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昭和のテーマパーク(観光地)を体験してみよう!  作者: 僧籍
昭和のテーマパーク(観光地)を体験してみよう!

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スペースワールド 数年後の再訪 そして、現代へ


数年後の再訪:ナオちゃんと「宇宙の再会」


それから数年後。

スペースワールドの入り口には、かつてより少しだけ大人びた、しかし相変わらず元気いっぱいのナオちゃんの姿がありました。


「お姉ちゃん、健二さん! 早く行こうよ! 次は『流星ライナー』に乗るんだから!」


大学生になったナオちゃんは、あの頃真由美が着ていたような流行の服を軽快に着こなし、二人を急かします。健二と真由美の間には、小さな手をお互いと繋いだ、新しい家族の姿もありました。


「ナオ、あんまり走ると転ぶわよ。健二、今日はカメラ、大丈夫?」

真由美が笑いながら健二の肩を叩きます。健二の首には、あのニコンFE2ではなく、最新のオートフォーカス一眼レフが下げられていました。


「ああ、今日は『命』を預けなくても大丈夫そうだ。でも……」

健二は、パレードの音楽が聞こえてくると、無意識に足でリズムを刻み始めました。


「お姉ちゃん、見て! 健二さんの目が、またあの『関ケ原の時』みたいにハッスルし始めてる!」

ナオちゃんが指を差して笑うと、真由美は優しく健二の腕を取りました。


「いいじゃない。パパが元気なのは、世界が平和な証拠だもの」


宇宙シャトルの下、かつての「戦国アイドル」と、彼女を守り抜いた「親衛隊の若武者」は、新しい時代の中でも変わらぬ愛嬌と情熱を持って、眩しい光の中に駆け出していきました。


****


平成の終わりが近づく頃。大学生になったナオちゃんは、大学の卒業制作として一本のドキュメンタリー映画を企画しました。タイトルは『極彩色のラブレター:1983-1990』。


その被写体は、もちろん姉の真由美と義兄の健二です。


****


レンズ越しに映る「二人の軌跡」


「はい、お姉ちゃん。そこ、昔みたいに髪を耳にかけて。健二さんは、ちょっと照れくさそうに笑ってて!」


ナオちゃんが構えるのは、デジタルビデオカメラ。かつて健二がニコンFE2を構えていたのと同じように、彼女もまたレンズを通して「真実」を切り取ろうとしていました。


撮影の舞台は、思い出の大垣駅前。真由美は、あの日健二を待っていた時と同じような、上品な白いブラウスに身を包んでいます。


「もう、ナオったら。そんなにジロジロ撮られると、新婚旅行の時より緊張しちゃうわ」

真由美が少し頬を染めて笑うと、隣に立つ健二は、使い込まれたニコンのカメラバッグを抱え直しました。


「健二さん、聞きたいことがあるの」


ナオちゃんがカメラを回しながら問いかけます。

「どうしてあの昭和58年の夏、ウォーランドやメナードランドであんなに『ハッスル』できたの? お姉ちゃんの前で、恥ずかしくなかった?」


健二は一瞬、遠い目をして、あの極彩色の武者たちや、森下ユミちゃんのステージを思い出しました。


「いや、彼女が見ていたなんて知らなかったよ……でも、恥ずかしさなんてなかったよ。あの頃の俺たちは、目の前の一瞬を全力で肯定しなきゃいけないって、本能で感じてたんだ。平和な日本で、可愛い女の子が笑ってて、好きな音楽が流れてる。それを守るために、俺は俺なりの『戦い』をしてたんだと思う」


その言葉を聞いた真由美の瞳が、ふわりと潤みました。


****


試写会:平和の音色


卒業制作の試写会。暗い大学の講堂のスクリーンに、ナオちゃんが編集した映像が流れました。


そこには、健二が撮り溜めていた1983年の関ケ原のスライド写真と、現代の二人の姿が交互に映し出されていました。

B面で流れていたサザンのメロディ、サンテオレのオレンジ色の灯り、スペースワールドの輝くシャトル。そして、あの日健二がナオちゃんのために買ってきた「サンタオレのカウベル」が、今ではメッキがはがれて、ナオの化粧箱の中で大切に保管されているカット。


