第016話 回避盾は隠し通路とともに
サッシャの投げナイフは元々のDEXが高いのもあって、ダメージがそこそこ出た。
壁役に俺が、アタッカーにピティとサッシャ、ヒーラーにコトハちゃんとパーティのバランスはそこそこ良くなった。
とはいえ、このメンバーの弱点も見えてきた。
1つは全員が全員物理アタッカーだということ。
物理耐性が高いモンスターが現れると殲滅速度が激減する。
対策方法は、俺が回避し続け火力を上げるかコトハちゃんがジャッジメントパニッシャーで叩き潰すかの二択になる。
耐性があってもそれを超えて与えればいいじゃないという頭の悪い作戦だが、今のところそれしか選択肢がない。
もう1つは、範囲攻撃持ちがいないことだ。
おかげで敵が増えればこれも殲滅速度が遅くなっていく。
「という、脳筋パーティってわけだ」
「私が魔法を覚えた方がいいでしょうか?」
コトハちゃんは自分が魔法担当だという認識があるらしく、どうも責任が感じている。
「いや、コトハちゃんの仕事をこれ以上増やすのはパーティーとしても危険だ。
ヒーラーに専念してほしい」
「分かりました!」
「打開策としてはいくつかあるが、現実的な案としてはエンチャントスキルを覚えるか、武器に属性エンチャントをするかだ」
「鍛冶職の私がいるから、武器エンチャントが現実的かな。
エンチャントスキルを各自覚えるっていうのはちょっとつらいかなーって」
「まぁ、そうなるか」
なんで、こんな話になったかというと大量に発生して物理防御が強い敵が現れたからだ。
その名もロッククラブ。
石でできたでかいカニなのだがこれが物理耐性が高いうえにまとまって現れる。
敵としてはあまり強くないので、問題はないが、殲滅速度の低下に加え、この上位互換が現れたらという不安がある。
「≪精霊鉄≫と≪蒼天結晶≫は採れたし、もう帰るか?」
俺の言葉に全員の反応は芳しくない。
というのも、普通な結果なのである。
特別なイベントが発生したのだから、≪精霊鉄≫と≪蒼天結晶≫も最高級のものを採ろうと意気込んできただけにこの普通な結果にはみんなどこか不満足だった。
採取した≪精霊鉄≫と≪蒼天結晶≫はどちらも決して品質として悪いわけではない。
「とはいえ、やみくもに高品質狙うのも時間の浪費だしな」
「まぁ、ミヤコのいう通りね」
「仕方ないよねー」
「……」
打算的な大人組が真っ先に賛成したが、自分の服を作るという魅惑的なキーワードを携えたコトハには不満だった。
「もう1つだけ! もう1つだけ採取ポイントにいっていいですか!」
「俺はいいけど……」
「私は大丈夫だよ」
「もちろん、コトハちゃんの服を作るためだからね」
他の2人に聞くまでもなかった。
せっかくなので、奥に行こうという話になり湧き出てくるモンスターを倒しながら、次の採取ポイントに向かう。
人一倍やる気を出しているコトハちゃんはジャッジメントパニッシャーを駆使してアタッカーばりに前衛に立っている。
本来ならヒーラーなのだからと止めるべきだが、ここは彼女のやる気を立てて全員がそれを見守った。
「げっ、ロッククラブがまたいる」
ピティがロッククラブの群れを見ていやそうな声を上げる。
面倒なことにセキダンゴもいる。
「行くわよ。トールスマアアァァァァッシュ!」
「ふふふ、貫けポイズンナイフ!」
2人ともコトハちゃんにいいとこ見せようと全力で厄介な敵を散らしていく。
コトハちゃんもジャッジメントパニッシャーを深く構えて相手ににじり寄る。
「パラライズストライク、パラライズストライク、パラライズストライク!!!」
目につくロッククラブとセキダンゴに麻痺を与えていく。
脳筋2人にロッククラブとセキダンゴがなすすべなくつぶされていく。
うーん、怖い。
最初あれだけ引いていたコトハちゃんも慣れたもので、倒しにくそうな大きめのロッククラブに狙いをつけた。
「ジャッジメントパニッシャー!!!」
コトハちゃんの一撃が壁ごとロッククラブを叩き潰した。
壁に穴が開くほどの一撃。
どう見てもオーバーキルだ。
他の2人もあらかた処理しきったみたいだ。
「じゃあ、先進むか」
「オッケー!」
「さぁ、サクサク行くわよ」
俺たちが奥に進もうとしたが、コトハちゃんはその場から動かなかった。
「どうした?」
「あの……この開いた穴なんですが……」
コトハちゃんはそれが気になったのか、俺たちから離れてジャッジメントパニッシャーで開けた穴を覗いた。
「ここ進めそうです」
「本当!?」
「コトハちゃん、凄い、新しい道を見つけたのね」
2人はさすがとコトハちゃんに駆け寄った。
いや、待て。
道ってありか?
壁を開けて新たな道とか、そんなのありか?
俺の困惑をよそに、3人はその穴の中に進んでいった。




