Part 3
ジェード帝国北西国境 2013年1月12日 02:18
「まだ幼い少女にして、あれほどの強大な獣を召喚できたとは…」エースはお世辞ではなく、複数のサーバントを召喚できるエイシールに感心していた。
「お願いだから話しかけないで…」タオ・リンは顔を赤らめ、そう呟き始めた。
エースは彼女の反応に戸惑った。称賛の言葉を聞いて、剣を振りかざして敵陣のど真ん中に突っ込んだ時とは、少し様子が違っていた。しかし、エースは思いもよらない形でその答えを受け取ることになるのだった。
ザシ
ザシ
エースは突然、横から放たれた攻撃を辛うじて受け流した。酸い天竜の紋章を持つヘルタディが、エースに襲い掛かってきたのだ。リンも驚き、即座に反応し、無理やり目を閉じて集中し始めた。リンが黙り始めた途端、先ほどエースに突進してきたヘルタディが、頭を掻きながら申し訳なさそうに身をよじった。エースは許しを請うかのように左手を振るしかなかった。
「前任者に教えてもらって以来、黄龍を召喚するのは初めてなんです」彼女は謝ろうとしながら、再び顔を赤らめた。
サーバントを召喚するには、味方を攻撃させないために集中力が必要だ。エイシールも同様に…いや、それ以上の集中力が必要だ。エースと同じく戦闘型とされるリンにとって、他の存在に攻撃を任せっぱなしでは、リラックスして集中することができないのだ。
リンが大帝竜黄龍を召喚してからは戦いが楽になった。これほどの強大な存在を召喚するのは初めてだったにもかかわらず、彼女は冷静さと集中力を保っていたため、ジェード帝国のヘルタディスの攻撃対象はレムナントだけだった。
王国にとって事態は順調だったが、リンは万能ではなかった。長時間の集中と無活動により、意識は体に負担をかけ、召喚は瞬時に解除された。契約者を失った偉大なる竜帝ホアンロンは、ヘルタディの従者と共に姿を消した。
レムナントが出現し続ければ悲惨な状況になっていたかもしれないが、この時、空気の裂け目はもはや見えなかった。意識を失ったジード帝国の王を守っていたのは、エースの部下たちだった。
「エース様、ごめんなさい。両親のことで手一杯でした」ジェラールは心から謝るが、キアは多くの行動を逃したため、少し落ち込んでいた。エースは、いつか、もしかしたらすぐにでも、自分たちの番が来るだろうと、落胆するキアに微笑むだけだった。
2013年1月12日土曜日、アルビオン王の約束通り、5体目と8体目のSWORDが、エースと十三花の援軍として到着し、残りのレムナント殲滅に向かった。SWORDからそう遠くない場所には、プリムラとルツェルンがついに姉妹たちと同じ戦場へと戻ってきた。エースは13姉妹が一堂に会するのを見て、安堵のため息をつき、微笑んだ。
レオネル卿とガラハッド卿は部下たちと共に圧倒的な力と一方的な戦いで戦場を掃討する一方、意識を失ったリンは、彼女の従者であり親友でもあるチン・アンの手当てを受けていた。
ジェード軍が終日休息している間、第5騎士団と第8騎士団は、それぞれ5人ずつで構成されたガラハッド卿とレオネル卿率いる騎士団、そしてキアとジェラルドと共に、西に日が沈む頃には残りのレムナントをあっさりと殲滅した。
両陣営は13日の夜明けを待ちながら、空き地に陣取り、共に飲食を共にしていた。
ジェード帝国北西陣営 2013年1月13日 午前6時08分
予想より早く陽が昇り、皆は疲労感に苛まれながらも爽快な気分だった。最悪のシナリオは既に過ぎ去った、少なくともエースはそう思っていた。しかし、完全に安心しきる前に、ある声がエースの考えを止めた。
「これで終わったと思うなよ、ナイト殿」 疲れ切った、そして柔和な声。まるで何日も何も食べていない猫のようだった。それは、若き乙女王タオ・リンの歌声だった。一晩休んだ後も、彼女は疲労でまだよろめいていた。
リンの予想外の言葉に、場の空気は再び張り詰め始めた。先ほどまで休息を取っていたジェード帝国の兵士たちが、スレートに手を伸ばしていた。ジェラールとキアも同様だった。互いに守り合い、共に食事をしていた者たちが、今や互いに刃を向け合おうとしているというのは、後味の悪い話だった。
「アルビオンとの一騎打ちを申します」リンは立ち上がることに全力を注いだ。一方、チン・アンは微塵も抵抗しなかった。背が高くて細身のこの助手は、最初からリンの真の目的を知っていたに違いない。
その言葉で緊張は解けた。エースは彼女の提案にまだ少し躊躇していた。ジェード帝国の王であるリンの状態ではとても戦える状態ではないからだ。だが、皆が野蛮な戦いを繰り広げるよりはましだと考えた。
「我らが王、アーサー・ペンドラゴンが不在の中、この私、第五の剣の筆頭騎士が、その挑戦を受ける……」
アルビオンを守る騎士の務めとはいえ、リンの衰弱した様子にエースは動揺し、不安で震え上がった。若き王は、力尽きた騎士の前では少女同然だった。しかし、下級騎士である彼には、『騎士院』の前で発言権などない。
二人の騎士をふと見たとき、レオネル卿やガラハッド卿を笑わせるほどの恐怖に陥っていたに違いないと思った。エースは恥ずかしさのあまり頭を下げるしかなかった。二人は根っからの騎士であり、騎士の掟「愛のため、あるいは現世の財産のために、不当な争いに加わるな」に従っている。
「…と言いたかったのだが…今の貴方様の調子では、たとえ王であっても、圧倒的な優勢で勝てば騎士の名誉に傷がつく。」 ガラハッド卿はリンに今日戦わない理由を全て伝え、彼女が完全に回復した約束の日に戦うと約束した。しかし、リンは首を横に振った。
「今戦わなければ、前に進めない気がする。」 リンはそう呟いた。弱々しい声だったが、その言葉は彼女の決意と同じくらい重かった。二人の騎士は真剣な表情になった。
エースはパニックに陥り、若い女性に近づいた。
「殿下、どうか冷静になってください。」
しかしリンはただ口を尖らせ、厳しい視線を向けた。
「それで、后太子様、なにか提案がありますか?」レオネル卿はジェード帝国の皇位継承者に尋ねた。




