表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
背徳の性転  作者: Ichiko
1/2

目覚め

深い眠りだった。


目を開いてゆっくり顔を動かしてみたが、無機質なこの部屋の記憶どころか、自分が誰であるかも分からない。


(病室………?)


身体を起こそうとしたが全身に激しい痛みが走り、寝返りすらもままならない。


手元にナースコールのボタンに気付き、包帯で巻かれた不自由な手で押してみる。


すると、間もなく若い看護師が部屋に入ってきた。


『おはようございます。』


『おあーーっ。』


看護師に返事をしようとしたが、まともに声を出す事も出来なかった。


『無理をしないで下さいね。声帯の手術をしているので暫く喋ってはいけません。』


声帯の手術って何?


『ごめんなさい、私の紹介がまだですね。私はここ北尾記念病院のフロア担当、夏川美沙と申します。このフロアに入ってきた

現在あなた以外に患者さんは居ませんからあなたの専属看護師と思って構いませんよ。』


美沙と名乗るその看護師はまだ20代にしか見えない。


『あなたは……まだお名前がありませんでしたね。』


名前が無いってどういう事だろう?


『あなたは手術を受けて男性だった過去を捨て女性になったのです。ですからまだお名前が無いんです。』


(自分が過去を捨てた元男性?余計に訳が分からない。)


『詳しい事は院長先生からお話があると思いますので、とりあえずお名前を考えましょう。今は花みずきがきれいに咲いていますのでみずきさんでは如何でしょうか?』


(如何でしょうかと自分の名前を突然聞かれても困るしそもそも返事が出来ない。)


『良いみたいですね。ではあなたは今からみずきさんです。みずきさん、宜しくお願いしますね。』


(良いも悪いも無いが、勝手に自分はみずきという名前にされてしまった。)


『みずきさん、少し身体を起こしましょうか?』


(どっちにしても身体中が痛いのだからもう勝手にしてくれ。)


ベッドは電動で動く様になっている。


美沙がスイッチを操作すると、頭の方が傾いた。


『ご機嫌はどうかしら?』


壁に姿見があり、自分を見る事が出来たが顔中包帯を巻かれてまるでミイラの様だった。


記憶が無いので何故こんな手術をされたのか全く分からないが、過去を捨てるって自分はいったい何をしてきたのだろう?


不意に部屋のインターホンが鳴った。


『はい。』


『私だ。良いかな?』


男性の声である。


『院長先生です。』


美沙がその男性がこの病院の院長である事を告げ、部屋の扉を開けた。


入ってきた院長を名乗る男性は30代くらいの若さで身長も180センチ近くある。


『楽にして下さい。私はこの病院の院長、北尾輝彦です。手術の前の事は覚えていらっしゃいますか?』


首を振るのも辛かったが院長が分かる程度に横に振る。


『これもあなた……。』


『みずきさんです。』


美沙がさっき決めた名前を伝える。


『みずきさんが望んだ事なのです。あなたはある麻薬密売組織に所属していて敵対組織から命を狙われているとお聞きしました。さらに所属している組織からもスパイ容疑で追われ、そのため今までの自分を消したいと言われたのです。』


自分が麻薬密売組織の一員?


そんな男だったのならどうせ名前も何も分からないんだ、生まれ変わって女性として生きるのも有りかもしれない。


ただ、この痛みと戦うだけでも辛い。


『かなり辛そうですね。鎮痛剤を出しますので美沙さん飲ませてあげて下さい。』


『畏まりました。』


美沙が錠剤を口に入れ、吸いのみで水を飲まされた。


『痛みがなくなったらダイレーションを行ないます。』


ダイレーションってなんだ?


『女性になるために睾丸を取り出し、残った皮を使って膣を作ったのですが、人工的に作られた膣はただの傷なので治癒しようとする力で何もしないと塞がってしまいます。そのためダイレーターという棒を入れて塞がるのを防ぐ訳です。』


北尾は説明しながらプラスチックの円筒形の棒を見せた。


(こんなものを入れるの?)


棒は美沙に渡され、美沙の手で棒を入れられた。


『ゔぎゃー!!!』


鎮痛剤も効かない死にそうな痛さだがまともに叫ぶ事も出来ない。


『我慢して下さい、これが一番小さなサイズです。これから徐々に大きくしていきますから。』


(絶対無理!)


ただでさえ身体中が痛いのにこんな痛み耐えられる訳が無い。


一時間後、ダイレーションは終わった。


『お疲れさまでした。今食事を運びますね。』


美沙が一度部屋を出て食事を持って来た。


食事と言っても重湯である。


美沙はスプーンで重湯を掬い、みずきの口に運んだ。


何時からどれくらい寝ていたかなんて分からないが、久しぶりに胃の中に薬以外のものが入った様な気がする。


『痛みも少しずつ引いてきますからもう少し、我慢して下さい。』


過去の記憶も無く女になってしまった自分は果たしてどうなるのだろうとみずきは思った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