後編 戦争と「勇者」と最期
お飾りの「魔獣たちの王」であったはずの私は、思ったよりも戦争内に食い込んだ。
戦闘自体はてんで使い物にならなかったが、王のやり方を誰よりも近くで見てきたからか、指揮は意外と様になっていた。
それが災いだったのだろうか。今となっては誰にもわからない。
ーーー戦争が始まって一年が経ち、しびれを切らした人間たちの国は最終兵器を投入した。
それは、「勇者」と呼ばれる人間だ。「人間たちを襲う魔王」には「正義の勇者」。
そのときばかり、私は笑った。とんだ皮肉だと笑うしかなかった。
最終兵器というのは比喩ではなく、私たちは「勇者」によって最後を迎えることなる。
「勇者」と対峙した者から次々と死んでいった。人間たちの国からすれば異質の、魔獣だけでなく、元は同じ存在だったはずの「人間」も死んだ。ただひとつの例外もなかった。
宣戦布告をした先代の「魔王」でなかった事に驚かれつつ、当代であった私も他の者たちと同じ道を辿った。
たとえ、まだ幼子でも「魔王」であるならば、と泣きながら私を殺したのだ。
これが私の辿った経緯である。
ーーーこれは、不幸な生き方だろうか。この生き方しか知らない私にはわからない。