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26話 一期い「バイバイ、またね」

いや~あと数話で終わる宣言したせいでえらく長くなってしまった・・・

下手な事ほざくべきではないですねぇ・・・


それはそうと今回で友達編はおしまいです。

あと3話で完結予定!

長かったような短かったような連載期間だったなぁ。


 狭く薄暗い部屋の中で男二人が会話している。


「アナタから青龍教の仮拠点にくるとは珍しいですね」

「ふん、ちょっと雨入家についてな」

「そうですか、いよいよ実行という訳ですね」

「・・・お前の部下では手に負えないのではないか?」

「ええ、なので少し手荒に大勢で押しかけてしまおうと

思っているのです」

「所詮老いぼれと女一人・・・殺すのは容易い」

「本当に殺せるのか?」

「もちろん!青龍教では死と苦痛こそが神龍の救い意志とされています!

ニンゲンに救いをもたらすのは当然の義務ですよ!」


 カチッ

 輝也がポケットに手を突っ込んで録音機のスイッチを切る、今度は

反対のポケットから携帯電話が出てきた。


「?」

「もしもし、聞こえたか?」

『はい!突入します!!』

「な、なにをしている!?」

「聞いててわからなかったか?

この建物は警察に包囲されている諦めてお縄に付け」

「貴様ぁ!我らを裏切るというのか!!」

「・・・なに、ただ晴斗に誇れる父で居たいだけさ」

「クソが!死ね!!」


 相手が懐から拳銃を取り出し出口の扉に手を掛けつつ

輝也に銃口を向けた。


「オラァ!!」


 バァンっと勢いよく外から扉が蹴り開けられた。


「うげぇ!!?」 

「よぉ、老いぼれで悪かったなぁ、えぇ!?」

「源太、遅いぞヒヤヒヤした」

「うるせぇ、お前が死んだら俺が町長に立候補してやるよ」

「う、うぐ・・・なんで貴様がここに!?

この男は貴様らを殺そうとした首謀者だぞ!!」

「知ってるわバァーカ!!それより退院してからいろいろと調べたら

あの病院の闇医者は青龍教の人間だそうじゃねぇか

まともに治療する気なんてなかったんだろ?」

「そこまで調べていたのか・・・!」

「今この建物にその闇医者が潜んでるのも知ってるぜ」

「・・・私はここまでのようですねぇ」

「お前だけじゃねぇ、全員豚箱行きだ」


 部屋に数名の警察官が突入し、手際よく手錠をかけて外に

無理やり連行してゆく。


「貴様ぁ!タダで済むと思うなぁ!我らとの関係が明るみに

出たら町長なぞやってられぬぞ!!貴様も、貴様もぉぉ!!!」

「なんだ、忘れたのか私は隠ぺいと買収が得意なんだ罪は全て

お前たちに背負ってもらう」

「後悔するぞ・・・フクククク!」


 捨て台詞を吐き部屋の外に連れていかれたのを見届ける。


「今まで俺は晴斗の為になんでもしてきた、汚いことも沢山な

全部晴斗の為だった、でも、晴斗が私に望んでいたことは

汚い金で治療を受けることではなく、お前の横で笑ってる

私だったのだろうな・・・気が付くのが遅かった」

「・・・そんなもんだよ、気が付いたら手遅れなんて

ありふれた話だ、後悔しない人生なんてない

俺もそんな後悔だらけの人生さ」

「そうか」


 輝也が短い返事をしたその時だった。

 突如部屋の窓ガラスが大きな音を立てて割れる

何かが外から飛び込んできたのだ。

割れた窓の縁には飛び込んできた物体が屈んで

こちらを見ていた。


「・・・闇医者」


 黒い白衣に身を包んだ人物の

その両腕には鎖が千切られた手錠がついている。

つまり鉄の物体を引きちぎって見せたということだ。


「おとなしく我らの喰い物になっていればよいものを・・・」


 コイツやべぇ!寒気がする、悪寒ってヤツかッ・・・!


