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モブ同然の悪役令嬢に転生したので男装して主人公に攻略されることにしました(書籍版:モブ同然の悪役令嬢は男装して攻略対象の座を狙う)  作者: 岡崎マサムネ
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エピローグ(4)

エピローグが長くなっていてすみません、次回で完結予定ですのでもう少しだけお付き合いください!




 ユーリはまるでパズルのピースが嵌まったとでもいうように、複雑な数式を解き終わったかのように、どこか満足げな表情で――やはりその口元は緩みながらも、左右対称にきれいな笑みが浮かんでいる。


「リリアお姉様はアンタを攻略しようとした。その結果が今の、原作越えの逆ハーレムエンドなら」

「ちょっと、あの」

「アタシも真似すればいいんだ」

「考え得る限り最悪の展開!!!!」


 リリアが頭を抱えてテーブルに肘をついた。

 そんな前作主人公を横目に、ユーリは微笑を崩さない。


「おや。もうお役御免かと思っていたけれど。また現役攻略対象のお鉢が回ってくるのかな」

「勘違いしないでよね、あくまでフリだから」


 ユーリがふんと小さく鼻を鳴らした。

 表情は楽しそうだが、その視線は私を見ているわけではない。

 私を通してゲームを――ロイラバ2の攻略に思いを馳せているのが伝わってきた。


「ロイラバ2のほかの攻略対象の前で、アンタを攻略しようとしてるフリしてみるの。それで変化が起きるのか試させてもらうだけ」

「そううまくいくものかな」

「好感度ロスした分を取り戻して、逆ハーレムエンドのその先を目指すなら……『リリアお姉様以上』のことをやらなくちゃ意味ない」


 私とユーリが会話をする間で、リリアがわなわなと手を震わせながら双方の顔を見比べている。

 やり込み系のプレイヤーだったらしい彼女は――逆ハーレムエンド以上のものを求めて、リリアに弟子入りを志願してきたのだ。

 それならば、その手法を真似てみるのが一番手っ取り早いと考えるのはある種必然だ。


 ゲームの中の主人公とは違う、この世界のリリア・ダグラスだけが取ったその行動こそが――他の殿下バグとやらをも凌駕する効果を引き起こしたのではないか。

 ユーリはそう仮説を立てたのだ。


「リリアお姉様がアンタを攻略してた時はフリーだったんでしょ?」

「それはもちろん」

「だから……今のアンタを攻略しようとする。それって『リリアお姉様以上』のことをやってるってことじゃん」


 ユーリが楽しそうに笑う。

 これは、困難に立ち向かうことを楽しんでいる顔だ。


 先ほどは「萎えた」だのなんだの言っていたが――彼女自身、まだこの世界を楽しみたいと。

 ゲームでは見られなかった展開を、この世界で見たいと。

 そう思っているのだろう。


 ユーリが上目遣いで、私を見上げる。先ほどまでの睨むような目つきとは違う、かわいらしく甘えるような表情だ。

 さすがこちらも主人公だけあって、何はなくともとにかく顔が可愛い。


「可愛い女の子に懐かれて嬉しいでしょ? そんな格好してるぐらいだし」

「まぁ、悪い気はしないかな」

「当然。この顔と身体に毎日何時間かけてると思ってんの」


 ふふんと胸を張るユーリ。


 表情もメイクも、おそらく体系や衣服に声の出し方、立ち居振る舞いその他に至るまで。

 もちろん主人公なのだから素材は千年に一度級なのは間違いないのだが、それをここまで磨き上げているのは彼女の努力の為せる業だ。

 そして彼女は、それに自信を持っている。


 そういう意味では同じ千年に一度の美少女であっても、リリアとは方向性が違う。

 彼女の思想は、私にも共感できるものだった。


「君のそういうところは私も好ましいと思ってるよ」


 そう素直に思ったところを告げると、ユーリがぱちくりと目を瞬いた。

 そしてふっと呆れたように笑うと、机に頬杖を突いた。


「……顔だけ見ればほんと、腹立つくらいイケメン」

「顔だけ? 身体も結構イイ線行ってると思うけど」

「うーわ。自信過剰~」

「ちょっと!! エリ様から!! 離れてください!! ソーシャルディスタンス!!」


 じたばた暴れるリリアを無視して、ユーリが私に向かって身を乗り出す。

 そして今にも触れてしまいそうな距離感で、私の耳元でそっと囁いた。


「それに、ほら♡」


 ちらりと動いた瞳を追って視線を動かすと、顔を真っ赤にしてはくはくと口を開閉しているリリアの顔が目に留まる。


「アンタとくっついてるとリリアお姉様がヤキモチ妬いてかわいいの♡」

「あ、そう」

「アンタを引き離しておけば攻略対象たちがリリアお姉様に近づく隙ができるし。一石二鳥じゃん」

「なるほど」


 それは一理ある。

 私がいるとリリアは私にべったり――ユーリ視点で見れば私がリリアにべったり、なのだろうが――だからな。

 なかなか他の男と交流する機会もないだろう。


 もしかすると思いもよらぬ「いいひと」を見つけられるチャンスが転がっているかもしれないのに、それをみすみす逃しているというのは、確かにもったいない話だ。


「私としては誰かが引き取ってくれるなら助かるけど」

「ね? アタシは逆ハーよりすごいエンディングが見られて、アンタはリリアお姉様と離れられる。メリットあるでしょ?」

「それなら――」


 勝ち誇ったように笑うユーリを前に、目を伏せた。

 ユーリの意図を汲んで、彼女の顎に指を添え、ニコリと微笑む。


 確かにユーリの言う通り、互いにメリットがある。逆ハーよりすごいエンディングがあるのかどうかは、知らんけど。


「やってみようか」

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