最終章:混沌と秩序②
噴水広場にて、エルトルージェに振り下ろされようとしていた大鎌を辛うじて止めて、アリシアを押し返した龍彦はその場で刀を構え直す。
「ギリギリセーフだったな……!」
「……銀狼種であるその女を助けるとは……お前も随分と物好きな性格をしている」
「俺もゴウトさんに触り程度しか聞いてないから、いまいち銀狼種って言うのが何かよく知らない……でもお前を斬ってエルトルージェを救う、俺がこれからする事はそれだけだ」
「可愛い孫娘が故に真実を話せなかったのか……――まぁいい、僕が冥土の土産として教えてやるとしよう。人狼族に伝えられし忌子……銀狼種の事を」
「や、やめて……タツヒコには、言わないで……!」
地に伏し起き上がろうとしていたエルトルージェが悲願する。しかしアリシアはそんな彼女の言葉に耳を傾ける様子もなく、静かに語り始める。
――人狼族にはかつて伝説と呼ばれる者がいた。
その者は月の様に綺麗な銀色の体毛に血の様に赤い瞳を宿し、天才を形にしたとまで言われる程の武術の才に溢れ同時に優れた魔力を持っていた。
しかし強大すぎる力は時として人を堕落させ闇へと染めていく。
数多の戦いで勝利をその手に掴み周囲から最強と謳われていたその者の心に生まれた闇は、最強である事を誇示し続ける為にも多くの敵を殺し続けなくてはならないと言う狂気へと陥らせた。
狂気に支配されたその者は次々と同族を殺し続けた。
ただ最強と言う地位から堕ちる事への恐れから及んだ虐殺行為によって何人、何十人と言う犠牲者が生まれた。その中には無力な女子供ですら含まれている。
やがて白銀の厄災と呼ばれたその人狼は同族の手によって葬られ、人狼族の中で一つの掟が作り出される。
また新たな白銀の厄災を生み出さない為に、生まれてきた子供が銀髪で赤い瞳を宿した場合その場でその命を断つ。それが人狼族の掟であり、その子供は銀狼種と呼ばれるようになった。
そして現在、何の因果かエルトルージェが銀狼種としてこの世に生を受けた――。
「これが銀狼種と呼ばれる者達だ。人狼族だけでなく他種族からも厄災を齎す存在として――」
「第一回好きな人に隠し事を告白しよう大会~!!」
アリシアの言葉を、龍彦は拍手と共に遮った。突然の行動にアリシア、そして振り返れば鳩が豆鉄砲を食ったような顔を浮かべているエルトルージェ。
「……何のつもりだ?」
「ちょ、ちょっとアンタいきなり何言い出してんのよ……!」
「エルトルージェ。俺はお前に一目惚れしたって言ったけど、実はこの世界に来た時からじゃないんだ」
そんな二人を他所に龍彦は語る。
この世界が自分にとって架空の世界……『WILD BLOOD FIGHTER』と言う人間の想像によって生み出された世界である事。その物語を通じてエルトルージェ・ヴォーダンと出会い、そしてその時から初恋の人として想い続けてきた事、亜人達に異常なまでに好意を寄せられるのは全てカオスの支配の魔力がこの身体に宿っているからである事、全てを龍彦はエルトルージェへと告げた。
「これが……俺の隠し事だ。試合前に余計な混乱とかさせたくなかったからずっと黙ってた――俺の世界でエルトルージェは銀狼種とは一切書かれていない、けどこれだけはハッキリと言っておく……俺はエルトルージェ・ヴォーダンを心から愛している、この言葉に嘘偽りはない!」
「お前は……」
「エルトルージェにとって銀狼種がどれだけのトラウマになっているのかよくわかったからこそ、俺は一緒に乗り越え支えていきたい……だから俺はここにいるんだよ」
本当に好きだと思える相手なら周囲の評価など気にならない。それこそ臭い台詞ではあるが愛の力で二人で乗り越え認めさせればいい。
