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242・真の王である証明

「ぼくは世界平和を実現したい!」



 あれは、ぼくが六歳の頃。

 お父さん(人前では陛下と言わないと怒られる)からの「大人になったら、どんな王様になりたい?」という質問に、ぼくは無邪気にそう答えた。


「うむ……我が国だけではなく、世界に目を向けるとはさすがだな。儂とは器が違う──ナイジェルよ」


 とぼくの頭を撫でて、お父さんは優しい声音で言う。


「だが……言うは易し。その夢を実現するのには、困難が伴う」

「えー? みんなが仲良くすれば、いいだけじゃん」


 ぼくはお父さんに、唇を尖らせて反論した。


 だって世界が平和な方が、みんな絶対にいいに決まってるじゃん?

 たまには喧嘩するかもしれないけど、それはきっとみんなが本当に仲がいいから。

 喧嘩した後は笑い合って、友情だったり愛情を深めるんだ!


 だけどお父さんは首を横に振った。


「ナイジェルはもし、友達が誰かに傷つけられたら、どうする?」

「そんなの決まってる! 友達を助けて、その誰かってのを叱ってあげるんだ!」

「そうだ、正しい。しかし──友達を傷つけた人にも事情があったら? 悲しい過去があったならば? 友達は幸せになれるかもしれないが、もう一方の者は不幸になるかもしれない。それが争いの火種となる」

「よく分かんないよ……お父さん、いつも言ってるじゃん。最後に勝つのは正義だって。だったら、正義がある方に味方すれば?」

「それも正解だ。だが──正義は誰かにとっての悪。自らの正義を通すためには、力を使う必要も出てくるだろう。仲良くなれない者が現れるかもしれない。重要なのは、『正しき剣を振るうこと』。そして自分の正義を信じること。その気持ちを忘れないでくれ」

「うん!」


 ぼくは誕生日に買ってもらった愛用の剣を掲げて、こう宣言する。


「心配しないで! 悪いヤツがやってきても、ぼくがみんなを守るから! そうすれば、いつかは世界が平和になるはずだ!」




 その答えは単純で、キレイで、咎められるものでもなくて──。




 なによりも難しいことに、ぼくは大人になってから気付いた。

“真の聖女”であるエリアーヌだけでは、災厄は倒せない。

リンチギハムの──そして世界の幸せを守るため、皆は力を合わせ、総力戦で災厄に挑むことになる──。


『真の王である証明』編。

来月には始められたらな、と思っております。

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