「お姉ちゃんたちが繋いできたのは、ただの時間じゃない。日常という名の『平和』なんだよね」

ナオちゃんのナレーションが重なります。


映画のラストシーン。健二が自主映画『戦国アイドル伝説』で使ったあの決め台詞を、真由美が今の優しい笑顔で口にします。


「平和な日本にしてしまうぞ♥」


上映が終わった瞬間、教室は温かな拍手に包まれました。

そこには、自分たちの歩んできた「昭和」という熱狂と、「平成」という穏やかな時間が、次世代の感性によって見事に統合された光景がありました。


****


永遠のハッスル


「ナオ、いい映画だったわ。ありがとう」


真由美がナオちゃんの肩を抱き寄せます。


「健二さん、次は私の結婚式で、あの『伝説のオタ芸』、披露してくれるよね?」

ナオちゃんが茶目っ気たっぷりに言うと、健二は苦笑いしながらも、誇らしげに胸を張りました。


「ああ、任せとけ。俺の命の輝きは、まだまだ消えちゃいないからな!」


****


ナオの卒業制作の試写会が終わった後、講堂の明かりが灯っても、誰もがその余韻に浸り、動くことができませんでした。


「……素敵な映画だったわ、ナオ」


真由美が目元をハンカチで押さえ、健二がその肩を優しく抱いたその時です。


「ちょっと待ったー! その素敵な物語に、私の歌を添えさせて!」


講堂のステージの袖口のカーテンが勢いよく開き、眩いばかりの光と共に、一人の女性が飛び込んできました。


永遠の17歳、森下ユミの再臨


そこには、昭和58年のあの日、関ケ原メナードランドのステージで健二の魂を揺さぶった、あの「期待の新人」森下ユミが立っていました。


驚くべきことに、彼女は当時のまま、いえ、当時よりもさらに輝きを増した姿でそこにいました。ふんわりとしたフリルのドレス、光り輝くツインテール、そして何より、見る者すべてを一瞬で虜にする「100万ドルの笑顔」。


「ユミちゃん……!? 本物か?」


健二が驚きのあまり絶句すると、彼女は軽やかにステップを踏み、かつてのようにウィンクを投げました。


「そうよ、健二さん! 永遠の17歳、森下ユミです! 今日はこの学園祭に呼ばれて歌いに来たんだけど、私の伝説のファンがいるって聞いて、駆けつけちゃった!」


彼女は文字通り「永遠の17歳」でした。時の流れを完全に拒絶したかのようなその美しさは、もはや超自然的な神々しささえ放っています。彼女が歌い始めると、講堂の空気は一瞬にして1983年のあの夏の午後に逆戻りしました。


ナオの卒業制作アニメーションの最後の一コマがスクリーンから消え、会場が割れんばかりの拍手に包まれた後、ステージの空気は一変しました。


客席の照明が完全に落ち、重低音が響き始めると、ステージ中央に一筋のスポットライトが差し込みます。そこに立っていたのは、かつての面影を残しつつも、圧倒的なオーラを纏った森下ユミでした。


「ナオちゃん、卒業おめでとう。……そしてみんな、準備はいい!?」



****


平成に響く「渚のテレパシー」


「行くよっ! 1、2、サーン!」


彼女の第一声と共に、イントロのアップテンポなシンセサイザーが炸裂しました。その瞬間、暗闇に沈んでいた客席が一斉に「発光」したのです。


光の海とサイリウムの波


講堂の客席の後ろのスペースにいた、何十人のファンが手にしたサイリウムが、一斉にポキリと折られ、鮮やかなエメラルドグリーンとスカイブルーの光を放ちます。


「ユミちゃーん!!」


地鳴りのような歓声の中、ファンたちは熟練の動きで光の棒を振り始めました。

頭上で円を描き、胸元で鋭く突き出す。その一糸乱れぬ動きは、まるで光の生き物がうねっているようです。ユミがステップを踏みながらステージの端へ駆け寄ると、その動きに合わせてサイリウムの波が右へ左へと大きく傾き、会場全体が光の濁流に飲み込まれたかのような錯覚に陥ります。