「私は青龍教『蔓延る病達(666‘s)』が一人

『不治』のヴェノム、いずれまた会おう」


 ヴェノムと名乗った闇医者は空気を縦に引っ掻くと

建物全体に亀裂が入り轟音を立てて倒壊した。




「ミミズばっかり・・・寒い時期じゃいないのかな」

「魔族に季節は関係ない、探せば居るさ、もともと数は少ないからな」

「あっ!とーちゃんコレじゃない!?」

「どれ・・・なんだその生き物、見たことない、違う」

「なーんだ、チェ、後で食べようか?」

「そうだな、多分だけど美味過ぎるとおもうぞ」


 捕獲した生物は三角形の頭にビール瓶のような体で手足はない

そうツチノコだった。


「もう少し向こう探してくる」

「おう、半透明の壁の外には出るなよそれが結界だからな。

結界の外に全身出たら魔族は戻って来られない」

「は~い」

「探すのは大変よねぇ~・・・」

「虫探し始めてもう6日だもんなぁ」


 コンが茂みに足を踏み入れる。


「うわアブねっ!!ニンゲンの足か!?」

「え?だ、誰??」

「下だ下!ふざけるな!殺す気かクソ虫風情がっ!!」

「し、下?え??」


 茂みに踏み込んだ足を戻してマジマジと

足を突っ込んだ場所を覗き込むとイモムシのような体に

ムカデの頭と足を付けたような奇妙な虫が存在していた。


「わぁ・・・キショイ虫がいる・・・」

「誰がキショイって?歪な耳と尻尾付けてる

お前ほどじゃねぇよギキキキ・・・」


「しゃ、喋った、虫が・・・」

「ここでこのフォクセクト様に遭ったのが

運の尽きだったなぁ・・・

ギキキキ!!その体俺様が貰ってやるぜぇ!!」


 フォクセクトと名乗った虫がコンの顏目掛けて飛びかかった。


「ポォン!!」

「ワブっ!!」


 コンは咄嗟に植物のツルをを虫かごに変化させて

フォクセクトをあっさり捉えた。


「かぁちゃん!キショイの捕まえた!!」

「キショイって言うなクソ虫が!!

殺す!ぜってぇ殺す!出せ屑がぁ!!」

「うわぁ、この見た目で口悪いって嫌われるよ?」

「うっせぇな!?人気なんか要らねぇよ!体よこせ

頭の中お花畑が!!」


「あら、その虫!それが目的の虫よ!ようやく見つかったのね!」

「あぁ!?なんだぁ?この俺様を探していたような

口ぶりじゃねぇか!このフォクセクト様がそんなに有名だとはなぁ!!

ギキキキ!!」

「あたしの中にこれが居るんだ・・・なんかヤダ」

「コンちゃんの中のは喋らないわ

それに死んでるから大丈夫よ」

「よかった・・・」

「なんだ、お前もう半魔なのかチッ使えねぇ

その辺のウサギのフンのほうがまだ価値があらぁ」

「ムッキー!なんかムカツク!!」


ブンブンブンブン!!


「うおぉぉぉ!!やめろ!カゴをブン回すなぁ!!」

「ていうか、喋れるのねぇこの虫」

「ギキキキ!俺様はエリートなのさ!

言葉を操るヤツは極少数だ!」

「どうでもいい、とーちゃーん!見っけた!帰ろう!!」

「どうでもいいだと!?価値のわからねぇクソ虫がっ!死ね!

死ね死ね死ね死ね!!」

「死なないも~ん虫はアンタじゃん!ベぇ~っだ!!」

「うわぁ!やめろって!カゴ揺するな!!」

「よかった!虫みつかったんだな!」


 タワケがやってきた。


「俺を開放しろぉぉ!まとめて殺してやる!」

「うお!?喋った!?」

「いいから行きましょ、話しても時間の無駄よ」

「・・・おう!いくぞ!!」


 おい、なんで今あの金毛の狐は俺様をチラ見した?

なんか同族に憐みの目を向けるときのような視線を感じたぞ。




―― 翌日の夕方 病院 ――


「源太のジジイさん、また入院したんだ・・・」

「うっせぇ好きで入院したわけじゃねぇわ」

「俺より晴斗に会ってやれ、輝也もいる」

「うん!またね」


 源太の病室を出て晴斗の病室へたどり着く。


「輝也さん!虫、見つけ・・・」

「やぁ、見つかったんだな、よかったよ」

「輝也さん手が・・・」


 晴斗のベッドの隣に右手を切断された

輝也が居た。


「あぁ、悪党に切り落とされてしまってね」

「ダイジョブなの!?」

「痛みはあるが大丈夫だ、フフ

君に言ってもわからないだろうが会見を開いて

『これで私も障害者にさらに寄り添った街づくりが出来る』

と言ったら称賛を浴びてね・・・少しは晴斗に誇れるよ」

「よかったね!!じゃあ、晴斗に直接話してあげて!」


 コンが虫かごからフォクセクトを取り出す。

「テメェ離せ!クソ虫が!!」

「だから虫はアンタ!!それよりお願いだよ」

「ケ、まぁいいぜ?体の主導権半分貰えるなら構わねぇ」

「それは晴斗と相談して」

「ギキキキ、楽しみだよ!」

「話す虫だと・・・?」

「捕まえてからずっと説得してたんだよ!

