を、王城に知らせる義務はあるが、熟練度までは、わからない。それに、魔道具による呪いだった場合、それを作った人間は、見つけられても、使った人間は見つけられない可能性がある。」
「そうなのですね。そもそも、なぜ、第二王子殿下は、呪いをかけられたんでしょう。」
ふと、サフィーが言い、ラクト子爵令嬢が、それに続いた。
「……たしかに、犯人の動機も、どこでそれをかけられたのかも、わかっていませんよね。」
みんな難しい顔をして、場が、静まり返った。
その時だった。
「……ふつ、ま。」
第二王子が、うめくように、呟いた。