銀狼種だろうとなんであろうとエルトルージェ・ヴォーダンと言う一人の女性を心から愛している、この気持ちを偽って生きるなど龍彦の選択肢の中には最初から存在しない。
背を向けている為彼女がどんな表情を浮かべているか、龍彦は知り得ない。
常人なら自分がゲームと言う創作世界の中に登場する人物として描かれていると聞かされて落ち着いてはいられないだろう。
ならば今エルトルージェは酷く取り乱しているか――その答えは、否。
振り返り視界の映ったのは、涙を流している彼女の姿。悲哀や絶望と言った悲しい色は一切していない。
「アンタ……本当に馬鹿よ。呆れを通り越して驚くぐらいの大馬鹿よ……」
「馬鹿だっていい。お前と……エルトルージェと一緒にいられるのなら、俺は馬鹿でもなんでもなってやる!」
地を蹴り上げる。
双極之太刀――陽之太刀を発動された事で龍彦の刀が純白に染め上げられていく。
迎え撃つはアリシアの大鎌。白と黒の刃が中空で交差する。
耳をつんざくような金属音が反響し、刃を交えた事により生じた衝撃が突風と化し草木を激しく揺さぶり、地面に亀裂を走らせた。
「エルトルージェに怪我負わせた罪、しっかりと償ってもらうぞ!」
「出来るものならばな」
噴水広場で奏でられる刃鳴の三重奏。白と黒の閃光が忙しくなく空を駆け抜けては正面から衝突し火花を激しく飛び散らせる。
「どうしたアリシア、動きが鈍いぞ。近接戦闘は不慣れか?」
「くっ……!」
アリシアの武器は長柄武器、攻撃範囲が広いと言う利点がある反面間合いに入られると小回りが利かなくなる欠点を持つ。彼女はそれを異形の左腕と言う副武装で欠点を補っていた。
刀を受け止めても傷一つつかない程の強度を誇り、鋭い爪は石柱をバターのように切り裂く鋭利さを兼ね備えている。大鎌と違い小回りも効き武装として扱うのに申し分ない。
大鎌と爪の二刀流。対して龍彦は刀一本で応戦する。
二刀流のメリットは“左右による連続攻撃が可能となる”事と“片方で防御をしもう片方で攻撃が出来ると言う攻防一体戦術が可能”と言う事にある。
そんな二刀を用いて敵を倒す剣術と言う姿にロマン溢れる、格好良いと言う理由により二次元でも双剣使いのキャラが登場する事は今では珍しい事ではない。
しかし二刀流とは、実際にはデメリットが多く実戦向きではない術技でもあった。
まず左右に武器を持つと言う事から既にその者はデメリットを課せられる。
刀の重量は凡そ900gから1.5kg、両手で使う事を想定された野太刀ともなると重量は更に跳ね上がる。それを片手ずつ保持し、片手で両手で振るった時と同じ威力を出せる腕力がどうしても必要となってしまう。
片手で敵の攻撃を受け止め、もう片方で攻撃する攻防一体戦術を実行するにしても、やはり腕力は必要だ。
では比較的に軽い小太刀や脇差と言った得物を振るえばいいか、と言う訳でもない。
左右で剣を振るうと言う事は、どちらとも利き手と同じ様に扱えなければならない事を意味している。大抵がどちらかの手が利き腕としているが、両手が利き腕と言う人間はそういない。それ故に両方の剣を意識するあまり中途半端になってしまう。
つまり以上からして二刀流は実戦では不向き、両手で剣を持って振るって闘った方が効率が良い――これが結論である。
しかし、世界にはその結論を根本から崩す者が存在する。
剣術であれ何であれ、人間誰しも利き腕がある。
だが希に両方の腕を利き腕として自在に使える人間がいる。それこそがかの二天一流の創始者で日本最強と謳われた有名な剣豪、宮本武蔵だ。
アリシアは宮本武蔵でもなければ、彼のようにもなれない。
