4話 予定の確認
それから三ヶ月。俺たちは学園行きの馬車に乗っていた。
学園には、学生一人につき、二人の使用人を連れて行けるので、アイルたちも一緒である。
「学園の直近の予定ですが、まずは、第一王子殿下と第二王子殿下へのご挨拶。そして、入学式とクラスでの顔合わせ、となっております。」
「ありがとう、アイル。生徒会とか諸々は明日なんだっけ。」
学園には、生徒会というものが存在する。王族や高位貴族を中心としているが、成績によって、下位の貴族や平民も選ばれる。
筆頭侯爵家の令息であり、第一王子と第二王子の側近である俺たちも、もちろん生徒会に入ることになっている。
……マジで、乙女ゲームの世界観でしかないな。だいたい主人公のヒロインって成績優秀な平民のイメージだし。むしろ、そのためにこのシステム採用してるでしょ。
そんなことを考えていると。
「そうだったな。明後日は、親睦会?だったか。社交パーティーとあんま変わらなさそうだが。」
「それは、たしかに。でも、大人の貴族はいないし。行く場所も、行ったことない渓谷の近くらしいから、すこしは違うと思うけどね。」
「聖闇の渓谷と呼ばれる古くからある場所ですね。昔、聖女様が覚醒した場であると言われていたはずですね。」
……聖女、ね。500年に一度ぐらいにしか現れないって言われてるけど、この乙女ゲームっぽい世界観なら、出てきてもおかしくなさそう。一応調べておこう。
「あー、なんか聞いたことあるな。まあ、場所が変わろうが、めんどくせぇことには変わりねぇけど。」
「シアン、そればっかりだね。」
「シオンもそうだろ。特になんかあるわけじゃねぇし。むしろ、一日中貴族に絡まれるんだろ?社交パーティーの半日だけでもあんな疲れんのに。」
「たしかに。……まあ、生活してればなんか面白いことでも見つかるかもよ?」
「……期待はしないでおく。本当は行きたくねぇけど。」
シアンの答えに呆れながらも、ふと、ある少女の言葉を思い出した。
『じゃあまたね、約束だよ!シオ!』
試さなければ、信頼するのは難しい。それは、今も変わってない。でも、あの少女、サフィーは、違った。
サフィーがもう変わってしまっているかもしれないと思いつつも、会えることに期待している自分がいる。
「……シオン?どうした?」
返事が遅いのを不思議に思ったのか、シアンが顔を覗き込んでくる。
「んー、別に?なんでもないよ。」
……ちょっとぼーっとしすぎたな。
「……つーかさ、ほんとにやんなきゃいけねぇの?あれ。」
「そうだよ?一度了承したからにはやってもらうからね。」
シアンの言うあれとは、前にイリスやアルネから聞いた、ノルディック家の双子不仲説を真実にするための作戦のこと。
具体的には、人目がある場所で話さない。話すことがあっても、愛称で呼び合わない、などなど。
なぜこんなことをするのか、というと。
「俺たち双子が不仲だということが知れ渡れば、俺たちの間で情報が共有されにくい、と考えられる。……本当に、よくやるよ、お前も。」
「だってさ、王子二人が不仲なら、その方が都合もよさそうじゃない?」
「……シオンがいないと、人避けんのむずいんだよ。」
「練習だと思ってさ。でも、大丈夫じゃない?シアンはその無愛想さを隠す気はなさそうだし。」
「……それはそうだが。」
かなり渋ってるな。そこまでいかれると罪悪感が湧いてくるんだけど。
「まあ、とりあえず様子見で一ヶ月かな。それまでは、頑張って。」




