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剣の威力.仲間と呼べるのは……1

剣を身に付けてから 心まで男の中のおとこになった気がした。

気のせいかもしれないが…………


街に帰ると皆が食事をしていた。

うわっ!ゴビラまでいる……

いや、待てよ?あのゴビラは元は普通の魚なんだ。姿を変えた魚……あいつを剣で刺せば……


「あら、帰ってきたのね。とりあえず早く食事をすませて!」

美憂(みゆ)が食事を持ってきた。

「いやいや、今、帰ったばかりなんですけど……」

「つべこべ言わずに、はい。召し上がれ」

俺の疲れなどは気にしてくれそうにない。ほぼ諦めた風にため息がこぼれた。

「はぁ……あれ?また李塔さんがいない……」

「ねえ、もう一人、李塔って言う人は?」

「李塔さん、さん!です」


俺は李塔さんを尊敬しているので、敬称が気になり思わず咎めてしまった。

「そんなのどっちでもいいじゃない」

美優みゆにとってはほんとにどうでもいいらしい。やはり、何処か気に入らない……

「さっきまで、いたんだけどなぁ……」

「まあ、いいわ、早く食べて!」

とりあえず食事を片付けたいようだ。あーあ!やっぱり気に入らない奴だ!


「あっ、瑠璃くん お帰り。お疲れ様」

「はっ はい、砂里さん」

ささくれだった俺の心が幾分癒された。

「海の中は大丈夫だった?何も起こらなかった?」

「はい、いや、はい、何も無かったです」

「そう、良かったわ!ここは深海らしくて。見たこともない恐ろしい生き物も沢山住んでいるらしくて……」

「李塔さんといつも一緒なので大丈夫です」

砂里さん、心配してくれてるのかぁ。優しいなぁ。

「はーやーく!食べなさい!」

癒されたはずの俺の心にピキッと筋が入る。

「うわっ、まったくうるさいなぁー」

「何?」

「早く食べりゃいいんですよね」

そう言って 口の中に味わう暇もなく 食事をかけ込んだ。

やけになり、食事を口の中に押し込んでいると、ゴビラがもったんもったん歩いて近づいてきた。


えー、まさか俺に用ではないですよねー?

そのまさかですか?(;゜0゜)

「おまえ、なかに隠してないか!」

「へっ?隠している……?」

「そうだ!俺様のこの丸い鼻は 気に入らない臭いをかぎ分ける力が備えてあるのだ」

まさか……この剣……?いや、そんな……

「これか!」

どうしよう……?見つかったのか……?

ゴビラは俺の背中に手を当てた。そして不気味な蛙のような指で摘まんだ。

なんだ、なんだ……

「これか、俺様はこいつが妙に苦手なんだ!こんな者 連れてきやがって!」

言いがかりも甚だしい。何かは知らないが、連れてきたくて連れてきてないし。

「俺が何を付けて来たというんだ!」

いやー、なかなか かっこよく強気にでれたぞ!


「これだ!」

ゴビラの指先で 黒くて丸い貝のようなものを摘まんでいた。

「これは ヤスリだ。生き物の全ての生き血を、少しずつ吸いとってしまうのさ」

「うわ……うわわ……」

「別にお前を助ける気なんてなかったが、血を吸いとるごとに繁殖するのでな」

ゴビラはヤスリを摘まんだまま 海中へ行ってしまった。

「ふぅ~、なんだ……」

「ねえ、何か他の物でも隠してない?」

美憂が言ってきた。

ドッキーン!

安心したところで突っ込まれたのでもろに焦ってしまった。

「なにも、何も持ってない!」

「ふーん、それならいいけどね」

かくもあっさりと美憂みゆは引き下がる。

あーあー、やっぱら何故か気に入らない!なんだこいつは……

「さあ、休みましょ」

あ、砂里さん!

「はい、そうしましょう」

砂里さんにならって休もうとしたその時、李塔さんが帰ってきた。

そういえば李塔さんと食事もしたことないし、休んだこともないなぁ?