その細腕の何処に隠されているのか、身の丈と同等はあろう大鎌を片手で扱える筋力を有していたとしても肝心な技術がそれに追いついていない。
結果防御する事に意識を捕らわれ動きも単純になりがちになってしまう。
過去こうも接近される事を経験していなかったのか。今の彼女の動きはその場凌ぎの咄嗟の行動のように龍彦の目には映り、だからこそ勝機は今しかないと更に攻撃の手を加える。
「図に……図に乗るなよ人間風情が!」
瞬間、アリシアの魔力が爆ぜた。
「目障りだ。そんなにそこの銀狼種を愛していると言うのなら、その女共々この世から跡形もなく消滅しろ」
スカアハをも超える圧倒的で荒々しい闇の波動。その魔力が異形の左腕へと収束され始めていく。言葉以上に彼女はこの町もろとも消し飛ばす魔法を発動しようとしている。
龍彦は陰之太刀へと切り替える。
どれだけの魔力が込められた魔法であっても陰之太刀はそれを相殺する効果を持つ。自分一人だけならばまだしも、未だ回復に至らず地に伏しているエルトルージェを守る為にはここは防御に徹するしかない。
「来いアリシア!」
「滅びろ――炎魔の制裁!!」
限界まで指を開いた異形の左手より放たれる一切の輝きを放たない黒炎。
この世の全てを燃やし尽くさんとする勢いで黒炎が通り過ぎた地面は大きく燃え抉れている。それだけの火力を浴びれば骨すらも残らず、また相克関係にある水魔法も期待は出来ない。
アリシアの炎はこの世に現存しない力。
現存する四属性では黒炎に対抗する事は不可能。
目には目を。現存しない力ならば此方も同じく現存しない力を持つ異能で迎え撃てばいい。
龍彦は漆黒に染め上げた刀を正眼から上段の構えに取り、襲い掛かってくる黒炎に目掛けて唐竹に打ち込んだ。
相殺された事で両断される黒炎。その切れ目から大鎌を振り上げたアリシアが弾丸の如く間合いを詰めてくる。
炎魔の制裁は囮。エルトルージェを守る為に陰之太刀を使って防御をする事をアリシアは予測していた。
そして予測通り陰之太刀で炎魔の制裁を相殺した、その一瞬の隙を狙って彼女は攻撃を仕掛けてくる。今から陽之太刀に切り替えて攻撃に転じ迎撃する事は不可能。仮に振り下ろした刃を翻し逆風に振るっても陰之太刀に物理攻撃力はない――そう判断し己の勝利を確信しただろう、アリシアの口角が釣り上がる。
だが、それは大きな誤りである事を教えなくてはならない。
前に出ている足の踵を踏み鳴らす。その動作に応じて龍彦の足元より氷の柱が勢いよく天へと昇った。槍のように鋭く尖った先端が狙うのは今正に大鎌を振るわんとしているアリシアの心臓。
「なっ!?」
目を見開くアリシア。彼女からすれば異能者が魔法を使うと言う現象は概念そのものを覆す出来事に違いない。しかし攻撃から素早く防御に転じたその即応能力は素直に流石であると認めるべきである。
だが、それは自ら隙を生み出したのも同じ。
龍彦にとって氷柱による攻撃は本命ではない。アリシアの意表を突き体勢を崩す、これこそが真の狙いであった。そのまま心臓を貫けば良し、逆に防がれたとしても脳裏に描く戦況に揺ぎはない。
大鎌の柄を盾にする事で直撃を免れたアリシア。隙を作り出すと言う役割を見事に果たした氷柱ごと、龍彦は刃を素早く翻し一気に斬り上げる。
相殺された氷柱と共に斬、と両断されたアリシアの右腕が宙へと舞う。
視界いっぱいに映る唖然とした表情を浮かべるアリシアに、龍彦は再度刃を翻し追撃を仕掛ける。後一寸振り下ろせば刃が届く、がそれよりも早く異形の左腕によって防がれた。
舌打ちを溢し柄から離した左手で龍彦は拳打を繰り出す。
無論ただの拳打ではない。鋼鉄並みの強度を誇る左腕を破壊する為に繰り出したその一撃は、第一試合にてレオとの戦いでも使用した水勁。
「あの拳打か!」