苦労したんだから!晴斗、マスク外すよ」


 コンが晴斗のマスクを外して口元にフォクセクトを落した。


「じゃあ、行ってくるぜぇ?」

「うん」

「ギキキキ!」


 フォクセクトがしゅるりと晴斗の口の中に入っていった。


 ドクン

 

 晴斗の目が大きく見開く。


「あぁぁぁぁああが!うがあああ!!」


 胸を両手で押さえつけてベッドの上でもがき苦しみ始めた。


「「晴斗!!」」


 コンと輝也の声が重なる。

コンが手を伸ばすと晴斗がその手を弾き飛ばす。


「あぁぁあ!うっ・・・うぅぅぅう・・・」


 晴斗の体の動きが小さくなり、やがて完全に体の動きが

止まった。


「晴斗?ねぇ、晴斗・・・?」

「晴斗!大丈夫か!!晴斗!晴斗!!」


 二人の呼びかけに晴斗は答えない。

二人とも悪い考えがよぎってしまう。


「晴斗・・・?」


 コンが晴斗の体を揺する。


「!」


 晴斗の手がピクリと動いた。

次に目がゆっくりと開く。


「コンちゃん・・・ここは?」

「晴斗!良かった!!」


 コンが晴斗に抱き付いた。


「いたたた!!痛い!痛いよコンちゃん!!」

「奇跡・・・なのか」


 輝也の目から涙が零れ落ちる。


「アハハ、父さん泣いてる!

オニの目にも涙ってやつだね!」

「なんとでも言え・・・親としてこれほど嬉しいことはない!」


 ボロボロと大粒の涙を零す輝也を見て

あたしは、ふと両親の顏が浮かんだ、あたしが居なくなったら

きっとこうやって泣いてくれるんだろうなって思った。


「ねぇ晴斗!なにかお願いない?なんでも聞いてあげるよ!」

「お願い・・・そうだなぁ・・・じゃあ」

「なにナニ!?」

「死んでくれよなァ!!」


 晴斗の腕がコンの胸部を貫通し背中から腕が突き出る。

その状態のまま晴斗は立ち上がりコンを

貫いている腕をさらに上に掲げた。

 コンの血液が全開の蛇口のようにドボドボ流れ出て

白いシーツはあっと言う間に血に染まりあがる。


「な・・・んで・・・?は・・る・・・」


 コンが自分を貫く腕を力なく掴む。


「晴斗ぉ?知らねぇなぁ!!俺様はの名はフォクセクト!!

