第50話
26年 9/1 0:00:ルレラ連合:ノブォシビルスク
現地住民との関係構築は順調に進んでいた。
事前に潜入していたらしい諜報員と入れ違いだったようだ。
任務は単純明快。
クーデターの起きたこのヴルラ自治共和国における政権奪回及び独立。
武装はルレラの兵站基地から山ほど手に入る。
既に先の襲撃で回収したトラック1台分は、レジスタンスに引き渡し隠蔽も手伝ってある。
レジスタンスでも襲撃等、一部行っているようだが、なんせ相手は正規兵だ。
練度が足りない。
だからこそのこの軍事顧問団だかなにか分からない特別小隊の出番である。
教育、指揮・戦闘。
そのすべてを叩き込む。
そのうちここが独立したときは、国軍の礎となってもらう。
それがこの部隊の目的だ。
最低限の作戦物資は本土から投下補給されるが、それでも重火器などは奪い取らねばならない。
「それで!いつ作戦を結構するのでしょう!」
「今すぐにでも首相夫人殿下を迎えましょう!」
「無茶言わないでくれ………まともに準備せずに出来るような作戦じゃない。
そもそも、戦いの主役は君たちレジスタンスだ。6人で正規軍相手に戦えってとても言うのかぁ?」
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26年 9/10 0:56:ヴ第二共和国:突出部北部
ヴ第二共和国の防衛線は1歩下がって河川防御へとシフトしていた。
そんな中、1ヶ所だけ。
しかも攻勢発起点としては素晴らしく都合が悪い場所の防御が手薄になっていた。
何度か斥候が出て偵察しているが、特に防御陣地などといった懸念事項はなし。
対岸は高台にそこそこの勾配。
奥には進路を限定できるような形で広がる森林。
まあ素晴らしく都合が悪いがやれなくはない地形だ。
事前に工兵隊が仮設橋を建設している。
そこを、戦車を中心とした部隊が渡河していく。
既に1個大隊が揚陸を渡河をし終えているが、銃声の一つない。
とても平和だ。
[弾着まで、3、2、1]
その平穏を破壊するように、時限信管の榴弾が炸裂する。
第七及び第十一師団特科連隊による同時弾着射撃。
いわゆるTOTだ。
渡河戦闘で攻撃を食らうなどひとたまりもない。
後ろは渡河待ちの部隊。
前は砲撃。
横は河。
空中からの鉄片の嵐に耐えられるほど人間という生き物は頑丈ではない。
阿鼻叫喚の中起きる群衆雪崩と、それを上から射す榴弾の嵐。
クラスター弾再配備の計画もあったが、不発弾が出やすく後々面倒なことになるという理由で却下された。
もしここにクラスター弾があればもっと効率が良かったのだが。
「まさかここまで的中するとは思いませんでしたよ」
「向こうも上から突き下げを食らってるんだろ、軟弱な日本とその腰巾着共を海に叩き落とせってな。
そうでもなきゃこんなカスみたいな場所から渡河作戦なんざしないさ」
そんなことを駄弁っている彼らは、対岸の森林内からドローンで着弾観測をしている。
「こりゃぁ、一方的な虐殺になりそうだ」
砲撃をして概ね1時間
対岸に陣取っていた渡河予定の部隊と防衛部隊を軒並み吹き飛ばした後。
第七師団は行動を開始した。
施設科がもつあらゆる渡河能力を持ってして第七師団の中核となる攻勢部隊を短時間での渡河を開始する。
10式戦車はもともと本州全土で運用が想定された軽量な戦車である。
50tの90式を運用している第七師団の渡河能力であれば44tの10式の移動は余裕を持って可能だ。
渡河が続く中、先行している偵察隊やOH-1が進路の偵察を行い、障害となりうるものがあればF-15およびF-35による爆撃を要請。
破壊し後続の部隊にあとを任せる。
圧倒的な火力の投射による敵の殲滅。
空自とまともに張り合える空軍を持たない彼らにこれを阻止する術はない。
その気になれば輸送機に爆弾を載せて絨毯爆撃を行うことだって可能だ。
少数の普通科小隊がドローンやヘリの支援のもと生き残りを射殺もしくは捕縛し制圧する。
運が悪ければAH-1SやAH-64に自慢の20/30mm機関砲で吹き飛ばされる。
彼らから逃げることは不可能と言ってもいい。
逃げたところで、確実に彼らは逃げた先となる防衛線を破壊するだろう。
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26年 9/17 10:00:ヴ第二共和国:前線
単刀直入に言えば、敵の第一防衛線は壊滅した。
防衛線が壊滅したと言っても、それは部隊の壊滅ではなく陣地が無力化されたという意味だ。
第七師団が機動を開始した時、敵は直ぐに撤退を開始した。
殿となる一部部隊を残して主力は撤退。
突出部の包囲殲滅にこそ成功したが、主力の殆どを取り逃がすこととなった。
それが凶と出た。
陸自は順調に領土を回復………とは行かなかった。
彼らの前に立ちはだかったのは、隘路となり始めている国境よりも手前に建造された、高度な地下連絡網と要塞であった。
要塞線の前には対戦車障害物。
歩兵避けの鉄条網………にしては質が悪い魔法産の電流トラップ。
地雷原擬きに機関銃陣地。
しかも、どれも致死性が比較的高い。
そんな要塞網を攻略するため、一時前線は停滞していた。
その侵攻の再開が今日、このときであった。
既に陸自部隊は集結しており、後方地域の掃討制圧はヴァクマーやエルファスターの仕事と化している。