アリシアが大きく飛び退く。またも寸のところで躱され、放った拳打は虚しく空を穿った。
「くそっ……後少しだったのに!」
「なっ……何故だ!? お前は異能者ではないのか!?」
「異能者であり一応魔法も使えるんだよ実は。この世界じゃどっちか一つしか使えないみたいだけどな」
「あ、ありえない……異能者が魔法をも、それも詠唱もなしに発現するなどありえない。ましてや氷の魔法を使うなど僕はそんな魔法知らない!!」
「でも現実に今、お前の目の前にいるだろ?」
「……何をした。お前は何をしたんだ!?」
「……やれやれ。まぁ銀狼種についても教えてもらった事だ、そのお礼として教えてやるよ――まず俺は魔法も使える、そして属性は水だ」
「み、水だと!?」
信じられないと言いたげな眼差しを向けるアリシア。
水の術者は相手を破壊もしくは拘束する事を主体としている。その水から如何にして氷を作り出したのか、この原理を知らないアリシアの脳裏には疑問符が大量に浮かんでいるに違いない。
別段龍彦は何も変わった事はしていない。学校の理科と言う授業を受けているのならば、誰でも同じ芸当が出来る事をしたまで。
水が凍るのは低温になる事で原子の振動運動が弱まり結合するからである。その原理を魔法と言う方法で実現させた、それだけの事である。
水勁も水が非常に温度の高い物質と接触する事により気化されて発生する水蒸気爆発を用いただけに過ぎない。相手に拳が触れる瞬間、水で拳を覆うと同時に一瞬にして水蒸気と変化させ水蒸気爆発を引き起こす。
魔力と言う非科学的であり、科学に匹敵するエネルギーを保有し水と言う属性を司るからこそ可能とする芸当なのだ。
「ば、馬鹿な……そんな事が、可能だとは……!」
「水にも色んな使い方があるんだよ。それともう一つ、これは冥土の土産として教えてやる――お前は陰之太刀……漆黒の刀の能力は相手の魔法を相殺するけど攻撃力はない、そう判断しただろ?」
アリシアは答えない。しかしその沈黙は肯定しているも同じ。
龍彦は続けて語る。
「確かにあの試合を観ていた人達からすればそう思っても仕方がない――でもそれはお前らの勝手な解釈。実際は陽之太刀でも陰之太刀でも斬る事は出来るんだ」
「……ッ!」
「俺の双極之太刀は、人や亜人を斬らない為の異能なんだ。純白……陽之太刀は相手に斬ると言ったダメージを肉体に具現化させない、わかりやすく言えば武術大会で使われているリアルラに近い効果を発揮する。逆にそれ以外……人に仇なす魔物を倒し魔力を相殺する効果を兼ね備えているのが陰之太刀だ」
「ひ、人や亜人を斬らない為の異能だと……? そんな事をして、何の意味がある?」
「俺はこの世界に来てもっと色んな相手と戦ってみたいと言う強い思いに駆られるようになった。でも剣士であり刀を振るう以上、下手をすれば相手の命を奪ってしまう……そこで俺は人や亜人を殺さない為にこの双極之太刀と言う異能を手に入れた。誓約を破った時自分自身にそのダメージが返ってくるようにな」
双極之太刀の本来の能力を知ったアリシアは強く歯を食いしばる。自らの読みが外れた失態による後悔が色濃く顔に浮かべ、右腕を断たれた事への憎悪の中に疑問の色が彼女の瞳に宿る。
その疑問にも答える義務がある。
「さっき言った通り双極之太刀は人や亜人を殺さない為の異能、破れば俺自身に相手に与えたダメージと同じダメージが返ってくる――じゃあ何故アリシアの右腕を斬ったのに俺の右腕は飛んでないのか? アリシア……それはお前は魔物に近い存在だからだ」
双極之太刀を手に入れてから、スカアハの館で龍彦はある発見をする。
