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伝説の回避盾は姪っ子とともに渡り歩く  作者: 物戸 音
第一章 Ver.1.00 正式リリース
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第015話 回避盾は投げナイフとともに

 聖女の装い作成に足りないものは≪祝福の針≫、≪天恵の蜘蛛糸≫と≪黒蒼鉄の裁ち(ばさみ)≫だった。


「≪黒蒼鉄の裁ち(ばさみ)≫か。

 ≪蒼天結晶≫があれば、私作れるかも」

「じゃあ、ハサミはピティだな。

 ≪天恵の蜘蛛糸≫は俺たちかな? 採集場所が分からんな」

「≪祝福の針≫は私ね。

 ちょうど欲しいと思っていたのよ」

「助かる。

 何か必要な素材はあるか?」

「≪精霊鉄≫ね。≪蒼天結晶≫もだけどマレクス鉱山で採集できるわ。

 もしかしたら露店通りに出ているかもしれないけど……」

「あの! せっかくなので、自分で探したいです!」

「と、コトハちゃんも言っているので、取りに行くことにするわ」


 鉱山にコトハが行くといったので、ピティもサッシャも同行することとなった。


「へへへ、久しぶりにコトハちゃんと冒険だ」

「ピティさん、今度も頑張りましょう!」

「コトハちゃん、私、戦闘は全然だから後ろで見ているだけでいいかしら」

「はい! 私の服を作ってくれるんです。

 私のことをもっと見てもらいたいです」

「うん、コトハちゃんだけ見てる」

「……」


 大丈夫か。

 コトハちゃんを中心にダメな大人が集まってくる感じがする。


「じゃあ、まずはマレクス鉱山で素材採集。

 2人が針とハサミを作っている最中に糸を探すか」

「頑張ります!」


 俺たちは用意を整え、マレクス鉱山に向かうことにした。



----



  マレクス鉱山。

 坑道の中の採取ポイントで鉱石を採集しながら奥へと進んでいく。


「この綺麗な石はなんですか?」

「ダルア銅だね。

 これ調理器具作るときに重宝するんだ」

「どうぞ、ピティさん」

「くれるの?」

「はい、私には使えない代物ですし」

「ありがとう。

 それにしても、コトハちゃんが取る鉱石はどれも質がいいものが多いね」

「そうなんですか?」


 後ろでピティとコトハちゃんが喋っている。

 その横で、サッシャがずっとコトハちゃんを見つめている。


 俺は足元の石ころを拾い上げた。

 石だ。

 何の変哲もない石だ。

 所詮、俺の運はこんなものなんです。

 俺は石をポイっと放ると奥に進んでいく。


「おっ、セキダンゴか。

 厄介だな」


 細い坑道を進むと、セキダンゴが数匹道をふさいでいた。

 セキダンゴは身体が硬い鉱山でできたダンゴムシのようなもので、攻撃すると防御行動として丸まる。

 攻撃性は低いのだが、耐久値が高くて、道をふさぐので少し厄介だ。


「えっ? これが厄介なの?」

「俺の戦闘スタイル的に守りに入るタイプは苦手なんだよ」

「あぁ、ミヤコって回避しないと火力低いんだっけ」

「あぁ。挙句防御低いから不意の一撃に弱くてな。

 こういうタイプは苦手なんだよ」

「ふふん、じゃあ、私かな。

 ちょうど新作もできたし見せてあげる!」


 ピティはそういうと巨大なハンマーを持ち上げた。


「トータスコータスの甲羅から作った最新ハンマー。

 ザラタンハンマー! いや、凄い攻撃力よこれ!」


 ピティがそれを振りかぶるとセキダンゴに向けて振り下ろした。

 叩きつけた瞬間、ハンマーから棘が飛び出し、グシャっという音ともにセキダンゴをつぶした。


「おぉ、あの防御を一発か。

 それにしても……」

「ちょっと、えぐいですね……」


 コトハちゃんが、ハンマーで虫をつぶすピティに引き気味だ。


「うっ、コトハちゃん、引かないで……」


 そういいながらもしっかりとその場にいるセキダンゴをつぶしきったピティ。

 これからセキダンゴはピティに任せよう。

 その様子を後ろでずっと見ているサッシャがいた。


 戦闘はダメだと言っていたが、マレクス鉱山に入ってからはずっと黙ってコトハを見続けている。