要塞線は長大、OH-1が要塞線後方を見たが碌な陣地がないとのことで、これが最後の縦深帯のようだ。
何度か威力偵察を行っているが、地雷原擬きは破壊突破不可能。
F-2と92式MCVが啓開するため爆破処理したが、直後に偵察に行った第七師団の偵察戦闘小隊が1個壊滅する羽目になった。
幸い爆破の威力は小さかったために、"致命傷を"受けた隊員は居ない。
どうやらまきびしのように撒かれている透明なクリスタルを踏むと吹き飛ぶらしい。
地雷原擬きと鉄条網がキルゾーンを形成し、そのキルゾーンを監視する形で機関銃。
要塞線全体を守るように対戦車障害が構築されている。
これをどう突破するか。
陸自の答えは単純明解であった。
要塞自体を徹底的に吹き飛ばしてしまえば、地雷をゆっくり除去できると言う話である。
地下連絡網が吹き飛ばせないならば吹き飛ばせるまで破壊すればいい。
実にシンプルで筋肉的な解決である。
そんなわけで空自と陸自が作戦を立案したわけだ。
空にはCF-15およびF-35、F-2が爆弾を満載し飛行している。
おまけにC-2やC-130が通常爆弾を満載して飛行しているし、未だに試作段階のXAC-2も飛行している。
後方には第二、第七、第十一旅団の全特科隊が集結。
他にも対地攻撃に転用できるミサイル車両も軒並み配備されている。
空からは多種多様な爆弾が降り注ぎ、後方からは砲弾が飛んでくる。
それを、突貫工事で造成した塹壕で観覧している。
まるで第一次世界大戦である。
違う点があるとすれば、片方は整備された塹壕で優雅にコーヒータイムを謳歌しているのに対し、片方は地獄のような砲撃に見舞われていることだろうか。
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丸一日、敵の要塞線には砲爆撃が続いた。
輸送機隊が爆弾を落としていったかと思えば、今度は戦闘機隊が爆撃を敢行し、XAC-2は防衛施設を滅多打ちにする。
地上部に関してはもはや瓦礫すら残らず、ただの荒野へ変貌していた。
地下連絡網も一部を除いて崩落・使用不能となっており、この状況でまともに機能する防御陣地は存在しないだろう。
そんなこんなで、施設科が現地回収で改造した大型ドーザ(装甲仕様)が地雷原を啓開し、普通科隊員や装甲車が前進していく。
原理は相変わらず不明だが、大型ドーザで押しのければ地雷は起爆しないため、ドーザが彼らの生命線である。
押しのけられた地雷雑じりの土は戦争が終わったあとに適切に処分されることだろう。
そのまま普通科隊員が地下連絡路に侵入していく。
隊員には大量の手榴弾が持たされている。
最後列の隊員のバッグには箱単位で手榴弾が詰め込まれ、現地で補給所を開き補給を行っている。
崩落部から手榴弾を投げ込み、起爆と同時に軽機関銃手が掃射しながら突入する。
それを小銃手が後ろから援護し、敵を掃討する。
あれだけ爆撃しても、坑道はどういった形状だったかを想起できる程度には原型をとどめている。
そこに複数の敵兵が立て篭っている。
捨て置いて餓死させても良かったのだが、あとから背中を刺されても面倒という結論で掃討することになった。
「左、洞穴あるぞ。気ぃつけろ」
「手榴弾を投げておけ。どうせ奥で蹲ってライフル構えてるだけだ」
「了解………投擲」
横穴から爆風が吹き出る。
そのまま、軽くライフルを掃射してから次へと移る。
手榴弾を投げ、掃射し、手榴弾を投げ、掃射する。
ただひたすら、そんな死の宣告を続ける。
稀にいる降伏者を蹴り飛ばし、腕を拘束し地面に転がす。
後始末は後続がやってくれる手はずだ。
捕虜収容に関しては、補給隊が帰りに引き取ってヴァクマーの捕虜収容所もしくは防衛省及び法務省、警察庁管轄の捕虜収容所に移送される。
本来は防衛省が管轄で設置するべきなのだが、大規模な捕虜収容所を自前で運営したことのない防衛省が法務省に泣きついた形だ。
防衛省が捕虜拘束・移送・施設警備を担当し、法務省直下の刑務所から引き抜かれた刑務官が捕虜の収容を行う。
警察庁は緊急対応のための機動隊及び消防部隊の運用を行う。
そんな後方支援も、陸自の進軍スピードに追いついておらず、補給するたびにあぶれる捕虜が何人も出てくる。
そんなことも露知らず、前線部隊はどんどんと進軍し敵拠点を制圧、捕虜を収容している。
「分隊長、降伏者です」
「拘束帯は?」
「残り少ないです」
「そいつを転がしたら戻って拘束帯取ってこい。ここで監視する」
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26年 9/19 6:00:ヴ第二共和国:国境線
逃げる敵を追い立て、第七師団の戦車連隊がたどり着いたのはダルア帝国と第二共和国の国境線。
それが意味することは、全領土の回復であった。
未だに一部のゲリラ化した部隊が抵抗を続けているが、それでも支配権は変わらない。
ルレラと国境を接する北部の戦線に関しては、殆ど領土を喪失していない。
事実上国境付近でのじゃれ合いに収まっている。
だが、ここまで来てようやくスタートラインである。
戦争を吹っかけて来た以上、このまま引き下がることはないだろう。
ダルアとルレラの戦意を完全に砕かなければこの戦争は終わらない。
鋼鉄の虎は前進する。
次なる標的は…………ダルア首都。バレリア。