生命の波動、とも言うべきだろうか。魔物が放つ気と人間や亜人が放つ気とは大きく異なる。その気を感じ取った結果アリシアは魔物と同じ気を放つ存在として龍彦は認識した。陰之太刀で腕を斬っても己にそのダメージが反映されない事が動かぬ証拠である。
「魔物が相手なら容赦しない、エルトルージェを傷付けた分も合わせて……今この場で俺が引導を渡す!」
「くっ!」
アリシアの身体が黒炎に包み込まれる。
轟々と燃え盛る黒炎を陰之太刀で相殺しようにも、アリシアを守るように防壁としての役割を担う中で炎球を飛ばしてくる。命中率は安定せず無人と化した家や木々に直撃させては跡形もなく燃やし尽くしているが、間合いに入らせない為の牽制力が強い。
「くそっ! ローンとか残ってるのに全焼とかどれだけ絶望与えるのかわかってるのかアイツ!?」
「言ってる場合じゃないでしょ!」
龍彦はその場から動けず飛んでくる炎球をひたすら陰之太刀で斬り、エルトルージェを守っていた。
「……お前と言う存在はつくづく僕の斜め上を行く行動を見せてくれる。本来ならお前を殺し主の力を取り戻した上で封印を解き放ちこのエルデニアを血祭りにあげようとしていたが……どうやら計画を変更しなくてはならない」
「何をするつもりだ!」
「こうなればお前から直接僕の主の所に来てもらうとしよう」
アリシアが左腕を掲げる。伴い地面から黒紫に発光する小さな魔法陣が幾つも描かれ、その中から異形の魔物が次々と姿を現す。かつてスカアハの館にて操られたエルトルージェと共に襲撃してきた魔物だ。
以前の非ではない。百、二百を超える膨大な数が噴水広場へと姿を現した。
「こいつ……あの時の!」
「タツヒコ……僕を止めたくば、この町の最北端にある神殿に来い。このエルデニアが民の血で赤く染め上げられる様を見たくないのならばな」
黒炎が消え、同時にアリシアも噴水広場から姿を煙のように消した。
数分前の面影が何処にもない噴水広場に残された魔物達が一斉に街へと駆り出した。
道中視界に入った建物を破壊しながら彼らが目指す先に何があるのか。それは今エルデニアの住人だけでなく外部からも武術大会を観戦する為に訪れた来訪者達が集まっている闘技場である。
アリシアの魔物達は闘技場に集まっている人々を一気に抹殺しようとしている。それに気付いた龍彦は闘技場に向かう魔物達を阻止せんと斬り水勁で応戦するも、黒き濁流の如く魔物達は城下町を侵攻する彼らの勢いは収まる様子を見せない。
数が圧倒的に違うのだ。一人で解決出来るレベルではない。
「くそっ! 数が多過ぎる!」
一人、二人と倒されてもそれを瞬時に補うように魔法陣が地面に展開され新たな魔物を召喚される。
これではイタチごっこだ。龍彦は舌打ちを零す。
人間である以上体力も魔力にも限りがある。ここで無駄に時間と力を費やしていてはカオスの魂が封印された神殿で待つアリシアとの戦いにも大きく影響を及ぼす。
片腕を断ったとは言え相手が強大な存在である事には未だ揺るがず。万全の状態なくして勝てる相手ではない。
「どうすれば……!」
その時である。
「セイグリッド・グラディウス!!」
金色の獅子が、その顎を以て黒い濁流を遮断した。
魔物の大半が消失し、それにより闘技場を目指していた魔物達が歩みを止める。何事かと言った様子で辺りを見回す彼等に、今度は大量の矢が雨の如く降り注ぐ。
一体、また一体と穿たれた魔物達が消失する中、背後より近付いてくる大多数からなる統一された足音に龍彦は振り返る。若く勇ましき獅子と鎧兜で武装した騎士達が荒れ果てた城下町へと姿を現す。それはこの戦況を大きく変える為の一手となる援軍の到着であった。
「ここから先は我々が引き受ける!」
勇ましい声を張り上げるレオに、龍彦は嬉しそうに口元を緩めた。




