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ある定休日、空は快晴、秋晴れアッパレ、ビバ日の光。肌寒くなってきたこの季節、夏にあれだけ猛威を振るっていた太陽が憎いくらいありがたく感じるのは、自分勝手なことなのかもしれない。しかしながら、暖かい陽光とヒヤリとする秋風が絶妙なバランスを醸し出すこういう日に一日河原で日向ぼっこをしたくなるのは、平和を愛する男のサガと言えるだろう。
しかし、そんな細々とした切なる願いは叶うことなく、今俺は月乃と黎の三人で、とある高校の門の前にいた。
「本当に来ちまった……」
「晴司……アンタが依頼を二つ返事で受けたんでしょ?」
「いや……何というか、この歳になって高校の門を潜るってのは、何だか妙な気分だな」
「それ、何となく分かるな……」
「……そうね」
柄にもなく感慨に耽る俺と月乃、黎。この高校は俺達が通っていた高校じゃないんだけど、学校というジャンルそのものが色々と考えるファクターになるわけで……
そんな俺達の元に、校舎から走ってくる人物がいた。紺色の上下ジャージでホイッスルを首から下げているその人物は、なんてこといはない、俺達に今回の依頼をしたあの人物であった。
「晴司くん! 月乃ちゃん! 黎ちゃん! よく来てくれたね!」
「陽子先輩、お待たせしました」
「別に待ってないよ。……それより、二人は今日はメイド服じゃないんだね」
陽子先輩は月乃と黎の姿を見て、残念そうに呟く。今日の二人の服装は、普通の私服。二人ともスカートなんて履くことはなく、タイトなズボンを着こなす。スタイルはモデル並み(黎のみ胸が残念)だからなぁ……男目線から見ても“カッコいい女性”ってのがよく分かるのが、何だか妙に癪に触るのはなぜだろう。
「まあいいや。――じゃ、さっそく一緒に来てくれない?」
そしてそのまま、俺達は校舎の中に入って行った。
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「ああ……懐かしいな、この感覚……」
「そうだな……校舎の中を歩くって、もう6年前になるんだよね……」
「私、晴司と校舎を歩くのなんて、7年ぶりかな」
「……いや、そうじゃないんだが……」
俺が言ってるのは、校舎を歩くというフレッシュなことじゃないんだよな……
時刻は昼休み。校舎の中は生徒が自由に歩き回っている。そんな中を歩く超絶美人3人。月乃、黎、陽子先輩……当然ながら、学校中はドエライ騒ぎとなっていた。
美人美人と叫ばれるのはもちろんのこと、飲みかけのジュースをダラダラと溢しながら顔を赤くさせて月乃達を見つめる純情男子、キャーキャー騒いでまるでアイドルを見るかのような熱い声援を送る女子……そして最後尾を歩く俺を恨めしそうに殺意を込めた視線を送る全員。え? お前何? 何でこんな美人たちと歩いてるの? シバクよ? みたいなメッセージ性を感じる。
この視線こそ、高校の時に散々感じていたものだ。いやぁ懐かしい。懐かしすぎて泣けてくる。
「何頭抱えてるのよ……」
そんな俺に視線を送るのは月乃。そしてそれに反応する黎。
「どうしたんだ晴司、何笑ってるんだよ」
(これは苦笑いと呼ばれるものに分類されるんだが……)
「ハハハ…! 何だか、晴司くんの学校生活がだいたい想像出来るね!」
「陽子先輩、笑いごとじゃなかったですよ……」
そうそう。おかげで、高校生活は二年のころからエライ目に遭い続けてきたわけだし。
「じゃあ三人とも、この部屋に入ってて」
案内された部屋の前に掲げられていた表札は、“生徒会室”。
「生徒会室……」
「ちょっと待っててね」
陽子先輩はどこかへ歩いて行った。とりあえず、中で待つことにした。
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「生徒会か……懐かしいな……」
「懐かしい? 晴司、何でアンタが懐かしいのよ」
「いや……俺、一応生徒会だったし」
「はああああ!?」
月乃は凄まじく驚いた声で叫んだ。
「……何だよ」
「だって……アンタそんなのじゃなかったじゃないの!!」
「そうか、月乃は知らなかったな。俺、高校三年の時に生徒会の役員になったんだよ。ま、無理矢理やらされたんだけどな。……黎に」
「黎?」
そして黎は得意気に語る。
「ふふふ…アタシはね、三年の時に生徒会の会長だったんだよ。当時の生徒会はアタシと晴司の二人だけ!」
「いやいや、星美もいたじゃねえか」
「あれは勝手に来てただけだろ!! 正式なメンバーとしては認めてなかったし!!」
「他のメンバーは、全部お前が追い出したしな」
「人聞きの悪いことを言うな。丁重に出ていくように勧告しただけだろ」
「……それを追い出したって言うんだよ」
「そう…なんだ……」
月乃は、超意外な事実を知ったというような顔をしていた。
それもそうだろう。だって、俺自身超意外だったわけだし。そもそも、黎が生徒会に立候補した段階で嫌な予感がしてたんだよな。で、あのルックスを武器に、圧倒的な投票数を獲得した黎は生徒会長になった。……その瞬間、恐怖の大王は誕生したのだ。
他の生徒会の役員にもっともらしい因縁を付けて全て追い出し、そのくせ人員不足だとかホザいた黎は、なんと補充人員として勝手に俺を生徒会の一員に申請していた。そして恐怖政治が始まる。毎日“生徒会の会議”という名目で俺を呼び出す黎。サボろうとすると先生に捕まりそのまま強制連行。そして色んな雑用を押し付けられ、俺の平穏な高校生活は破綻した。
その後、不幸な俺に同情した星美が手伝うようになり、なんやかんやで三人となった生徒会は色んなことをしでかしてしまうわけだ。部活同士の衝突の解決、前例のないような競技が目白押しのトンデモ体育祭の開催、優勝クラスにはそのまま売上金が贈呈されるクラス対抗売上金レースの文化祭、マラソン大会の代わりにやった全学年共通サバイバル鬼ごっこ……よくもまあ先生達が許可したものだ。毎回その皺寄せを喰らってたのが俺であることは、言うまでもないだろう。
それについて、ゆっくりと愚痴を言いたいこと山の如しだが……まあ、それは今は割愛しよう。
「……なんか、思い出したら疲れてきた」
「晴司……ヒドイ目に遭ってたのね……」
月乃は同情の眼差しで俺を見ていた。黎はその視線の理由が分からないようで、首を傾げていた。
そんなバッドドリップする俺達がいる部屋に、陽子先輩が入ってきた。
「お待たせ。……って、どうしたの?」
「い、いや、別に……」
「そう。なんか暗いけど……まあいいや。そうそう、この子を紹介するね。――ほら」
「は、はい……!!」
そして小走りで中に入ってきたのは、学校の女子生徒。眼鏡をかけ、大人しそうな雰囲気を出す少女だった。しかしその制服の襟には、バッジが付けられていた。
「そのバッジ……もしかして……」
「あ、あの……初めまして! この学校の生徒会長、杉下花恋と言います! よろしくお願いします!!」




