社長の苦悩
「えっ!?もう新しい町発見されちゃったの!?」
「はい。そのようです。」
眼鏡をかけたいかにもキャリーウーマンですというような服装の女性は目の前に座り難しい数式のようなものが表示されたモニターとにらめっこしている男にそう答えた。
「かぁ~マジかよ自由にしていいからってみんな張り切りすぎ」
男はため息まじりにそう呟いた。
「いかがなさいますか?」
「秘書ちゃんプレイヤーたちのレベル状況は?」
「はい。この2日で上位1000名のリストをこちらに纏めてあります。」
秘書がそう言いながらタブレット端末を男に手渡した。男がタブレット端末に表示されたリストを眺めていく。
そして
「ハァ!?レベル54!?」
男はそう叫びながら驚きのあまり椅子の背もたれから後ろに倒れた。
「社長!大丈夫ですか!?」
秘書が社長の側に駆け寄る。
「痛ったぁー、あぁ大丈夫大丈夫」
男は心配そうな顔をしながら自分の下に駆け寄ってきた秘書にそう軽く声を掛けた。
「それより、このレベル54って冗談だよね?なにかバグった?」
「いえ、冗談なんかではありません。NLGsystem管理課の方に確認をさせたところ、バグやチートなどによるハッキング被害はなく、システムも正常に動いているようです。」
「マジか」
もう一度椅子に座り直した男は改めてタブレット端末のリストの一番下を見る。
リストの一番下に居るのはレベル2。これは当然と言っていいだろう。まだNLGがサービス開始されてから2日だ。
そう思いながら男は上の画面を見るためゆっくりと画面をスクロールさせる。
1000位~617位まではレベル2がずらっと並んでいた。
そして616位~345位までレベル3が並び
344位~138位までレベル5が並び
137位~31位までがレベル6が並んでいた。
2日でレベル6でも充分に凄い。
ウルフ換算で言うと210匹以上も倒していることになる。
しかし、そのレベル6よりもさらに上がいる。
30位~25位がレベル9と一気に上がった。
まぁまだ計算の内だ。
24位から12位がレベル11ここでも少し差が出ている。うん計算の内だ。
そして11位がレベル19。まぁ許容範囲かなぁ。10位~6位がレベル25。スゥー、まだ許容範囲……。
5位~3位がレベル36。グハッ。きょ…ようはん……。
2位がレベル39。……き………………。
1位がレベル54。……………………………………。
俺はタブレット端末の画面が見えないように静かに伏せた。
「うん、空が青いねぇ~今日は」
「社長……ここビルの中ですので空は見えませんよ。しかも夜です。」
「はははははは…………」
「現実から目を背けないでください。社長」
「そうだったそうだった」
俺は一度、二度、三度、四度、深呼吸をして心を落ち着かせ、デスクの上に伏せたタブレット端末を手に取り画面を見た。
「なんだよ!レベル54って!どうやったらこんなレベルになるんだよ!」
さっきの深呼吸はなんだったのか落ち着かせたはずの心はどこにいったのか、一瞬にして落ち着きをなくしていた。
「落ち着けー俺。落ち着けよー」
秘書はパニックを起こしているそんな情けない男を大人しく静観していた。
「レベル11までだったら、製作していた時からこれぐらいはいくかなぁとは思ってたけど、その次のレベル19って!ボス倒したでしょ!絶対!」
「はい、討伐履歴を確認しましたところ、オートラス草原のグレーダーウルフを討伐しておりました。」
「えぇ……なんであの狼と戦ってんの…」
「他にもグレーダーウルフを討伐した者は2名、1位の者と2位の者が討伐したようです。」
「だいたい2日でボスに挑んでる時点で」
「はい、11位を含む上位は何らかのボスを討伐しております。」
「想定外だなぁ~ほんと」
もう、ダンジョンのボスも倒してるっぽいし、プレイヤーが楽しんでるならそれでいいんだけど……
どうしよう、ほんとにアレを導入するか?
正直、想定外が起きるのは想定していた。このままレベル差が広がってしまえば、戦闘が苦手な人達はこのゲームから離れていってしまうかもしれない。モンスター強すぎたかな?まぁ、これは想定内だし、救済措置としてアレを導入させよう。そりゃ戦闘素人だとウルフの一匹を倒すのに苦戦するよね。剣の振り方だって魔法の使い方だって大半の人が知らないに決まってるし。
「よし!決めた!明日の昼12時にBASを導入しよう。NLG計画課の方に伝えておいてくれないか?」
「承知しました。」
「ったく、どうすれば2日でレベル54までいけるんだよ」
「はい、サービス開始日にオートラス草原のボス、マラビラス森林のボスを討伐しレッドウルフ約百匹、二日目にオートラス草原のボスとマラビラス森林のレッドウルフを約四百匹とマラビラス森林のボスを約百匹、討伐したようです。」
「もう、気づいたの?スキルsystemに」
「当人の思考は把握できませんが、討伐数記録からの結果を見るとそうかもしれません。」
そういえばまだ名前は見てなかったな、順位とレベルばっかりに目が行ってたからね。どれどれ何て名前の人かなぁ
「零?2位は一?」
「はい。」
「えっ……これって噂の……」
「1位と2位をとっていることから、その可能性は極めて高いと思います。」
「万能すぎかよ!!!!!!」
俺はまた背もたれから後ろに倒れ込んだ。
「社長!」
そう叫んだはずの秘書の声も駆け寄って来る足音すらも俺には聞こえなかった。