ギキキキ!!騙されたかぁ!?えぇオイ!?俺様ってば

演技派だぜぇ!!!」


 フォクセクトの手を掴むコンの力が

みるみる弱くなっていく、苦悶に歪んだ表情の

焦点はもう定まっていない。


「やめろ晴斗!」

「あぁん?晴斗じゃねぇって・・・」


 フォクセクトがコンが刺さっている腕を動かした。


「言ってんだろクソ虫がっ!!」


 輝也に向けてコンを投げつけたのだ。


「うぐっ!コン!大丈夫か!しっかりしろ!」


 手が片方ないことなど忘れて両手でコンの体を支える。

 一目でわかってしまうコンの状態、貫かれたのは

心臓の位置だった。助かる見込みなんてない

素人目でもそれが分かってしまう、それほどの状態だったのだ。

 消えそうな呼吸をしているこの状態が既に奇跡レベルである。


「死ぬな!コン!!コン!!!」

「次はお前だぜぇ?クソ虫その2」


 フォクセクトが輝也の心臓も潰そうと腕に力を込める。

「いいボディー産んでくれて感謝するぜ?あばよ!!」

「狐火!」


 小さい火球がフォクセクトの頭に直撃した。


「アッチィ!!なんだ!?」

「化け物の相手は化け物だよ、間違えないで」


 フォクセクトが振り返るとコンが立っている。


「!? どういうこった!なんでピンピンしてやがる!」

「幻術よ」


 コンの背後から着物姿の女性が現れる。


「幻術だと!?」


 フォクセクトの視界が真っ暗になり

視認できるのがコンと後ろの女性だけになる。

 戸惑う隙を狙いさらに狐火をお見舞いし

窓からフォクセクトがを突き落とす。


「晴斗・・・!」


 息子が焼かれるその光景を見ていた輝也は

辛そうな顏をしていた。


「輝也さん、ごめんなさい・・・」

「・・・いや、晴斗を・・・止めてくれ」


 無言で頷いたコンが窓から外に飛び出し

後にウツケが続く。


「山に誘導するわよ!」

「うん!」


 コンとウツケが山へ向かって走り出した、フォクセクトは

コンとウツケしか視認できない状態なので二人を追う以外の

選択肢はない。


「待てクソ虫共っ!!図に乗るんじゃねぇ!!」


 起き上がりダッシュして二人を追うが

謎の音がする。


 パッパー!!

晴斗の記憶が音の正体を知っていた。

 キィィィィィィ!

この音もどういうものか晴斗の記憶が知っている。

コレは


 ドガッシャァン!!


「晴斗!」


 大型トラックに轢かれたのを目にして

ついコンが晴斗の名を呼ぶ。


「コンちゃん、作戦通りよ!今のうちに距離を離すわ!」

「・・・ッ!」


 なりふり構ってられないわ!


「変化!」


 ウツケの姿が大きい狐の姿に変わる。


「乗りなさい!!」


 コクンと頷くとウツケの背中に飛び乗った。


 これで晴斗とはお別れをすることになる。

だったら初めて晴斗に逢った時の姿がいい

自分が好きな姿で大好きな友達を送ろう。


「んっ、ポォン!!」


 コンの服装が変化した。



「・・・クソ虫がぁッ!!!」


 何事もなかったかのように起き上がりフォクセクトは

コンたちの追跡を再開する。


「うわぁ!なんだ!?あの狐は!!!」

「上に何か乗ってるぞ!!」

「ヤダ、マジ怖いんだけど!!」


 通行人がウツケの姿を見て悲鳴を上げる。


「かぁちゃん!他のヒトに幻術掛けないの!?」

「そんな余裕ないわ!」

「ギキキキ!!遅ぇ!遅ぇ!!」

「も、もう追いついてきた!?」

「この体はサイッコーだぜぇ!エリートの

俺様の為の体だぁ!!」

「狐火!!」

「甘ぇ!!」

 

 コンの狐火をジャンプして回避させた

ところでウツケがバックステップから一回転しての

尻尾で叩き落としを決める。


「グゲェっ!姑息なクソ虫だなぁ!!

そんなに殺されるのは嫌かい?ギキ(キキ・・・)狐火!」

「ぶわぁぁ!?!アチィ!虫螻(むしけら)が調子に乗るなぁ!!」


 まずい、晴斗は魔力の適正がとても高かった。

あの虫もエリートというのも嘘ではなさそう、つまり

非常に相性のいい組み合わせ・・・!

