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【アニメ化決定!】真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです  作者: 鬱沢色素
三章

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369・守り人たちの目的(ドグラス視点)

 一方のドグラス達。


「ふわぁ〜……よく寝た」


 上半身を起こし、ドグラスは大きく欠伸をした。


「よく眠れましたか?」

「おお、バッチリだ。汝らが見張りをしてくれていたためだ」


 シルヴィの質問に、ドグラスは親指を突き立てて答える。


「それにしても……ヤツらも鬱陶しいな。俺達を仕留めるつもりなら、さっさとかかってくればいいものの」


 ファーヴは苦い表情を作って、そう声を零した。


 守り人がリュシアン側に寝返った。


 エリアーヌ達とも分断され、危機に陥ったドグラス達ではあったが、大迷宮に残り守り人を仕留めることにした。


 だが、そのまま激しい戦いに移行するかと思ったが、守り人の連中は大迷宮の闇へと消えていってしまったのだ。


 探すドグラス達ではあったが、なにせ大迷宮の内部を知る者がカリスタしかいない。しかもそのカリスタとて、大迷宮の全貌は把握していないという。


 守り人は姿をくらましただけではなく、闇の中から断続的に攻撃を仕掛けてきた。真正面から立ち向かっても、勝てないと踏んでいるのだろう。

 イライラする皆──特にドグラスとファーヴだが、こちらの疲れを誘うことが、守り人連中の狙いだとは気付いていた。


 ゆえに、大迷宮に何箇所か用意されている、焚き火の跡と簡易的なベッドを使って、交代を休憩を取ることにした……というのが現状である。


「我が守り人は、ヒットアンドウエイがモットーだからな! 強い相手に真っ向から立ち向かうほど、バカではないのだ!」


 何故か、守り人の隊長(『元』と付けるのが正しいかもしれないが)のカリスタは腰に手を当て、ドヤ顔である。


「……お前は俺達の前に、真っ向から顔を出したけどな」


 ぼそっとファーヴが毒を吐くが、カリスタには聞こえていないようだ。


「こうなった以上は一度、地上に戻るべきか? “死都”に行くまでの通路は防がれてしまったとはいえ、戻る道はそうでもないのだろう?」

「いや、あちらも当然それを読んで、入り口で待ち伏せ罠を張っている可能性がある。そうでなくても、あいつらを放置していては、なにをしでかすか分からない」

「それもそうか」


 ファーヴの言葉に、ドグラスはあっさりと首を縦に振る。


「それにしても……カリスタ。汝、昨日まではあれほど暗い顔をしていたのに、随分と元気を取り戻したのだな」

「当然だ」


 カリスタは真剣な表情で口を動かす。


「あいつらの裏切りに、気付かなかった自分が不甲斐ないが……いつまでもくよくよしていても、しょうがない。今ではあいつらを捕まえて、早くきついお灸を据えてやりたいくらいだ!」

「その意気だ」


 ニヤリとドグラスは笑う。


 なんにせよ、いつまでも暗い表情をしたヤツが近くにいても、こちらも気を悪くするだけだ。

 現状、彼女は大迷宮の内部を知るものである。彼女からの協力が得られれば、これほど有り難いことはない。


「さて……休憩も終わったところで、そろそろ動くか。エリアーヌ達も気になるし──」

「いや……その必要はなさそうだ。どうやら、あっちから来てくれたみたいだぞ」


 歩き出そうとするドグラスを、ファーヴが止める。


 ファーヴが鋭い視線を向ける先には一見、深い闇が広がっているように見えた。


 だが、指摘されてドグラスも気付く。


「……いるな。出てこい」


 闇に向かって、ドグラスは声を放つ。


 簡単に出てくるとは思わなかったが──一瞬間を空けて、カリスタと同じような顔をした女が現れた。


「よく気付かれましたね」


 確か……カリスタは彼女を、ユーリアと呼んでいただろうか。

 ユーリアは弓を構えたりもせず、少し離れた位置からドグラス達を眺めていた。


「くくく、なかなか潔いではないか」

「お前一人で、俺達に勝てるとでも?」

「ユーリア……どうしてだ。どうして、亡くなった両親や先祖の使命を果たそうとしないんだ。かくなる上は一発殴って、お前の目を覚まし──」

「待ってください」


 今にも襲い掛かろうとするドグラス達だったが、それよりもシルヴィが一歩前に出て、ユーリアに話しかける。


「あなたは……私達の味方ですね?」

「どういうことだ」


 いきなり突拍子もないことを言い出したシルヴィに、ドグラスは眉をひそめる。


「私達が、エリアーヌ達と分断されてしまったきっかけ……それは彼女が矢を放ったことでした」

「そうだ。戦力を分散させて、各個撃破するつもりだったのだろう」

「守り人側も全員、大迷宮側に残されてしまったのに? “死都”へ行く道も閉ざされてしまいました。守り人の目的は、私達──特にエリアーヌを“死都”に行かせないようにすることだったはず。行動がちぐはぐです」


 確かに……。

 ただ単に、瓦礫でエリアーヌ達を押し潰そうとしただけというのも考えられるが、それにしては軽率。

 リュシアンから話を聞いているということは、エリアーヌが結界魔法の使い手だということも知っているはずだからだ。


 単純に“死都”へ行くまでの道が防がれるのが想定外だった? それでもこちらに都合がよすぎて違和感が残る。


(ユーリア……とかいう女の目的は、我らではない。守り人を“死都”に行かせないようにし、かつエリアーヌ達を離すことだった……だとしたら、こいつの真の目的はなんだ)


 ドグラスは疑いの目をユーリアに向ける。


 ユーリアはシルヴィの話を聞いて、俯いて大きく息を吐く。


「……さすがですね。あなたは二百年前の聖女だったとリュシアンから聞かされ、当初は信じられませんでしたが……嘘ではなかったかもしれません」


 そう言って、顔を上げる。

 その目には、確かな覚悟が秘められていた。


「その通りです。私は、他の守り人とは考えが異なります。寝返ったふりをして、リュシアン側の狙いを暴こうとしました」

「ほ、本当か!?」


 そう叫ぶカリスタの目に希望の光が宿る。


 守り人に怒った素振りを見せていた彼女ではあったが、心のどこかで彼女らのことを信じていたからだろう。


「はい」

「だ、だとしても……! 私くらいには、そのことを話してくれてもよかったじゃないか!」

「ごめんなさい、姉様。姉様はその……なんというか、人を騙すというのが苦手な人だと思うから」


 それはドグラスも同感である。


 このカリスタという女、わざわざ前口上をしてからドグラス達に戦いを挑んだことといい、抜けているところが多々ある。

 こいつが寝返ったふりをしようとも、すぐにバレていただろう。そうドグラスは思った。


「本当はもっと早くに、このことを伝えたかったけど……他の守り人の目があって、なかなか抜け出せませんでした。ですが、今は違います」


 そう言って、ユーリアは踵を返す。


「付いてきてください。あなた達に見てもらいたいものがあります」

「見てもらいたいもの……? それはなんなのだ」


 ドグラスが警戒心を滲ませて問いかけると、ユーリアは顔だけをこちらに向けて、こう言った。



「リュシアンの目的……そして、この大迷宮に隠された秘密です」

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