第34話 カール視点②
ランベルト領・カールの居城
「カール様! 西から敵が侵入。率いる大将はリーンハルト!」
「南の防衛線が突破されました。オークの群れの先頭にドーザがいて止められません!」
「移民冒険者の兵が裏切りました! 反乱です!」
「クッ! 親衛隊も防衛に周れ! ここは僕一人でいい」
何だ。この状況は! 僕は戦わずに王になるはずだった。
それが、今、王家と魔王軍の両方から攻められ、城を囲まれている。
それもこれも下請けのせいだ。メデューサ、そしてカゲト!
やつの憐れむような顔を思い出す。
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城の前にカゲトが訪ねてきたとき、僕はSランクの親衛隊とともに会った。
「僕と戦いに来たのか? 下請け」
「お前が王になったら、そうしようと考えていた。だが、反乱軍の頭目じゃ、俺の相手には役不足だ。リーンハルトやドーザに任せるさ」
「王家最大の貴族と魔王軍四天王を、下請け扱いか? 偉くなったもんだな、カゲトォ!」
「馬鹿なお前に教えてやるカール。あいつらは下請けじゃない、仲間だ」
「僕を見下すなあぁぁっ! パーティーのときもそうだ。貴様はいつも、いつも、いつもおぉぉぉっ!」
「悪かった」
「は?――悪かっただと?」
「パーティーを組んでいたとき、仲間のお前をずっと弟子のように扱っていた。それが、お前を歪ませた」
「僕が歪んでいるだと! ふざけるなあぁぁっ! 謝るのなら、今すぐ! ここで死ね!」
「断る!」
カゲトの闘気が噴き出す。なんて大きさだ。親衛隊が後ずさりしている。
「カール、少しだけ生かしてやる。それが詫びだ。余生をみじめに生きろ」
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くそっ! どいつもこいつも!
誰もいなくなるのを確認すると、石像の前に立ち呪文を詠唱する。
地下の洞窟へと続く秘密の通路が開いた。
水が流れる洞窟を走る。先には船が繋いである。
こうなったら、他の大陸で再起を計るしかない。また下請けを作って、のし上がってやる!
僕の足が意志に反して止まった。どういうことだ?
足元を見ると、水面が凍っていた。
「どこにも逃がさないわよ、クズ男」
「貴様の魔法か、アルデラ! 僕を舐めるなよ。SSランクの守護者だぞ!」
氷を割ろうと両足に力を籠める。
「上がお留守だよ、あんちゃん」
誰の声だ?
見上げると上から網が覆ってきた。体に絡みつく。蜘蛛の糸か?
「くそっ、他にも仲間がいたのか!」
「ああ、千匹ほどな」
モヒカン頭のゴブリンが手をあげると、弓を構えたゴブリンの群れが弓を放ってきた。
畜生、盾で防げ―――っ!
だけど、矢はブスリ、ブスリと盾と鎧の隙間に刺さっていった。
「アデリナ、これだけ打ちゃあ、SSランクでも何本かは当たんだろ」
「ええ、しばらくは麻痺で動かなくなるでしょうね」
「ありがとよ、あんちゃん。おめえのおかげでキングに一歩近づけた」
くそ、ゴブリンなんかに……。
僕の意識はそこで無くなった。
――――――――――
目覚めたとき。僕を多くの群衆が見上げていた。見下ろすのは気分がいい。しかし、聞こえてくるのは歓声ではなく、罵声や怒声だった。石が僕の顔に当たる。
「偽英雄!」
「平民の希望を裏切りやがって!」
「詐欺師!」
「魔王軍と組んでいたなんて最低!」
「SSランクも嘘なんだろ!」
「冒険者を食い物にしやがって!」
やめろ! 僕は平民の英雄、未来の王だ!
そう叫びたかったが。喉を締める鎖が声を出させなかった。華やかなプラチナ装備もすべて外されていた。両手両足にも鎖がつけられている。
「カールはこの国、最大の罪を犯した。よって車裂きの刑、火あぶりの刑、両方を行う」
リーンハルトがそう告げると、手足それぞれの鎖の先を10人の騎士が持ち、僕の前に10人の魔法使いが並んだ。群衆が歓声をあげる。
「執行っ!」
手足が引っ張られていく。火炎魔法が体を包む。
怖い! 痛いのは嫌だ! 熱いのは苦しい! ごめんなさい!
許してくださいぃっ! 助けて、カゲト――。
だけど僕の懇願は誰の耳にも届かなかった――。
<完>
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ご愛読ありがとうございました。ここまでお付き合いいただいた読者様には感謝しかありません。
ブックマークが伸びないこともあり、一区切りついたここで完結とさせていただくことにしました。
この話は半沢直樹のドラマを見て影響を受け、ファンタジー物で似たような物を書けないかとチャレンジしてみた作品でした。
また、違うアプローチでファンタジー物に挑みたいと思いますので
その際はよろしくお願いいたします。