 このままタワケと合流しても勝ち目は薄いかもしれない

なんせ全力で戦ったのは1000年以上前、ブランクは否めない。

 残された手段は・・・アレだけ


「山に入るわ!掴まってなさい!!」

「うん!」

「逃がさねぇぜぇ!」


 直後にフォクセクトの視界が正常に戻る

唐突だったので一瞬の硬直が生まれた。


「それ俺のセリフだったりしてな」


 フォクセクトの背後からタワケが奇襲を仕掛けてきた。


「オラァ!!」


 フォクセクトの背中を引き裂き頭にかぶりついて地面に叩きつける

間髪入れずに5本の尻尾で両腕と両足を貫き地面に固定し

5本目は頭部を貫通させた。

さらに爪によるラッシュを続ける。


 その迫力と姿にコンは父に対して初めて恐怖を覚えた。

この恐怖こそがタワケとウツケが山で

暮らし始めるきっかけの一つなのだ。


「調子に・・・乗るなぁこのゴミ虫がぁぁぁ!!」

「!?」


 フォクセクトの体から発生した突風がタワケの尻尾を

全て切断したうえに体を遥か上空に吹き飛ばす。


「消え失せろ!クソ虫!!」


 フォクセクトがタワケに向けて両腕から放った炎は日が暮れた町を

10秒以上にわたり昼間以上の明るさで照らし出した。


「とーちゃん!そんな・・・!!」

「なによ・・・この桁外れの魔力・・・」

「チッまだ魔力の出力が弱ぇな・・・」


 フォクセクトがウツケをジロリと睨む。

その体にウツケが与えた傷は全て塞がっていた。


 ゾッとして身の毛がよだつ

倒すなら、体がまだ馴染んでいない今が最高のチャンス

だが束になって戦った所で勝ち目は0だ。


「それにしても俺様の属性は炎と風かよ、炎はいいとして

風属性って最弱属性じゃねぇか・・・まぁ虫螻相手には魔力も

要らないかもなぁ」


 フォクセクトがウツケに向かって飛びかかる体勢に入る。

避けなければならないが体が動かない。


「これは・・・!?」


 風がウツケの体に纏わりついて体を拘束しているのだ。


「これで二匹目だ」

「ポォォォン!!」


 ウツケの目の前に岩の柱が生えてフォクセクトを打ち上げる。


「グギ!余計なことしやがって!!延命にもなりゃしねぇぜぇ

消し炭になりやがれ!!」


「俺はまだ死んでねぇぞ!!魔族の生命力舐めんな!!

出来立てホヤホヤが!!」


 5本の尻尾を逆立ててながら

 フォクセクトの頭上から爪を振り下ろす。


「げびゅっ!」


フォクセクトの首を完全に切断し、血液が噴水のように飛び散り

錆びの匂いを辺りに振りまく。


「おやおや、クビが取れちまった」


 地面に転げ落ちた頭がまだ喋っていた。

その光景にコンは吐き気が込み上げてきてしまう。


「うっ、げぇ・・・っオエッ・・・!!」

「コンちゃん!」

「いったん引くぞ!!俺達じゃ勝てない!!」

「・・・鬼ごっこが楽しいのかい?」


 自分の頭を拾い上げて首に乗せるとたちまちクビと頭部が

くっついた。


「10まで数えてやるよ!精々に逃げてみろぉ!ギキキキ!!」


「コン!出来るだけ大きい岩を作ってくれ!!」

「う、うん・・・ポォン!」

「よし!みんな乗れ!!」

「タワケ?何する気!?」

「空飛んで一気に距離を離す!!」

「わかったわ!変化、大縄!」

「うわ!」


太い縄に変化したウツケがコンを岩に縛り付けた。


「乗ったな!最大火力狐火!!」


 凄まじい爆音で大岩が吹っ飛ばされる。


「わあぁぁぁ!目が回るぅぅぅ!!!」


 岩の飛ぶ勢いが落ちるのを待ってから

ウツケは変化を解除し尻尾でコンを包み込む。

タワケはそのウツケの首に嚙みつき一気に目的地へ

大ジャンプをしてみせる。


「華麗なる着・・・ブポォ!!」


 見事な不時着を決めて目指していたお稲荷様の

山の尻尾までたどり着いた。


「護衛頼むわよタワケ!!」

「おう!!どの位だ!?」

「5分でやってみせるわ!!」

「・・・言うねぇ!任せとけ!!」

「何?何をするの?」

「ウツケのそばに居ろ」

「・・・」


 ウツケが3本の尻尾で山の尻尾に触れると

バチバチとウツケの体が光り始めた。


「かぁちゃん!?ダイジョブ!?」

「平気よ、ただ・・・集中させて・・・!」


 暗に話しかけるなという事だ

苦しそうなウツケを黙って見守ることしかできない。




「あのクソ虫共はどこに行ったんだ?

これじゃあ鬼ごっこじゃなくてかくれんぼだぜぇ?

ったくメンドクセェ!鬼ごっこは晴斗といかうゴキブリの

憧れの遊びだったんだぜぇ!?付き合ってくれよぉ!!

見つけたら即殺すけどなぁ、ギキキキ!!」


 ふと遠くを見ると光が見えた、ちかちかと弱い光だ。

あそこに違いない、何か作戦があってもことだろうが

今の俺様は無敵!問題などない!!!