まあ李塔さんは強い人だから、色々調べたりしてるのかもしれない。

「あの、李塔さん、俺に出きることがあれば 何なりと言ってくださいね」

「あ、ああ……すまない、ここにいる皆を助けなきゃいけないと思って、この街からの出口がないか確かめてたんだが……」

李塔さんは思い詰めた表情で彼方を睨んでいる。

「俺も一緒に探しますよ!」

俺は思わず声をあげた。

「いや、危険がありすぎる!」

「大丈夫、この剣、剣さえあれば……」

高揚した気持ちが押さえられず剣の事を口にしてしまう。 

「これってなんだ?」

「この、この腕です。毎日鍛えていますから」

俺は必死にごまかした。

「あっはっはっー、ありがとうな。だけどもう少し鍛えないとないと、その細い腕じゃあすぐにへし折られるぞ」

「は……はい」

李塔さんは大きな笑い声をあげた。よかった、特に怪しまれずに済んだかな。

「さて、今夜も俺は見回りをするから。瑠璃は先に休んでいてくれ」

そう言うとろくに食事もとらず、また街の方へ消えていった。

「よし!今夜は俺も行こう!少しでも李塔さんの助けになるために、俺も見回りをするぞ!」

「ねえ、私も行くわ」

予想外の声が聞こえた。

「へっ?なんで お前。いや 美憂。聞いていたのか!」

「そうよ、ここにいると退屈で。 面白いことないか探してんのよ」

「面白い!?こっちは真剣なんだよ!」

少しでも皆のためにと動こうとしていた俺は、面白い事呼ばわりされて、カチンときてしまう。しかし当の美憂みゆはというと

「まあ、なんでもいいわよ。早く行きましょう」

全然気にしてない、というか、ほんとにどうでも良さそう。それをみて俺はというと……

「………………まあ、一人よりは……」

うー、情けない、俺は……


「ねえ、これ何?」

「はい?」

うるさいなぁ…………と、続けたいところだったが決して声には出さない。

「これよ、小さな扉があるわよ」

そこには、人間が一人通れるくらいの幅の戸があった。

これは何だろう?海中への出口?いや、違うぞ。ここからはまだ海中には行けない……

「ねえ、ほら開いてるわよ」

「うそっ」

「行ってみましょ、さあ、ほら」

「仕方ない。って、なんで俺が先になって……」

「あたりまえじゃない~、一応私は女の子よ」

こんな時だけ……女の子なんて……


とりあえず、そーっと、そーっと……俺は扉を開けていく。

中には……うっそー!

…………………………

巨大なコブラがいた。

コブラ……コブラ!?いやいや!

コブラの特徴である平な首の先には、なんと5つもの顔が手のひらのようについていた。


……バタン!とりあえず俺は扉を全力で閉めた。

これは見てはいけないものだ!

「ねえ、何がいたの!?」

だというのに美憂みゆは当然のように中の様子を聞いてくる。

「いや……何もない、空洞だった」

無駄とは思いつつも俺はとっさに嘘を着いた。

「なら、何故そんなに青い顔をしてるの?中を見せなさいよ!」

「だめだ!もし見つかったらどうなるか……」

「やっぱり何かいるんでしょ!?」

やはり嘘はバレました。俺をどかして美憂は扉を開いていく。

「ねえ、何も居ないわよ?!」

それこそ嘘でしょう!

「そんな……」

「ほら」

俺の服を引っ張り中へ押し込んだ。

あれ?ほんとにいない?錯覚だったのか……?そんなわけない!絶対にいた!

……うん?あれはいったい?

「うぎゃー!」

情けなくも俺は悲鳴をあげて後ずさってしまった。

……そこらじゅうに骨が散らばっていた。

「これは、なんの骨?見たこと無いような骨だね、魚?さかなにしては大きくない?まさか、人間でもないよね……?」

美憂みゆは不審な表情をしていたが、さして怖れている風は無かった。こういうのは女性が強いのかな?

「取りあえずここを出よう」

「怖いの?」

試すように美憂みゆが言う。

「いや、違う!そうじゃなくてまたゴビラを怒らせて、誰かが傷ついたりしたらいけないだろう?」

「ふーん」


「何してるの?」

美憂みゆではない、違う女性の声がした。

「砂里さん!」

振り向いて砂里さんを見つけると、俺は思わず顔が綻んだ。

「李塔さんが捜してたわよ」

「は、はい」

急いで骨の散らばっていた部屋のドアを閉めて街に帰った。


李塔さんは海中の見えるガラス張りの所に立ち、ガラスの向こう側を眺めていた。

「李塔さん!すみません、何か用ですか?」

「あっ、瑠璃。実はこの街を支配しているデコスが何者か調べていたんだ。それで……一人で海に潜った時だったんだが、白くて丸い頭の巨大な生き物に遭遇したんだ。そいつの体は人型で、どこか人魚のようだった。あれが姿を変えたデコスではないのかと思ったんだ。前に聞いた話だが、デコスは私達の前に現れる時は 必ず姿を変えてくるらしいんでな」

「え、じゃあ、その白い巨大な生き物が……デコス?」

「そうじゃないかと思っている。奴を叩きのめすには威力の強い剣が必要だ。だがその剣を何者かが隠し持っているらしい」

そう言って李塔さんは何かを含んだ表情で俺をみた。

「えっ!剣……その剣はそんなに威力があるのですか?」

俺は気づかないふりを決め込んで、剣の事を尋ねた。

「ああ、その剣を使うとデコスの魔力も叶わないそうだ」

「うっ!うぇ」

「どうした?瑠璃。気分でも悪いのか?」

「いえ……大丈夫です、ただ今日は何だか……」

「もう休もう。明日は また珊瑚を運ばないといけないからな」

「はい」

俺は素直にそう返事をした。


俺たちは部屋へと戻った。李塔さんは後少し見回りをしてから休むと言ってまた何処かへ行ってしまった。

俺は李塔さんから聞いた話をもう一度頭の中で反芻する。

この剣が?……違う!李塔さんとパルの言っている事が反対だ……どっちを信じればいいんだ!


疲れていた。とにかく重い何かが頭をもたげている。頭の中の整理がつかず、李塔さんやパル、そして剣の威力の事……そんな事を考えていたら、眠気などなかったにもかかわらず、すぐに眠りについていた。

剣は布にくるみ背中に固く縛り付けておいた。






















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