「もっと、もっと光を見せて!」


ユミの煽りに応えるように、ファンたちの踊りは激しさを増していきます。

空中で複雑な軌跡を描く「ヲタ芸」の動きが、光の残像となって空間に焼き付きます。オレンジ色の高輝度サイリウムが激しく焚かれ、熱気で白く霞む会場を、火花のような光が縦横無尽に駆け巡りました。


ステージと客席の共鳴


ナオは、ステージ袖でその光景を呆然と見つめていました。

自分の作品を上映していた静謐な空間が、今は爆音と光のエネルギーが渦巻く「祭典」へと姿を変えています。


ユミの歌声は、1980年代の懐かしさを感じさせながらも、平成の今、最も新しく響いていました。彼女が右手を高く掲げると、客席の数千の光もまた、一点を目指すように高く突き上げられます。


「……すごい。これが、ユミさんの作る『景色』なんだ」


ナオの目には、ファン一人一人が持つサイリウムの光が、まるで自分のアニメーションに命を吹き込んでくれた星屑のように見えました。


曲がクライマックスに達し、ユミが渾身のロングトーンを響かせると、サイリウムの動きは最高潮に達します。激しく上下する光の筋が、ユミの汗をきらめかせ、彼女をこの世のものとは思えないほど美しく、神々しい存在へと押し上げていました。


最後の音が消え、ユミが大きく肩で息をしながら深く一礼すると、会場は再び、サイリウムの光がゆっくりと揺れる、静かで温かな「星空」へと戻っていきました。


****


最後の曲になり、彼女が再び、歌い、踊り出す。かつてよりも洗練され、深みを増した歌声。しかし、その底にある「みんなを笑顔にしたい」という純粋な情熱は、あの日から1ミリも変わっていませんでした。


それを見た健二の体に、稲妻が走りました。


「……兄弟、いや、ナオ! 俺の命を、もう一度預かってくれないか!」


健二はナオに、今度は最新のデジタルビデオカメラを託しました。


「行ってこい、健二さん! お義兄ちゃんの命の輝き、見せてよ!」


ナオの激に背中を押され、健二は学生たちの最前列へ躍り出ました。

復活のオタ芸:時代を超えた共演


「ユ・ミ・ちゃーーん!!」


健二の動きは、全盛期をも凌駕するキレを見せました。

深く沈み込み、天に向かって拳を突き上げる。激しく腕を交差させ、ユミちゃんの放つ光を全身で受け止める。滝のような汗を流しながら踊り狂う健二の姿は、もはや一人の父親や社会人ではなく、純粋な「愛」を体現する戦士そのものでした。


ステージ上のユミちゃんも、それに応えるように健二と視線を合わせ、力強く指を差します。


「健二さん、ナウいよ! 最高だよ!」


その傍らで、お嬢様から慈愛に満ちた女性へと成長した真由美が、パールの指輪を輝かせながら、手拍子を送り、優しく微笑んでいました。


輝きは永遠に


ライブが終わった後、ユミちゃんは二人のもとへ歩み寄り、真由美の手を優しく握りました。


「真由美さん、健二さんをずっと支えてくれてありがとう。二人の平和な愛が、私の歌をずっと守ってくれていたのね」


ユミちゃんの瞳には、永遠を生きる者だけが持つ、深く澄んだ慈愛が宿っていました。


「ユミちゃん、あなたこそ、私たちの青春の『光』そのものです」


真由美が感極まったように答えると、ユミちゃんは「またね! 次は200歳まで、ハッスルして待ってるから!」と言い残し、風のように次のステージへと向かっていきました。


ナオの回すカメラのファインダーには、肩を寄せ合う健二と真由美、そして去りゆく永遠のアイドルの背中が、夕日に溶け込むように美しく収められていました。


大垣の夜空には、あの頃と同じように星が輝いていました。

極彩色の戦場から始まった物語は、形を変えながら、新しい世代のレンズへと受け継がれていく。

昭和58年の夏風は、今も三人の間を、爽やかに吹き抜けていきました。


挿絵(By みてみん)


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