「みぃぃぃつけたぁ♪」



 

―― 経過時間 3分 ――


「来たな・・・」

「とーちゃん・・・ダイジョブなの?」

「あぁ、任せろ!絶対にウツケのそばから離れるな!」

「よぉ、ゴミ虫共!こんな所に隠れてたのかよ?」

「そうだ、罠を仕掛けてた」

「・・・わざわざバラすとは、俺様に通じるとでも?」

「ああ、絶対に効くね!!」

「面白れぇ、試してやん・・・」


 フォクセクトのが足を踏み込んだ瞬間ロープが現れて

フォクセクトを逆さづりにする。

 間を開けずにコンとタワケが最大火力の

狐火をお見舞いする。


「ぎゃははは!どうだ!効いたろぉ!その罠の

有効性は俺が身をもって証明済みだぁぁ!!」

「殺す!!虫螻がよぉ!!」


 地面にボトリと落ちたフォクセクトがタワケに向けて炎を放つ。


「まとめてポォン!!」


 コンが所持していた葉っぱ約30枚全てまとめて岩の壁に変化させて

フォクセクトの炎を凌ぐ。


「ハァ!ハァ!・・・ひゅー・・・ひゅー・・・」

「なんだ、その程度で魔力を使い切っちまったのか?

弱っちぃなぁ!ギキキキ!!」



 フォクセクトの背後からタワケが尻尾で突き刺そうとする。


「同じような手しか使えねぇのかよゴミ虫」

「ぐおぉぉ!?」


 タワケは一瞬何が起きたか理解できなかった。

スローモーションになった視界で自分の

下半身が空中にあるのを認識した。

 また風で体を千切られたのだ。

 辛うじて生きてはいるがもうまともに

戦う力は残されていない。

 あらゆる条件がフォクセクトの優位にある。


「ギキキキ!!いいねぇ!無様に這いつくばる虫螻は!

よぉ~っく見てろぉ?お前の娘が俺に殺される瞬間を」


「間に合え・・・あと少し・・・間に合えぇぇぇ!!!」

「お前今は動けないんだな?何してるか知らねぇけど無駄だぜ?」

「あ゛っ・・・う・・・」


 力を使い切ってまともに動けないコンの首を鷲掴みにして持ち上げる。


「この感覚!!今度は幻覚じゃねぇなぁ!」

「やめて!!」

「無理無理、こんな楽しいこと止める訳ねぇじゃんかギキキキ!!」


 コンの首を掴む手に力を入れる。


「ゲボッ・・・あっぁ・ぅ・・」

「コンちゃん!!!」

「・・・え・・・・て・・・・・」

「あ?なんだ??」

「は・・・と・・・・て」

「んん?次聞き取れなかったら絞め殺す」

「は・・・はると・・を・・・・か・・えし・・・て」


 コンの顏には血に交じって涙が流れていた。


「ギキキキ!!!最高だぁぁぁ!!絶望して泣いてる顏って

最高の愉悦じゃねぇかぁ!!いいぞいいぞ!その顔のまま死ねっ!!」

「コ・・・ン・・!」

「コンちゃん!!」


 ダメだ間に合わない!後少しなのに・・・!


 前触れなく淡いく青い光が発生し

コンとフォクセクトを包む。


「!?」


 腕の力が抜けていく!?

なんだ!?あの銀の虫螻の仕業か!?

一体何をしやがった!?


「コンんちゃん・・・僕を・・・今のうちに・・・」


 ん!?俺様は何を言っている!?なんだ!何が起きてる!?


「晴斗、晴斗なの?」

「うん、少しだけ動きを止めておく、だから今のうちに僕を終わらせて」

「やだ・・・!ヤダよ!!」


 ふざけるな!!ゴキブリ風情が俺の支配権を奪うだと!?

あり得ねぇ!!何がどうなってやがる!?俺様の体を返せ!!

終わらせねぇ!!こんな所で俺様は終わらねぇ!!


 終わりなんだよ、皆を傷つけるなら僕は死を選ぶ

僕の体だ、僕の心だ、もう好きにはさせない。


 なんだと!?この俺様をコケにするなぁぁぁ!!


「死ねぇ!!クソ虫ぃぃぃぃ!!」

「間に合った!!でぇぇぇい!!」


 ウツケが晴斗に体当たりをして突き飛ばした。


「ぐお!!悪あがきをぉ!!」


 フォクセクトがすぐに起き上がりウツケに向かって突撃するが

半透明の膜のようなものに阻まれた。


「なんだ!これは!!」

「結界よ、外の魔族を絶対に通さないノアの結界

全力で効果範囲を縮めていたのよ」

「ふざけるなぁ!!ゴミ虫みてぇなことしやがってぇ!!