「サッシャもせっかくだし、戦ってみるか?」

「いいわよ。私ゲーム下手だし」

「そうなのか? じゃあ、なんでこれやってんだ?」

「裁縫……リアルで上手くいかない時はここでずっと裁縫しているのよ」


 ゲーム内でリアルのことを聞くのはマナー違反だ。

 俺は「そうか」とだけ言葉を返した。

 裁縫専門人口が少ないとはいえ、マニュアルで裁縫トップになったんだ。

 尋常じゃない時間を費やしたのは間違いない。


「せっかくだし、何か試してみないか?」

「何かって何よ」

「まぁ、野暮ってのは分かるが、せっかくゲームやってるんだしな。

 敵を思いっきりぶん殴ったりとかしてみないか?」


 実際、ストレス解消に前衛職を選ぶプレイヤーも少なくない。


「手を使うのはイヤよ。

 これでも私は――ううん、いい」

「手を使わなくても投擲(とうてき)だったり魔法だったりやれる手段はいくらでもあるぞ」

「やらないって言ってるでしょ」

「えっ? サッシャさんも、戦ってくれるんですか?」


 会話を聞いていたコトハがぐっとサッシャに近寄った。


「もちろん! 一緒に戦うわ!」

「良かった! ずっと見ているだけだったから不安だったんです。

 一緒にいるのが楽しくなかったのかなって」

「コトハちゃん……ありがとう。

 ミヤコ、早く私にあうのを教えなさい!」


 こいつ、俺と態度違いすぎないか?

 

「ったく、さっきも言ったけど、近距離がいやなら遠距離だな。

 弓や投げナイフなんかの投擲(とうてき)系か魔法だな。

 裁縫ずっとやっているってことはDEX(器用)が高いはずだから投擲のほうが向いていると思うぞ」

「じゃあ、それね」

「ピティ、何かいい武器あるか?」

「あるよ。はい、ポイズンナイフ」

「ピティ、ありがとう」

「私とサッシャの仲だから気にしないで!」

「ちょうど、モンスターも来たし、あれで試してみるか」


 坑道の奥から巨大な黒いトカゲがゆっくりとこちら歩いてきた。

 イシナメトカゲだ。

 防御も硬くないし、初戦に試すにはちょうどいい相手だ。


「サッシャ、相手をよく見ろ。

 最初は投擲に補助機能があるからまずはそれに慣れるんだ」

「分かったわ」


 サッシャがナイフを構え、イシナメトカゲにナイフを投げる。

 補助機能のお陰かまっすぐに飛んだナイフはイシナメトカゲの首元に刺さった。


「ぐおおおおおおぉぉぉぉ!」


 攻撃に気づき、イシナメトカゲが咆哮を上げながらこちらに走ってきた。


「やっぱり、一発じゃ無理か!

 サッシャ襲ってくるからナイフを構えろ!

 コトハちゃん、スローシンプトムで補助を!」

「はい!」


 コトハを中心に鈍足の結界が広がる。

 それと同時に二発目のナイフがイシナメトカゲに飛んで行った。

 ゆっくり動く分的としては当てやすい。


「ふふふ」


 サッシャが怪しく笑った。

 その瞬間、キッとイシナメトカゲをにらみつけると両手を使い、何度もナイフを投げ続けた。

 だいぶん、ストレスたまってるのか。

 バッティングセンターのOLよろしく、イシナメトカゲにナイフを投げつけるサッシャ。

 何度目か分からないナイフがささり、イシナメトカゲが倒れた。


「ふぅ……」

「初戦闘お疲れ様」

「コトハちゃん、どうだった?」


 俺のねぎらいを無視してサッシャはコトハのほうに寄っていった。


「凄かったです!」

「これで、私も戦力になるかな?」

「はい! これからもお願いします」


 まぁ、サッシャが楽しんでいるならいいか。

 俺は2人に背を向け、洞窟の奥へと足を進めた。


「ちょ、ちょっと」


 さっきまでコトハといたサッシャがいつの間にか俺の近くに来ていた。


「ん? どうした?」

「あの……ありがと……楽しかった」

「はは、楽しめたなら良かった良かった」


 恥ずかしそうにお礼を言いに来たサッシャの頭を撫でた。

 気難しいやつだと思ったが、素直なところもあったようだ。



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