表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです【書籍化】  作者: 鬱沢色素
三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

342/342

320・VS《赤き災厄》

「くっ……! 攻撃が当たらぬ」


《赤き災厄》との最終決戦。

 ようやく見つけることは出来ましたが、そう簡単に倒せるほど《赤き災厄》は柔ではありませんでした。


「おい、ドラゴン! もっと近付くことは出来ぬのかっ!?」

『無茶を言うな! 今でも精一杯だ。これ以上近付けば、落ちる!』


 シキの切羽詰まった声に、ドグラスも珍しく声を荒らげます。


 慣れない空中戦。

 羽ばたくドグラスの背に乗りながら、なんとか近付こうとしますが、《赤き災厄》から赤色の光線が発射され、まともに攻撃することも出来ません!

 ミツハちゃんも地上に落ちないようにしがみついているせいで、神勾玉を上手く発動出来ないでいました。


「難儀であるな……ならば、ナイジェル」


 必死の形相で、シキがナイジェルを見ます。


「貴様、死ぬ覚悟はあるか?」

「……なるほど。それしかないみたいだね。どこまでも付き合うよ」


 短いやり取りでしたが、ナイジェルはシキがなにをしようとしているのか分かったのか、力強く頷きます。


「いくぞ!」

「うん!」


 ナイジェルとシキはお互いに武器を構え──そして跳躍。

 空中に放り出された二人は、暴風に乗りながら、《赤き災厄》へと接近していきます。


「「これで終わりだ!」」


 二人の声が重なります。

 まるで十字架を描くように──左右から同時に、ナイジェルとシキは《赤き災厄》に剣撃を浴びせます。


 完全なタイミング。

《赤き災厄》は空中で霧散し、消滅しました。


「やりましたかっ!?」


 私はそう声を発します。


 しかし。


「無駄ダ──」


 散り散りになった赤い結晶が一箇所に集まり、《赤き災厄》がまたも形を成しました。


 ……二人の決死の攻撃でしたが、《赤き災厄》の方が一枚上手だったみたい。

 神勾玉で決定打を与えない限りは、何度でも修復するのでしょう。


 地上に落下していく二人を、ドグラスは即座に迎えに行きます。

 ナイジェルとシキ、ドグラスと二人が交錯しようとした瞬間──二人はドグラスの背に着地を果たしていました。


「一か八かの賭けだったけど、そうは上手くいかないか」

「ちっ、雑魚のくせにやりおる」


 ナイジェルとシキの顔に焦りの色が浮かびます。


「余も、お主らには負けてられん!」


《赤き災厄》が体を修復している間──刹那の隙が生じます。

 ミツハちゃんは手をかざし、再び神勾玉を発動。

 聖なる光は刃となり、《赤き災厄》に直撃しますが──《赤き災厄》の体には僅かな傷痕すら付けることが叶いませんでした。


「余の……神勾玉が……」

「ミツハの神勾玉はまだ完全ではない。赤影ならともかく、大元の《赤き災厄》を消滅させるまでには至らぬか」


 と、シキが顔を歪めます。


 絶対絶命の危機。

 次にすべき行動を取る前に、《赤き災厄》は私たちに猛威を振るいます。


「希望の後の愉快な絶望を見せてやろう。落ちよ」


《赤き災厄》が人差し指を下に向けたと思うと、体が重くなるような感覚。

 ぐんぐんとドグラスは高度を下げ、《赤き災厄》から離れていきます。


『くっ……! 急に体が重く……。ヤツめ、なにをした……』

「《赤き災厄》には赤影をばら撒き、生き物を操る力がありました。だから……戦いの最中でも、完全に操るまでには至らずとも、私たちの動きを制御出来るのでは?」


 頭に響くドグラスの念話に、私はそう答えます。


 見ると、他のみんなも苦悶の表情を作っています。

 ミツハちゃんも神勾玉の力で体を覆い、赤影の影響下から逃れているようですが……完全に体を自分の制御下に置くことが出来ません。


 こうしている間にも地上に接近していき、上空では《赤き災厄》が私たちを嘲笑うかのように見下ろしていました。


「まずいな。このままでは、ヤツに近付けぬ。それどころか──地面と衝突してしまうかもしれぬ。たとえ衝突を免れたとしても、ヤツはその間に完全な存在へと近付き──」


 ドグラスの声にも、珍しく焦りが滲みます。


「やはり……余ではダメなのか? 余では母上のように国を救えなく──」


 ミツハちゃんが絶望に顔を染め、がっくしと肩を落とします。

 その双眸からは、今にも涙が零れ落ちてしまいそう。


 しかし。



「ミツハ! 泣くな! 泣いているだけでは、なにも解決はせぬぞ!」



 シキが発破をかけます。

 その表情は鬼気迫るもの。

 ミツハちゃんはシキの言葉を聞きハッとなり、ぐっと涙を堪えます。


「そうじゃ……泣いているだけでは、なにも解決しない。母上が死んでから、もう余は泣かぬと決めたのじゃから!」


 ミツハちゃんが叫んだ──その時でした。


「……っ! みんな見て! 下だ!」


 風切り音を斬り裂くような、ナイジェルの声。


 随分と高度が下がったためか、地上にいる人たちの様子を視認することが出来ました。

 地上では人々が空を見上げ、手を合わせてなにかに祈っているかのよう。


「光が……?」


 ミツハちゃんが戸惑いの表情を見せます。



 ──眼下から聖なる光が立ち昇り、波状となってミツハちゃんに集まっていました。



 それはまるで人々の祈りを結集するかのよう。

 幻想的な光景に、思わず言葉を失ってしまいます。


「そうか……そういうことだったか!」


 なにか合点が付いたのか、シキがミツハちゃんの両肩を掴みます。


「聞け! ミツハよ。神勾玉は貴様の中に眠っていたのではない。神勾玉は、()()()()()()のだ!」

「アマツに……?」

「そうだ。もうアマツを救えるのは、貴様しかおらぬ。だが、出来るかどうか分からない。どうする? 諦めて、ここで死ぬか?」


 シキが問いかけると、ミツハちゃんは自信なさげに俯きます。


「余に……アマツを救うことが出来るじゃろうか」

「出来るさ」


 シキは笑いかけ。


「貴様のやっていたことを、妾はシキとしてずっと見てきた。だから分かる。やはり、アマツの姫は貴様しかおらぬ。剣を取れ! 人々の絆という剣を!」

「──っ!」


 シキの言葉にハッとなったのか、光を失いかけていたミツハちゃんの瞳に力強さが宿ります。


「そうじゃ……余はアマツの姫じゃ。他の何者でもない! 余がアマツを救うしかないのじゃ! 余がお主らの思い、全て受け止める!」


 そう言って、ミツハちゃんは《赤き災厄》に手をかざします。


「母上……見ていてくれ! 娘の成長した姿を! そして力をくれ! アマツの姫に!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆コミカライズが絶賛連載・書籍発売中☆

シリーズ累計145万部御礼
Palcy(web連載)→https://palcy.jp/comics/1103
講談社販売サイト→https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000355043

☆Kラノベブックス様より小説版の書籍も発売中☆
最新7巻が発売中!
hev6jo2ce3m4aq8zfepv45hzc22d_b10_1d1_200_pfej.jpg

☆新作はじめました☆
「第二の聖女になってくれ」と言われましたが、お断りです
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