何が結界だ!破壊してやる!!」


 フォクセクトが炎をぶつけても風で破壊しようとしても

結界はビクともしなかった。


「結界を縮めるのには結構神経を使うのよ、

この国全体を覆うのが基本範囲だからね

だから少し気を緩めるだけで元の大きさに戻ろうとするわ」

「クソクソクソクソクソ!!!クソぉぉぉぉ!!」

「アナタを倒すことはできないけど・・・これが今の最善手

さようなら」

「まって!」

「コンちゃん?」


 コンが結界に近づいていく。


「行くな・・・コン!」

「ダメよ!結界から出たらもう二度と入れないわ!!」

「ダイジョブ、出ないよ」

「テメェ!煽ってんのかぁ!?」

「晴斗・・・さっきの光、覚えてる?」

「知らねぇよ!!」

「お前には聞いてない、すっこんでろ」

「煽りじゃ・・・グ・・また・・・!?」


「・・・覚えてるよ、優しいあの光は忘れない」

「うん、この光」

 

 コンが懐から鱗のお守りを取り出す。


「いいお守りだね、大切にして」


「晴斗あたしね、もっと遊ぶことにした

美味しいもの食べて、作って、ヒトの友達も沢山作る

色んな事を楽しむよ、居なくなる晴斗の分も」


「・・・うん、楽しんでね」


「いっぱい覚えるよ、楽しいこと。

いっぱい覚える、だからね、あたしいつか

晴斗を迎えに行くから、そうしたら日が暮れるまで

沢山、たーっくさん遊ぼう!今までできなかった事

いっぱいしよう!!」


「コンちゃん・・・」


 コンが結界から手を出し晴斗の首にお守りを下げる。


「これは晴斗に貸してあげる!大切なお守りだから!

絶対に返してもらいにいくから・・・

大切に持っててね?」


「ありがとう、コンちゃんに会えて僕は幸せかもしれない」

「あたしも!!」


「結界の維持が・・・限界っ・・・!!」


 コンが晴斗の手を繋ぐ。


「さよなら、コンちゃん」

「違うよ晴斗」


 涙でグジョグジョになった笑顔で最後の言葉を伝える。




 バイバイ、またね




 結界が手を繋ぐ二人を引き離した

とてつもない速度で元の大きさに戻っていく

晴斗の姿は直ぐに見えなくなってしまったがコンは日が昇るまで

晴斗が飛ばされた方向をじっと見つめていた。

 

 再会のその日を信じて。

実は晴斗は出すべきか出さなくていいか結構悩んだキャラクターでした。

出したら連載期間伸びること必須ですもん。


個人的に出してよかったと思うキャラになりましたね。

皆様からしたらどうかわかりませんが。


フォクセクトとの戦闘の有利不利は魔族の殺害方法が大きかったです。


魔力に命を依存している魔族、感情により作用が大きく変わる魔力


魔族に確実にダメージを与えるには「殺意」が重要です。

敵が晴斗の姿という事でコン達は「殺意」を十分に持てませんでしたが

フォクセクトはお構いなしで殺す気満々。

基本スペックの差よりもこっちの方が重要です。

どちらもフォクセクトのが上でしたが。


次回「狐につつまれて27話」「今話が不評だったら儂もうダメだわ、あ、あとコンが途中嘔吐しましたね、あれツチノコでした」

みんな、あと少しで終わりだ!絶対に見ないでくれよな!!


































































 結界に張り付いている晴斗、結界の戻る勢いが凄まじいのでなにもできない


「ん?なんか下から登ってくる??」


 茶色い毛玉がよじよじとこちらに向かって登ってくる。

その毛玉は晴斗の真横でピタっと止まるとこちらに顔を向けた。


「キャウキャウキャウンキャウ?」(よ!竜の噂知らない?)

「え・・・?犬・・・ゴメン、チャウチャウは知らない」

「ぺッ!」

「えぇ!?態度悪い!!君も魔族だったりするんだよね?」

「キャウキャウ!」(うるせぇ役立たず!!)

「やっぱり!魔族なんだ!!ねぇ一緒に冒険し・・・」


結界が元の位置に到達し結界の膨張がビタっと止まったため

1人と一匹は全く別の方角へと飛ばされていった・・・

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