第19話 女魔法使いアデリナ
「グギャアア――!」
グスタフの仲間の戦士二人がドーザに食い殺されていた。
女魔法使いは証人として連れて行くためにリーンハルトが縛っている。
ランベルト伯が言った。
「リーンハルト、そなたが褒賞を受け取ってはどうか?」
「何を! 高潔な卿らしくもない」
「身を案じているのだ。グスタフは汚い策謀を働いた。だが、それを証明する際、我々とゴブリンと繋がりを隠して説明するのは難しい。王がそなたに対し、疑心暗鬼に囚われないと言い切れるだろうか」
リーンハルトが黙り込む。
「しかし、私は王を守ると誓った」
「俺も伯の意見に賛成だな。今のカールは有力諸侯並みの力を持っている。裁こうとしても戦になるだろう。王を守りたいのなら、王都の外にも力があったほうがいい」
「――わかった。そうしよう。ランベルト伯もついてきてもらえますか。騎士団時代に鬼教官と恐れられた力を貸してほしい」
「いいだろう。わしには領主よりそっちのほうが向いている。ハッハッハッ!」
「そうなると、この方は……」
エレーナが縛られた女魔法使いを見る。
「もう用はない。カゲトの好きにするがいい。明日には騎士団を連れてくる。それまでに去れ」
そう言うとリーンハルトはランベルト伯を連れて、王都へ戻っていった。
――――――――――
俺は女魔法使いの前に立った。
「殺すなら、早く殺して。じらされるのは好きじゃない」
「お前はアデリナだろ」
「アタシのことを知っているの?」
「センスのある若手はチェックしていたからな。仲間にならないか?」
「買い被りすぎよ。アタシが牛女に翻弄されていたのを見てたでしょ」
「ああ、見てたさ。お前が手を抜いているのをな。ミュウミュウはまだAランクの力しかない。Sランクが一時間以上戦って隙を見つけられないわけがない。お前はわざとミュウミュウがSランクの戦士に見えるよう戦っていた」
「バレていたのね。さすがだわ。乗り気じゃなかったの。グスタフのやり方は好きじゃない。ヘドが出るわ」
「なら、力を貸せ」
「でもね、それよりも人を殺すのは嫌! アタシは両親を魔物に殺された。どんなクズ野郎でも魔物よりはマシよ!」
「――お前の気持ちはわかった」
縛っている縄を剣で切り、そのまま攻撃の構えをとる。
「やっと殺してくれる気になったのね」
「魔物を殺したいのだろう? 杖を取れ」
「どういうつもり? いいえ、ありがとう。最後に勇者と戦わせてくれるのね」
「アデリナ、戦いのセンスを見せてみろ」
「――わかったわ」
俺は剣に雷を帯びさせる。
アデリナの杖を中心に大気がきらめく。
「神速雷鳴剣!」
「氷鏡凍土!」
地面から柱ような霜が無数に突き出してくる。鉄の鎧が凍って砕けた。
同時に俺は氷柱をすべて砕き、アデリナを斬り飛ばした。
ドーザがキセルを吹かす。
「いい勝負を見せてもらった」
「お前も知っていたから、アデリナを最後に残しておいた。そうだろう?」
「美味そうな人間から食べただけだ」
「素直じゃないな。ランベルト伯を王都に連れて行ってくれたのもお前だろ?」
「知らぬ。嬢ちゃんの手柄だ」
エレーナが下半身をモジモジしている。
「エレーナとランベルト伯の足では、あの時間内に戻ってくるのは無理だ。それにお前の背中が濡れているのが証拠だ」
ドーザは自分の背中を見て大笑いした。
「全力で走っている間にマーキングされておったか。嬢ちゃん、わしの背中を縄張りにするのは勘弁してくれ」
エレーナは顔を真っ赤にして、家の中へ隠れた――。




